首謀者は海外逃亡…京都の高僧まで登場する佐川印刷事件の謎

デイリーニュースオンライン

写真は佐川印刷HPより
写真は佐川印刷HPより

 印刷大手の佐川印刷(本社・京都府向日市)で発生した80億円不正流用事件が、混迷の度を深めている。

 京都地検特別刑事部が、6月末、強制捜査に着手。首謀者とみられる元財務担当役員と、最大の資金流出先であるサーキット場運営会社代表がともに海外脱出しており、家宅捜索は、捜査が煮詰まったというより、証拠固めの色合いが強かった。

不正流出の受け皿に寺の口座使用か

 私が本サイトでこの問題を書いたのは、ゴールデンウィーク明け後の5月6日だった。JFL1部リーグに所属する「SP京都」を抱える著名企業で、しかも売上高が1000億円を超え、税務調査も社内監査も厳しいハズの佐川印刷で、なぜ80億円もの不正流用が、5年近く発覚しなかったのか。

 その時の単純な疑問出しは、いまも解消していないし、不正流出の“受け皿”に、京都の高名な寺で長く宗務総長を務めた高僧の「寺の口座」が使用されるなど、新たな疑惑が次々に浮上している。

 整理してみよう。

 80億円の流出先は、当初から判明している。これは、元財務担当役員が、逃亡前に「報告書」を会社に提出していたからだ。

 流用先は以下の通り。

  • シンガポールのサーキット場運営など(運営会社代表に約54億円)
  • 京都のゴルフ場買収(知人の経営コンサルタント会社代表に約7.2億円)
  • 不動産投資資金(元財務担当役員が代表だった会社に約15.5億円)
  • モンゴルの金融機関向け(約4億円)

 問題が複雑なのは、「元財務担当役員の個人犯罪」というには無理がある登場人物の多彩さからで、「京都の著名人を巻き込みかねない」と、心配する地元関係者は少なくない。

著名なモンゴル出身力士の名前も浮上

 その一例が、名刹の高僧が関与していたこと。「口座を貸しただけ」と、高僧はいうのだが、その資金の一部で別院を新築。疑いは残り、家宅捜索先となった。

 口座を利用したのは、シンガポールでサーキット場を建設する名目で資金を引き出した運営会社代表だが、佐川印刷はこの人物の関与するレースチームのスポンサーになっていたことがあり、元財務担当役員以外にも親しく付きあっている役員がいた。

 ゴルフ場買収資金を調達していた経営コンサル代表もそうで、「京都の名門」である代表は、政財界に幅広い人脈を持っており、そうした縁で佐川印刷の顧問に就いていた。

 突如、登場するモンゴル金融機関への約4億円も不可解だが、「著名な大相撲のモンゴル出身力士(既に引退)の関係先」(金融関係者)だという。

 高僧に京都の名家にレース関係者にモンゴル出身元力士……。

 32年間、コツコツと佐川印刷で務め上げて出世した元財務担当役員が、自らこんな人脈を築き、何らかの目算があって資金を流し続けたとは考えにくい。

 本人の意思だけではなく、誰かの何らかの意図を代行したのではないか──。

 そんな見方もあり、すべてを解明するには、本人を召喚するしかないが、今のところ、居場所さえ確認できていないようで、長期戦を覚悟しなくてはならないようだ。

伊藤博敏
ジャーナリスト。1955年福岡県生まれ。東洋大学文学部哲学科卒業。編集プロダクション勤務を経て、1984年よりフリーに。経済事件などの圧倒的な取材力では定評がある。近著に『黒幕 巨大企業とマスコミがすがった「裏社会の案内人」』(小学館)がある
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