安倍首相の側近にも疑惑? 政界に横行する”秘書給与ピンハネ”の内情

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安倍晋三「日本の決意」より
安倍晋三「日本の決意」より

【朝倉秀雄の永田町炎上】

自主的な秘書給与の“寄付”などありえない

 12月4日付の『日刊ゲンダイ』が、自民党・小島敏文議員の秘書給与問題について報じた。政策秘書と第二秘書の二人の女性公設秘書から給与をピンハネした疑惑があり、腹を立てた政策秘書が小島を刑事告発すると息巻いている騒動だ。

 事の発端は、小島から「10月10日付」で解職を言い渡された女性公設第二秘書が、受け取った「解職届」を「12月末」と改竄して衆議院事務局に提出。働いていない10月分の給与を受け取ったことにあるらしい。女性政策秘書は「小島議員は第二秘書の給与の一部をピンハネしていて、『弱み』を握られているから、日付を改竄されても文句が言えなかった」などと主張している。解職日の日付を「10月10日」や「12月末」とした理由はいたって単純だ。「10日」は毎月の秘書給与の支給日だし、「12月1日(基準日)」時点で在職していた秘書は「期末手当」を全額もらえるからだ。ちなみに公設秘書は或る月に1日でも在職していれば、1か月分の給与を丸々貰える決まりになっている。

 ちなみに「国会議員の秘書等に関する法律」第21条の3は「国会議員が秘書に寄附を勧誘し、要求してはならない」と規定しているが、違反しても罰則はない。だから、仮に第二秘書が10月に1日でも働いていれば、10月分の給与を金額懐に入れても必ずしも違法ではないし、秘書自ら進んで小島に秘書給与の一部を寄附し、議員側がきちんと領収書を交付し、「政治資金収支報告書」に記載していれば、少なくとも犯罪にはならない。

 かつて小沢一郎の全盛時代の民主党で「小沢チルドレン」を中心に盛んにやっていたのがその手口だ。例えば小沢の寵愛を一身に受けていた青木愛元議員の秘書などは小沢の秘書から「青木に給与の一部を寄附してやれ。こうすれば違法ではない」と露骨に命じられていたらしい。

 もっとも秘書給与を“上納”させるような「不心得な議員」は、もしその事実が発覚すれば「道義的責任」を追及される恐れがあるから、後に証拠を残さないために「収支報告書」に記載しないわゆる「ヤミ献金」として処理してしまうのが普通だ。そうなると、政治資金規制法上の「不記載罪」に問われる可能性も出てくる。

 かたちの上では「自主的な寄附」と言いながら、議員の腹の虫の居所次第ではいつ解雇されるかわからない議員と秘書の力関係─―不安定な身分を考えれば、およそ真の意味での「自主的寄附」など考えにくい。筆者の知り合いの外国の特派員によれば「上司が部下に臨時ポーナスを弾む場合はあるが、上司たる国会議員が部下の公設秘書から給与の一部を巻き上げることなど他の先進国ではあり得ない。とにかく日本の国会議員は質が悪すぎる」と憤慨するが、まったく同感だ。

 小島の女性政策秘書は果たして「義憤」に駆られたのか、それとも自分まで「解職」を言い渡されたことの腹いせなのか定かでないが、とにかく小島が秘書給与をピンハネしていたことを暴露し、刑事告発まで考えているというのだが、議員と秘書のカネを巡るトラブルなど永田町では日常茶飯事だ。原因は秘書給与のピンハネと「陳情」という名の「口利きビジネス」の報酬の分け前を巡ってのものが多い。強盗が奪ったカネを巡って新たな事件を引き起こすのと同じ構図だ。

安倍総理側近の某補佐官も詐取している?

 現職の公設秘書連中は「過去にあれだけ逮捕者を出しているんですから、いまどき公設秘書の給与をピンハネする議員など誰もいませんよ」と口を揃える。だが、それは嘘だ。なぜなら筆者にも時折、かつての秘書仲間から「◯◯議員が秘書給与を上納してくれる政策秘書の有資格者を探している。アンタ、どうだ?」などという話が舞い込むからだ。

 筆者も物書きの端くれだし、多少の良識はあるから、質の悪い議員どもに「国民の血税」を「不当利得」させたくない。「バカバカしい」と即座に断ることにしているのだが、国会議員というのはエラソーに天下国家を論じながら「出るカネは一円でも払いたくない。入るカネは一円でも多く欲しい」と考えるような、すこぶるセコイ人種が多いから、本心では誰もが秘書給与のピンハネを狙っていることは間違いない。安倍総理の側近の某総理大臣補佐官の政策秘書などは重い糖尿病で勤務実態も怪しいものから、秘書給与の「詐取」にあたる可能性を否定できない。

 小島議員は宮沢喜一元総理の秘書から広島県議を7期務めた、いわゆる「地方政界のドン」上がりだから、後援会組織をしっかりしているはずだし、下手な国会議員などより政治献金も多かったはずだ。それでも秘書給与のピンハネなどに拘ったのは、まさに「カネの亡者」だったからに他ならない。国会議員などという人種は、「もらうカネは一円でも多いほうがいい」と主婦のようにカネに細かい者が多いが、小島もその類だったのであろう。

 ところで今年になって秘書給与のピンハネで「強要罪」と「政治資金規制法違反」の容疑で秘書から刑事告発されたのは、小島議員だけではない。2015年2月の本会議で共産党に「テロ政党だ」などとヤジを飛ばし、謝罪に追い込まれた自民党の山田賢治衆議院議員がいる。山田議員は第一秘書が2013年2月に痴漢容疑で逮捕された際、野田某を後任の第一秘書に昇格させたが、その条件として給料の一部を事務所に還流するように要求し、計167万円をピンハネしたという。いずれにせよ、公設秘書給与の詐取とピンハネは古くて新しい「政治とカネ」の問題で、日本の政治家の資質が変わらない限り、これからも続くに違いない。

朝倉秀雄(あさくらひでお)
ノンフィクション作家。元国会議員秘書。中央大学法学部卒業後、中央大学白門会司法会計研究所室員を経て国会議員政策秘書。衆参8名の国会議員を補佐し、資金管理団体の会計責任者として政治献金の管理にも携わる。現職を退いた現在も永田町との太いパイプを活かして、取材・執筆活動を行っている。著書に『国会議員とカネ』(宝島社)、『国会議員裏物語』『戦後総理の査定ファイル』『日本はアメリカとどう関わってきたか?』(以上、彩図社)など。最新刊『平成闇の権力 政財界事件簿』(イースト・プレス)が好評発売中
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