食うか、食われるか。『人喰いのすすめ』
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食べ物に関するガイドブックは、巷にあふれている。ミシュランのような有名どころから、庶民的なハンバーガーに至るまで、この手のガイドは日々ネット上に氾濫している。
そんな中、アントニオ・キャスコス・チャミゾが一風変わったフードガイドをネット上にて公開した。タイトルは、『食うか、食われるか。人体解体図つき人喰いのすすめ。マンゴータルタルソースがけ人肉ミンチ料理と、人肉テンダーロインのりんご果汁煮のレシピつき』である。
『人喰いのすすめ』の中には粘土で作ったこんな人肉料理が出てくる。
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こんなおぞましい本を書いてはいるが、チャミゾが実際に人喰いをしているわけではない。スペイン生まれのオスロ国立美術アカデミーの卒業生だ。このガイドブックや、本物の毛髪のついた人体そっくりの器は、彼の博士号プロジェクトの一部だ。
彼のプロジェクトの一番悩ましいところは、人喰いを正当化するかのような手ごろな統計データを示した部分だ。ガイドブックによると、平均的な人体は、ほかの人を約1ヶ月まかなえる肉の量や、60人のおとなが必要とする日々の栄養素に見合うタンパク質を有しているという。
さらにこのガイドは、アメリカやヨーロッパには、人肉を食べてはいけない直接の法律はないことに注目している。意欲的な人喰いたちにとって、殺人はたいしたことではなくなるかもしれない。
チャミゾと接触して、人肉にしてもほかの動物の肉にしても、肉を食べるということを取り巻く複雑な事情について話を聞いた。彼は決して人肉を喰らう精神病質者ではない、ノルウェー、オスロに住むただのナイスガイだ。
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──アントニオ。『人喰いのすすめ』のアイデアはどこからわいたのかおしえて。
A:自分たちの文化の先入観を超えるための、出発点のような役目を果たすフィクションを探していた。そんなとき、ドイツ人医師のヨハン・バプティスト・フォン・スピックスとカール・フリードリッヒ・フィリップ・フォン・マルティウスが1817年に南米を旅したときに書いた手記の中で、ミラーニャ族という部族のことを知った。
彼らは初めてミラーニャ族と会ったとき、族長にどうして人喰いをするのかと訊ねた。族長は、人喰いに異を唱える人がいるのはおかしい。あなた方白人は、おいしくてもワニやサルは食べないだろう。でも、ブタやカニが十分にいなければ、きっと空腹でワニやサルも食べるはずだ。これはすべて習慣の問題だ。敵を倒したとき、その肉を無駄に捨ててしまうより、食べたほうがいいに決まっている、と答えた。
──それは、おもしろいたとえだ!
A:ぼくも大いに感動して、人喰いのようなタブーな食を探求することによって、文化の相対主義の限界を試すことができるのではと思いついた。なにを倫理的と考えるかについて公に話し合い、なにが人間の行動として受け入れられないかを定義するのは難しい。
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──イメージというものは、確かに多くの考えを生み出すが。
A:ぼくたちの社会ではタブー視されている人喰いは、暗く複雑な感情を生み、先入観に挑んでいるといえる。人々を巻き込むのにおあつらえむきのテーマになる。
──その通りだが、人間が互いに共食いするのを許されるべきだと思うのか?
A:すべての風習は習慣の問題で、どんな行動が良くて、なにがダメなのかを決めつけることはできない。で も、ほとんどの西洋諸国では人肉を食べてはいけないという直接の法律はない。
──ガイドの中では、人肉レシピが紹介されている。これらについては?
A:実際にあるレシピだ。人肉に似た動物の肉で工夫してみた。やってみる価値はある。
──人体を正しく切り刻むための解体図もつけているが、このためにどんなリサーチをしたのか? まさか、自分で実際に遺体を切り刻んだわけではないだろう。
A:もちろん、そんなことはしていない! 人体の各筋肉の質の違い、それがどのように働くのかを勉強して、実際の動物の解体図と比較しただけ。簡単さ。
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──人体の解体はさておいて、ガイドの中であげているそのほかのコツは?
A:どんなワインがどの肉に一番合うかとか、栄養がほとんどない、消化しにくい、神経変性疾患を起こす可能性があるという理由で、人体の部位の中で食べられない、あるいは避けるべきところはどこかとかいうことをあげている。
──おもしろい。このプロジェクトでは、人間の体のパーツに見える4つの容器を作ったそうだけど、これについて説明して欲しい。
A:「毛の生えた器」はこのガイドブックの商品の一部で、本と一緒に出す3D商品が欲しかったから作った。もし、この器が趣旨から外れているように見えているのなら、使う人をこれまでと同じタブーや拒絶に戻してしまうだろう。
このプロジェクトが単なる見た目の印象レベルではなく、別のレベルで機能するようなら、もっとおもしろくなるのではないかと思った。実際にこれらの器を使うことによって、人々がもっと実態感のあるレベルで人喰いのタブーを語ることができるようになる。人間のさまざまな髪を使ってみて、人間の肉に似た触感や安堵感、柔らかみのある素材を試しているんだ。
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──ガイドでは、人口過密や食糧不足など、世界的な問題の潜在的な解決法として、人喰いをし正当化しているが、人々にショックを与えて、こうした問題の関心を引こうとしているのか?
A:そのとおり。それがまさにぼくの意図するところだ。このプロジェクトは、人喰いを推進するためのものではなく、資源の枯渇、人口過密、消費主義にまつわる問題など世界的に議論となっていることに注意を向けることが目的だ。フィクションのようなシナリオや、もし?という疑問をお膳立てして、話し合いやじっくり考えるためのチャンスを切り開きたい。現状や近い将来について、待てよとぼくたちに疑問を呈するもうひとつの状況を提供できる。
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──それは議論すべき大きな問題ですね。話してくれてありがとう、アントニオ。
A:いや。礼には及ばない。このプロジェクトがやっていることは、隣人を食べることではなく、行動主義やコミュニケーションについてであることを理解してもらえれば嬉しいのだから。
via:munchies・原文翻訳:konohazuku
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