少年ジャンプ作家・横田卓馬×架神恭介『ダンゲロス1969』対談

デイリーニュースオンライン

『ダンゲロス1969』より
『ダンゲロス1969』より

 現在、週刊少年ジャンプで『背すじをピン!と』を連載中の横田卓馬先生ですが、かつては月刊ヤングマガジンにて筆者(架神恭介)の小説『戦闘破壊学園ダンゲロス』をコミカライズ連載して頂いていたことがあります。今回はその縁にて筆者のダンゲロスシリーズ最新作『ダンゲロス1969』に関して対談をさせて頂きました。

 なお、魔人と呼ばれる超能力者たちの戦いを描いた『ダンゲロス』シリーズは講談社BOXから発売されていましたが、最新作の『1969』は色々あって講談社からは出版できず、AmazonのKindleにて電子書籍として発売しました。収入的には……

<出版社から発売する場合>
3000部(予想印刷部数)x1500円(予想価格)x10%(印税)=45万円(収入)

<Kindleで出版する場合>
650部(目標売上数)x1000円(価格)x70%(印税)=45万5000円(収入)

 となるため、とりあえず650部の売上を目指していましたが、発売三ヶ月で既に550部程が売れています。店頭に並ばないデメリットを考えると、これは予想よりも大分良い売れ行きで、電子書籍の未来は結構明るいんじゃないかと思ってます。

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 さて、それは置いといて対談スタートです。

ダンゲロスって誰が主人公かよく分かんないよね

横田「今回『ダンゲロス1969』が講談社から出せなかったのって、やっぱり文章量が多すぎたせいですか?」

架神「あ、いきなりそこ来ますか。そうですね。最近、長い小説は売れないらしくて。ただ、一番大きいのはそこだと思うんですが、視点が多すぎる、場面が変わりすぎる、というのも言われましたね。でも、ダンゲロスは一作目の『戦闘破壊学園』の時から三陣営による群像劇だし、今回もそこは同じだったんですが……」

横田「色んな人が色んな考えで動いてるのが面白いところですしね。でも、読者には読み辛いと思われるんですかね」

架神「実際ありえるとは思います。中学の頃、友人にクーンツの群像劇小説を貸したんですが、『視点の変更が多くて話がよく分からない』って突き返されたんですよ。当時、僕はそんなこと思いもしなかったのでびっくりした覚えがあります。小説を読み慣れてない人には群像劇という時点でハードルが高いのかもしれません」

横田「僕も漫画のダンゲロスを描いてる時に、これはひょっとして漫画を読み慣れてる人じゃないと読めない漫画なのかな、と描きながら思ってました」

架神「どの辺りですか?」

横田「これは僕の責任かもしれないんですけど、まず字が多いですよね。それに視点がくるくる回っちゃうのもあるし。常に主人公を主軸に進むわけじゃないし」

架神「他の漫画は主人公を主軸に進めるものが多いですからね。いや、当たり前ですけど。主人公なんだから」

横田「そうですね(笑)」

架神「でも、ハンターハンターやブリーチも、あんまり主人公視点じゃないですよね?」

横田「そうは言っても、どちらも序盤はゴンや一護の視点で始まってますからね。軌道に乗り始めてから色んな人の視点に移っていくんですけど、ダンゲロスだといきなりじゃないですか。いきなりサブキャラ(友釣香魚)で一話使うところから始まって、香魚が主人公かな? って読者が思ったら、また変わって両性院(本当の主人公)が出てきて、さらにムーっていう主人公っぽいのが出てきて……。やっぱり始めの頃は主人公の話をちゃんと見たい、っていうのが読者の意見だと思います。……でも、架神さん、主人公創るの苦手だって前に言ってましたよね?」

架神「相変わらず苦手ですね……」

横田「『1969』はユキミが主人公だと思うんですが、僕が見た感じではあんまり活躍してないような……」

(イラスト:武富健治)

