ホームレスがベンツで出勤…中国で横行する弱者ビジネスの実態 (2/2ページ)
偽ホームレスは中国ではおなじみの存在であるため、騙される人はほとんどいません。そのため彼らは新たな手法を次々と考案しています。ある親子は二人で偽ホームレスを行っているのですが、息子は父親が病気で危篤だと訴え、父親は息子が病気だと訴えるという行為を日替わりで行っているそうです。いわば物乞いの「リバーシブル商法」とでもいうべき行為です。
15年11月12日には、80歳の老人が路上で吐血し、自分は病気だと訴え通行人たちから金銭を恵んでもらいました。すると通行人の一人が老人の体調を心配し、救急車を呼んだのですが、病院で調べたところ彼の体調には異常が見られず、吐いた血液を調べたところ赤い塗料だったそうです。その後彼は警察の指導を受け、家族のもとに帰ったそうです。悪い冗談のような話ですが、このようなことが実際に行われているのが現在の中国です。
中国の法律には、偽ホームレス行為を取り締まる法律は存在しません。そのため彼らは自らの行為をとがめることがなく、現在の珠海市には50人程度の偽ホームレスが存在しているそうです。裕福な外国人たちを相手にしている彼らは十分な収入を得ているようで、市内の高級マンションを購入し、外国製の自家用車で「出勤」した後、「物乞い」をはじめるそうです。日本のみなさんが中国に観光旅行に訪れた際、ホームレスが物乞いを求めてきたとしても、なるべく相手にしないで下さい。
社会的弱者という立場を利用し、自らのプライドをかなぐり捨てて行う偽ホームレス業は、「稼ぐためならなんでもする」という現在の中国社会の体質を色濃く反映したものだと思います。僕は「身内の不幸」、「身体障害」などといった不幸を切り売りして金銭を稼ぐ偽ホームレスたちの姿を見て、「同情するなら金をくれ!」という、かつて日本で大ヒットしたドラマ「家なき子」の主人公のセリフを思い出したのです。
著者プロフィール

漫画家
孫向文
中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)
(構成/亀谷哲弘)