SNS時代が生んだ新造語「シャイニーゲイ」とは?

デイリーニュースオンライン

新造語「シャイニーゲイ」の使われ方
新造語「シャイニーゲイ」の使われ方

【ゲイリーマン発 日本のリアル】

 どうも、英司です。暑い日が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。海やプールやBBQなど、お楽しみの方も多いのではないでしょうか。

 少し前から新宿二丁目界隈でよく耳にする「シャイニーゲイ」という言葉。英語のshinyは「輝く」とか「キラキラした」という意味で、Gayはそのまま男性同性愛者を指すゲイですから、直訳すれば「キラキラしているゲイ」みたいな意味になります。

 具体的には、週末になれば仲の良いゲイのお友達数名で旅行やホームパーティ、イベントに出かけて、しかもそのお友達集団はみんな揃ってイケメンでオシャレ。そんな若いゲイたちのリア充なライフスタイルを指して「シャイニーゲイ」という言葉が生まれました。

必ずしも良い意味で使われていない「シャイニーゲイ」

 しかしこの「シャイニーゲイ」という言葉、どうにも直訳通りの良い意味で使われていない様子も見受けられます。

 具体的に言えばこの言葉が使われるとき、そういうリア充なゲイライフを送る人たちを「痛々しい」とか「軟派、軽薄」と決め付けることで”自分よりも一段下の存在である”と、自身に言い聞かせるように使う例が目立っています。

「シャイニーゲイ」の特徴の1つには、そうしたイケメンでオシャレなお友達たちと遊びに行った写真を、FACEBOOKやインスタグラムに積極的にアップすることが挙げられます。

 確かに毎週のようにアップされる写真を見て、単純に「楽しそうだな~」「イケメンばっかりで目の保養になるわ~」と感じる人ばかりではありません。その写真の行間を、決して好意的でない形で解釈する人もいます。

例えば…

・毎週どこかに遊びに行っている=自分にはそれなりの収入があって、相応の仕事に就いていることを”見せつけている”。

・いつもたくさんのお友達といる=自分にはそれなりのコミュニケーション能力や会話の引き出しがあることを”見せつけている”。

・イケメン同士の写真をアップする=モテる自分たちのルックスを”見せつけている”。

 と言た具合に、SNSなのでその写真を見る/見ないは自分で選択できるにもかかわらず、リア充なライフスタイルを自分に「見せつけている」と感じて、何かしらの嫉妬や不満等の複雑な感情が鬱積していた人たちに、ちょうどそうした「リア充ゲイ」を小馬鹿にする言葉にピッタリな造語として「シャイニーゲイ」という言葉が広まって行った経緯があります。ですので、この「シャイニーゲイ」という造語、ゲイ当事者のコミュニティでは軽い侮蔑用語のような意味での使われ方もしている現状があります。

SNS時代が可視化させた、「ステータス別」の人間関係

僕がゲイとしての生活を開始した2004年付近は、mixiの登場によってまだSNSという概念が誕生したばかりの頃でした。当時19歳だった僕も、ゲイの業界に出てくると友達になる人がみんなmixiをやっていて、自分も登録しました。このSNSが、人間関係を可視化させたのでした。

 当時感じたのは、イケメンな人のマイミク(懐かしい言葉・笑)はみんなイケメン。ということ。ゲイ業界にデビューしたばかりの頃の僕は、この業界は「ゲイ」として1つのコミュニティを築いているのではなく、ゲイの中でも世代、外見のレベル、収入などが細かくセグメントされていて、同じくらいの「ステータス」の人たちで仲良くなる傾向があることを感じました(特に東京のゲイコミュニティはこの傾向が顕著です)。

「マイミク申請」にはそれなりの高い敷居があり、なかなか知らない人に勝手に申請を出すというのは憚れることでした。ですので、mixiはどちらかと言えばリアル世界の人間関係を単純に可視化させたネットワークという色彩が強かったように思います。

 しかしやがて時代は進み、ガラケーからスマホへと通信端末の主役が変わって行きます。高性能なカメラを備え、ガラケーよりも速い通信速度でデータを送受信できるスマホが普及するにつれ、PCの前でゆっくり文章を書くブログやmixiのようなSNSは廃れていき、写真と短文を載せるだけのTwitterやインスタグラム、FACEBOOKのようなSNSが台頭してきます。

 とくにTwitterやインスタグラムは、鍵をかけていない限り自由にフォローができる点が、それまでのmixiなどのSNSとは明確に違いました。リアルの世界では知らない人や、芸能人や有名人なども自由にフォローでき、そうした人の日常を気軽に覗くことができる点が新しく、爆発的に広がって行った要因だったのだと思います。

 前ページでは「シャイニーゲイ」という言葉は、ゲイ当事者コミュニティでは必ずしも良い意味で使われていないことを述べ、この根源にはSNSの誕生があることについて書きました。

 そして、SNSの主役がブログやmixiから写真や短文が中心のTwitterやインスタグラムに移っていくことで、「住む世界が違う人たち」の生活を気軽に覗けるようになったことについて書きました。後編では、こうした傾向が「シャイニーゲイ」という一種の“侮蔑語”につながっていくまでのことについて、書いていきたいと思います。