(注)ユキミは『戦闘破壊学園』における敵陣営『転校生』の一人であり、『1969』においては主人公。

架神「一応ユキミは『学生運動に参加する新人』という立場で、読者と一緒に新しい世界を見ていく、というキャラではあったんです。共感型主人公ってやつですね。『背すじをピン!と』の主人公、土屋くんと同じタイプなんです。彼の活躍は……ねじ込みにねじ込んでも分量的にあれが限界でした……」

横田「まあでも、能力的にもそんなにメインで戦える人じゃないし。『戦闘破壊学園』の主人公の両性院もそんなもんでしたね」

架神「両性院もあんまり主人公っぽくないですよね。ピンチの場面に颯爽と現れて『両性院が来たぞー!』ってキャラじゃ全然ない。彼が活躍したのって裏切り者を見抜いたのと、最後の最後でバトルしただけですし。漫画だと主人公を強調するのは特に大事だと思うんですが、両性院を主人公っぽく描くために横田先生はどういう工夫をしてたんですか?」

横田「表紙の絵とかで真ん中に立たせる! そうしたら主人公っぽくなりますよ」

架神「(笑)」

戦闘破壊学園なのに戦闘してない!

横田「『1969』の話に戻りますけど、英語ってのが出てきたじゃないですか」

(注)英語:『ダンゲロス1969』における武術大系。英単語をシャウトしながら空手技を繰り出すことで拳に謎のオーラ(英語)が篭もり強化される。

横田「あれ、結構好きで、ニンジャスレイヤーのカラテみたいな……」

架神「ああ、カラテと似てるのは多分源流が同じだからですね。英語もカラテも源流は気功とかカンフーだと思います」

横田「魔人能力以外の戦闘要素が出てきたのがすごく良かったんです。ワンピースも覇気ってあるじゃないですか。みんな覇気は後付けだって言っててあんまり好きじゃない感じなんですけど、僕は覇気めっちゃ好きなんです」

架神「ほう。というのは?」

横田「ロギア系って普通に戦うの無理じゃないですか。でもそれに対して覇気を鍛えることでダメージを与えられるのって希望だと思うんです。ダンゲロスも魔人能力って『発動したら即相手が死ぬ』みたいなのありますが、英語はそれに対抗できるって程じゃないにしても、そこに希望を見出だせる気がして。それに格闘技なのがいいですよね。『戦闘破壊学園』描いてて思ってたんですよ。こいつら、戦闘破壊学園とか言ってる割に全然戦闘してないなって」

架神「暗殺とか情報戦とか奇襲とかはやってるんですけどね(笑)。殴り合いの肉弾戦という意味なら確かにしてないな〜」

横田「そそ、肉弾戦が全く無いな、って。でも、英語があれば肉弾戦も描けるんですよ。変な英語言いながら正拳突き繰り出したりして絵面もちょっと面白いし、漫画で描いてみたいなって少し思いましたね」

架神「確かに『1969』では英語があったおかげで僕も殴り合いを描くことができました。ワンピースの話が出ましたけど、リアルに考えると色んな戦闘手段があって当然だと僕も思うんですよ。ワンピースだってあの世界の中に戦闘技術が幾つもあって、その中の一つが悪魔の実なわけじゃないですか。僕の英語の理解もそういう感じでした。魔人の話だからって、みんな魔人能力でばかり戦うわけじゃないだろう、と」

「読みたいけど食糞だけはどうしても無理」

架神「『戦闘破壊学園』も人には勧められないって散々言われましたけど、『1969』もその点はひどくて、人に勧められないとか、そもそも読んでることを知られたくないとか言われてますね……」

横田「なんでですかね?」

架神「やっぱり登場人物がうんこ食べてるからですかね……」

(イラスト:武富健治)

(注)食糞刑事こと神乃太陽警部補。うんこと炎を交換する超能力を持つ。

架神「どうしても嫌って人がいるみたいなんですよね。『読みたいけど食糞だけはどうしても無理! 面白そうな作品なのに読めない!』ってツイートを見ましたし。そんなに嫌ですかね……うんこ食べるのって」

