ジャニーズ「SMAP解散」報道に見る部外者の受け止め方|やまもといちろうコラム
山本一郎(やまもといちろう)です。生まれ変わるなら、ジャニーズ方面になりたかったと1gも思わない方です。
あんまり芸能について記事を書かない私ですが、先般のベッキー不倫騒動や、その他芸能系のスキャンダルをすべてかき消すほどにSMAP解散と、マネージャーの飯島三智女史の独立報道は気になることがたくさんありました。
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まず、騒いでいる人はもちろん全員が部外者なのですが、ストーリーが秀逸で、この先どうなってしまうのか注目せずにいられないという、本物の劇場型スキャンダルなあたりが「さすがジャニーズ、凄いぞこれは」と思ってしまうわけであります。
国民的グループとして人気を博したけど、さすがにメンバーの高齢化とともに峠を越えていくあたりで、そもそもの成り立ちから支えてきた人と大御所一家との確執、仲良く仕事を続けてきたメンバー格差と、筆頭人気のメンバーが嫁ブロック、そして失敗する独立クーデター。恐らく、全員が全員、まじめに問題に取り組んだ結果、どうにもならなくなって、そして破局するという展開は、理想的なドラマのような流れです。
まあ、ここでドラマなら騒動を気に病んだメンバーが自殺してみたり、先輩後輩間で性別を超えた愛情が育まれていることが発覚するといった定番の展開を考えてしまうのですが、現実はもっと過酷なんだということのようです。
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そして、ここにきて全内幕という形で週刊新潮が渾身の記事を発表するわけなんですけれども、もともとのきっかけが週刊文春の記事、それを刈り取りマネージャー側や事務所内部の話を書き綴る週刊新潮と、文字通りキングオブゴシップの展開となっています。
しかしながら、これって一般的な話題に落とした場合、実はあんまり笑えない話でありまして、要するに成功した同族企業が世襲をするために、功労者である被雇用者のマネージャーをパワハラの末に退職に追い込むという図式に見えてしまいます。
別に報道だけを見て「労働者の権利が守られていない」とか、左巻きなことをいうつもりもありませんが、年間200億円以上を稼ぐドル箱事業であるSMAPは、一般論でいうならば雇用者の時間貸し事業であると同時に、権利ビジネスでもあるので、出演している本人たちもさることながら、会社としてのプロパティだけでなく制作協力者の権利というのも本来は設定されるはずです。
一般常識の通用しない芸能界
文字通り同族経営の3ちゃん会社(ジャニーちゃん、メリーちゃん、ジュリーちゃん)であったとするならば、どこぞ若いころ社会科で習った3ちゃん農業の世界がいま再び蘇るわけであり、いわば昭和封建制みたいな感じがするのです。大丈夫なのでしょうか。
また、一部報道では一番稼げる人の事務所残留を決定付けたのは、苦労も良く知る「嫁」であったとも伝えられています。
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まさかの「嫁ブロック」。そう、それは転職において大企業に見切りをつけ、夢のある脱サラやベンチャー企業転進を阻む、子供を抱えた嫁の「現実主義」が織り成す愛憎そのものであります。
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いやー、それも単なる女性ではなく、あの工藤静香が嫁であり、業界の現実も良く知っている人が「いくらマネージャーに世話になったからといって、会社を裏切る形でマネージャーについていって独立しても先がない」と、冷静に、というか冷酷に見極めているのでありましょうか。恐ろしい恐ろしい。やはり持つべきものは家族であります。
もちろん、打って出たら出たで浮かぶ瀬もあれと飛び出すことも手なのでしょうが、SMAPの中で一番稼げる自分が残るのと出るのとどちらが良いか、筋論も営業も仁義もすべて考えた上でのことなのでしょう。
そうなると、折り合いの悪くなったマネージャーが諸般事情を考えてお騒がせしたことを踏まえ腹を切るしかない、自分だけが退職するという形で、辞める他ないというのも仁義の切り方であります。そして、最後は飯島マネが新潮で手記を書いたり、芸能系ご意見番として個人として生き残る道を選ぶ。ジャニーズはそこを譲歩して引き続き威厳を保つ。そういう落としどころなんでしょうか。やっぱりジャニーズは凄いですよ、と思うわけでありますね。
凄いなあ芸能界。一般常識がほとんど通用しないところが。年の最初から、面白い物を見させていただきました。
著者プロフィール
ブロガー/個人投資家
やまもといちろう
慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数
公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)