「住む世界が違う人たちの日常を覗けること」これはゲイの業界も一緒でした。

 それまで「ステータス別」で分かれていた様々な人間関係。みんながTwitterやインスタグラム等を始めるにつれ、自分の所属する「階層」以外のコミュニティのゲイたちのライフスタイルを覗くことができるようになりました。

 現実世界では話すことがなかったような人ともSNS上では以前よりも気軽にやりとりができるようになるなど、同じゲイでも「ステータス別」で住む世界が違かった者同士でのやりとりも生まれ、これまでのゲイ業界の人間関係のあり方が瓦解していくかのように見えましたが、実際にはそんなことはありませんでした。

 SNSがいくら発達しようとも、結局は「ステータス別」でコミュニティは分かれているし、「シャイニー」な人たちは、やはり「シャイニー」な人と仲良し。

 しかしこれは少し考えれば当たり前のことです。遊びに行く頻度や行き先、飲みに行くお店の価格など、これらの水準が似通った人たちが自然に仲良くなりますので、収入や金銭感覚が似た人が仲良くなるのは当然のことです。

 また、多くのゲイは惚れた腫れたの恋愛話も好きですから、恋愛に関すること、もっと言えば「モテ度」も似通った人たちが自然と話が合うし心地よい、ということになっていきます。

 だから、所謂「リア充層」のゲイたちは結局はリア充な人と仲良しだし、これまで通りリア充な生活を変わらずに送るだけ。彼らは自然な流れで遊びに行ったときに写真は撮るし、記念にSNSにアップすることもします。恐らく明確に誰かに見せつける意図などはないでしょう。

SNSの進化とスマホが生んだルサンチマン

 かつて彼ら「リア充層」の生活は、「リア充層」のみの間で共有されていたものでしたが、SNSとスマホの発達によって、「別階層」の人にまで彼らのキラキラしたライフスタイルが発信されるようになりました。そして彼らが、羨望や嫉妬などの複雑な感情の眼差しに晒されるようになり、「シャイニーゲイ」と呼ばれるようになっていきました。

 シャイニーゲイ。この造語の裏には、ニーチェの言うところの激しいルサンチマンが潜んでいるのだと思います。ルサンチマン、直訳すれば「強者に対し仕返しを欲して鬱結した弱者の心。」とでも言いましょうか。最近は前述のようにSNSを駆使する人が増えたことで、このルサンチマンが刺激される機会が大変増えたのではないでしょうか。

 Twitterやインスタグラムが流行った後、やはりmixiのように原則的には承認制でありながら、Twitterやインスタグラムのように写真と短文を投稿する文化があるFACEBOOKに「リア充層」が移行して行ったのもなんとなく頷けることだと思います。

ヘテロセクシュアルにまで広まる「シャイニーゲイ」

 先日、会社の上司と話していると、突然「◯◯君(僕の名前)って、シャイニーゲイっていうやつ?」と聞かれ、かなりビックリしたことがありました。

「どこでそんな言葉覚えたんですか!?」と聞くと、二丁目のゲイバーに潜入したテレビで紹介されていたと。僕はその番組を見ていなかったので興味があり「シャイニーゲイってどういう意味だと思っていますか?」と聞いたところ、オネェやオカマではなく、見た目は男っぽいゲイの人たちで、平日はしっかり仕事を持ち、休日はゲイの友人たちとのレジャーに忙しくしている人たちという解釈のようでした。

 ゲイコミュニティ内では必ずしも好意的な意味に取られていない「シャイニーゲイ」という言葉ですが、ヘテロセクシュアルの間では非常に中立的、もしくは好意的な印象の言葉として解釈されていることに気付きました。

 確かに言われてみれば、女装するゲイは「オネェ」、女っぽい仕草や言葉遣いのゲイは「オカマ」など、ヘテロセクシュアルからは同じゲイでもそれぞれ様々な呼び方が存在していましたが、男性っぽい普通のゲイに対する的確な呼び名は存在していませんでした。

「シャイニーゲイ」、その言葉のインパクトは非常に強いですから、ヘテロセクシュアルからはゲイコミュニティ内での使われ方と違い、「男性っぽい見た目のゲイ」のことを指す言葉として定着するかもしれません。

著者プロフィール

ゲイライター

英司

東京・高円寺在住のアラサーゲイ。ゲイとして、独身男性として、働く人のひとりとして、さまざまな視点から現代社会や経済の話題を発信。求人広告の営業や人材会社の広報PR担当を経て、現在は自社媒体の企画・制作ディレクターとして日々奮闘中。都内のゲイイベントや新宿二丁目にはたびたび出没(笑)

筆者運営ブログ「陽のあたる場所へ ―A PLACE IN THE SUN―」

「SNS時代が生んだ新造語「シャイニーゲイ」とは?」のページです。デイリーニュースオンラインは、LGBTカルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る

人気キーワード一覧