横田「うーん……」

架神「ただ、人に勧めにくいってのは分からなくもないんです。情報を断片的に伝えると誤解されそうですし。『オレ、登場人物がうんこ食う小説読んでるんだ』って言ったら誤解されそうじゃないですか。アラレちゃんだって、『うんこを棒に挿して高々と掲げながら走る少女の漫画』って言ったら敬遠されますもんね」

横田「いや……アラレちゃんを紹介するのに、普通その言い方はしないでしょう……。もっと語るべきところ沢山あるし……。でも『1969』はうんこ食ってるのが印象強いから……あれってなんでうんこ食べてるんでしたっけ? ハンターハンターの念能力の制約みたいな?」

架神「あれは抵抗力を付けるためですね。自分の能力を十全に扱うために日頃から食糞して大腸菌などの毒素に対する抵抗力を養ってるんです。……うんこ食べたって絶対養われないと思いますけど」

横田「そういえばちょっと書かれてましたね。でも、もっとガッツリ説明した方が良かった気がします。なんでうんこ食べてるのかって疑問ばかりが頭に残ってたので……。もともとのキャラクターもうんこを食べる設定だったんですか?」

(注)架神は不特定多数のプレイヤーが作ったゲーム用ダンゲロスのキャラクターを使って小説を書いている。

架神「いや、そんなことないですよ」

横田「えっ、じゃあなんでうんこ食べてることに?」

架神「いっつもうんこ食べてたら面白いかなと思って……」

横田「…………」

『1969』はコミカライズできるのかな?

架神「『戦闘破壊学園』『飛行迷宮学園』と2作続けてコミカライズしてもらった訳ですが、三作目の『1969』はコミカライズ可能なんですかね? エログロがキツすぎて今回は無理、みたいなことも言われてますが……。グロ描写エロ描写は『戦闘破壊学園』と比べてどうでしたか?」

横田「面白い」

架神「あ、面白い? ひどい、とかじゃなくて?」

横田「面白いですよ。僕としては、なんでそんなに、読んでることを知られたくない、とか言うのかな、って思ってましたし。うんこ食べるのもリアルじゃなくてアラレちゃんみたいなうんこを想像してればいいし、すぐに股を広げる女性がたくさん出てくるけど、それもまあ面白いじゃないですか、絵面的に。書き方も面白いし全然気にならなかったですよ」

架神「じゃ、じゃあ、今回もコミカライズの可能性は……」

横田「全然できるんじゃないですかね」

架神「おおお! じゃあ、もし横田先生だったら、うんこ食べるところはどう描かれますか?」

横田「リアルなうんこはもちろん描かないですし、隠しながら描くとは思いますけど……全然いけるような気がします」

架神「モザイクとか?」

横田「いや、モザイクじゃないかな。『ふたりエッチ』が一物をバナナに置き換えるみたいなやり方で……いや、うんこを何に置き換えればいいのか分からないけど」

架神「マ、マゆゆなんかも行けますかね……?」

(イラスト:武富健治)

(注)マゆゆは東大に在籍する巨大な女学生で、膣内に警察車両などを収納して戦う。

横田「全然いけます! 全然大丈夫ですよ!」

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 横田先生、お忙しい中ありがとうございました! 特に最後は、いま『ダンゲロス1969』のコミカライズを考えている人には励みになる言葉だったと思います。横田先生は『戦闘破壊学園』にて、性犯罪者の一物を一物に見えない程のバケモノじみたものにすることでモザイクを使わずにやってのけたという実績があります。

 なお、ダンゲロスシリーズは二次創作フリーを謳っており、コミカライズも商用・非商用問わず無償、無許諾で行えます。『戦闘破壊学園』『飛行迷宮学園』も筆者に無断で漫画化が始まりました。『ダンゲロス1969』のコミカライズを考えている人は勝手に自分でネームを描いて出版社に持ち込んで下さいね!

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『ダンゲロス1969』(Kindle)

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