”グーグル税”の導入が世界に与える衝撃度|やまもといちろうコラム (1/2ページ)
山本一郎(やまもといちろう)です。43歳にして、39.7度の発熱という未体験ゾーンを経験しました。いやー、高熱は辛いでございますね。理由は良く分からないのですが、久しぶりに二晩ずっとゴロゴロしてたら、嘘のように治ってしまいました。何だったんでしょう、あれは。
と、原稿が遅れていた理由を冒頭にサラッと言い訳するプレイを完結したところで、このところビジネス界隈で評判の「グーグル税」についてお話したいと思っております。
といっても、みんながデジタル界の世界帝国たるグーグル様に貢がされて、ヒーヒー言っているというようなEVILなエピソードの類ではなく、租税回避スキームを組んで商業統治国に税金を納めない多国籍企業の代表例としてのグーグルに対して、各国が課税強化の網の目を狭めつつあるよという話であります。
英国では、多国籍企業が公平な税金を負担していないとの批判が高まり、オズボーン英財務相は昨年、通称「グーグル税」を導入。意図的に税金を逃れた場合には高税率を適用するもので、租税回避の取り締まりを強化してきた。
今回問題となったイギリスは、その目と鼻の先にあるアイルランドに設立された欧州子会社から、イギリス向けサービスをされて納税がアイルランド国庫にという話ですので、あまり洒落になる話でもありません。
同様に、我が国でも税率の安い香港やシンガポールに本社を移し、租税を回避する動きはかねてからあって、とりわけシンガポールには日本でも札付きのイカレた連中が多数流れ込み、シンガポール当局から軒並み監視されるという事態に陥っているのが実態です。
本家グーグル税の導入が世界の潮流となり、当地主義の徴税が一般的な正義となるようであれば、内需が8割を超える日本にとっても福音でありますが、例えばスペインではグーグル税をまず広告とメディアの方面から進めた結果、グーグルが一足先にメディア事業から撤退し、結果としてアクセスの流入元を断たれたスペイン国内の既存メディアが、大打撃を受けると言う事態に陥ってしまいました。
このあたりは、徴税とビジネスの両立の難しさを表す格好のエピソードではあるのですが、一方で、国で自由にビジネスしている会社がそもそも納税していなかったとするならば、仮に彼らの撤退によって一時的に需要が失われたとしても、社会全体としては望ましい結論になるのではないか、という「反フリーライダー論」があります。