怒号と奇声が飛び交う…認知症患者が集まる“老人病棟”の実態 (2/2ページ)
「ご家族との関係がいい患者さんは“内弁慶”、ご家族に当り散らします。でもご家族との関係があまりよくない患者さんは“外弁慶”、医師や看護師、“言語さん”と呼ばれる訓練士に当り散らします。女性スタッフのお尻や胸を触ることも日常茶飯事です」(前出の老人病棟看護師)
病院側としては、できれば家族に付き添って貰いたいというのが本音だ。家族の付き添いがなければ患者は「抑制」といって手足をベッドに紐で縛り拘束する措置が取られる。
「ただしご家族が付き添っておられる場合は抑制はいたしません。できるだけ患者さんの抑制は避けたいというのが病院としての願いです」(前出・同)
しかし家族にも言い分はある。重度の認知症を患った患者の世話は、24時間、気が休まることはない。食事や排泄の世話、入浴、病気となれば薬を飲ませるのも一苦労だ。認知症が酷い患者だと点滴や治療目的で体に入れているチューブを外すことも珍しくない。むしろ家族のほうが“介護疲れ”で疲弊してしまう。
患者付き添い家族を“利用”する国家福祉
「ある国立病院では、看護師から『息子、これやって!』と体よく使われました。また患者のご家族が、『付き添いの対応が悪い』と、若い女性看護師から怒鳴られていました。病院の人員不足を患者の家族が補っている様子が素人目にもありありとわかりましたね」(冒頭部で紹介した老人病棟患者、中沢さんの家族、40代男性)
今、認知症高齢者の数は全国で約462万人と厚生労働省では推計しており、これから10年で1.5倍にも増える見通しだという。
「しかし厚生労働省の対応はまさに“お役所仕事”、増えゆく認知症患者増の社会では何の解決にもなりません」(都内の病院で老人病棟で勤務する男性看護師)
厚生労働省の認知症への政策は、「認知症を知り地域をつくる10ヵ年の構想」が2005年度以降取り組まれている。
「地域に認知症を正しく理解する人を増やそうというものです。今年2015年以降の政策は状況を的確に判断し追って政策を検討します」(厚生労働省関係者)
認知症患者が増えていくのはわかっている。だから理解しましょうね……というのが厚生労働省の政策だ。これでは抜本的解決にはならない。
看護師の数を増やす、医療、福祉費の負担を減らすなど、いくらでも打つ手はある。急ぎ、国は、進みゆく高齢者社会に向けて認知症患者とその家族への具体的なケアを行うべきだ。
(取材・文/秋山謙一郎)