【中野劇団員殺害】冤罪寸前だった?付近住民が疑われた舞台裏

デイリーニュースオンライン

警察の執念の捜査が実った(警視庁提供)
警察の執念の捜査が実った(警視庁提供)

「迷宮入り」もささやかれた事件が急展開だ。

 東京都中野区のマンションで2015年8月、劇団員の加賀谷理沙さん(25)が遺体で見つかった事件。警視庁は3月12日、加賀谷さんの殺害に関与した疑いで戸倉高広容疑者(37)を殺人容疑で逮捕した。捜査が膠着状態に陥るなか、事件解決に向けた大きな一歩を刻むキッカケとなったのは現場に残された犯人の“痕跡”だった。

「事件発覚当時、加賀谷さんの上半身と爪の中から犯人のものとみられるDNA型が検出されていた。それが戸倉容疑者のDNA型と一致し、逮捕の決め手となった」(大手紙社会部記者)

■事件後に近所から実家に引っ越し

 捜査関係者によると、捜査本部は生前の加賀谷さんと交流があった人物らからDNAを採取して照会を進めていた。しかし、該当者は見つからず、捜査は行き詰まりをみせていたという。

「捜査陣は当初、怨恨によるコロシ(殺人)とみていた。加賀谷さんがアルバイトしていた居酒屋の関係者や、所属していた劇団などの交友関係の中から加賀谷さんとトラブルを抱えていた人物をリストアップしていたが、捜査は一向に進展しなかった。そこで、『流し』いわゆる行きずりの犯行の可能性も視野に入れて捜査を組み立てなおし、遂に戸倉容疑者に行き着いた」(同前)

 戸倉容疑者は事件当時、加賀谷さんの自宅近辺に住んでいた。しかし、事件発覚直後に東京を離れて福島県内の実家に戻るなど、不審な動きをみせていたという。

 犯人を取り逃がせば警察の威信は地に落ちていただけに、捜査関係者はホッと胸をなで下ろしていることだろう。1000人ものDNAを採取した結果実った逮捕だというから、地道な捜査は評価されてしかるべきだ。しかし、その影で「危ないところだった」と肝を冷やした連中もいるのだという。どういうことなのか。

 事情を知る報道関係者は、「実は事件を取材したマスコミの中で、逮捕された戸倉容疑者とはまったく別の人物を犯人視する動きがあったのです」と明かす。疑われたのは、加賀谷さんの交際相手の男性と加賀谷さんの自宅近くに住む別の住人だったという。

「加賀谷さんの自宅近辺では、加賀谷さんと交際相手とみられる男性が衝突する場面が度々目撃されており、事件前にはケンカ沙汰で警察が出動する事態にもなっていました。さらに、事件直後にマスコミの取材に応じた近隣住民にも疑いの目が向けられた。この男性は事件後、インタビュー取材を受けていたのですが、マイクを向けながら彼を疑っていた連中はいたようです。逮捕後のことを想定して、彼らの映像素材を集めていた社もあったという話です。一歩間違えれば冤罪被害者が生まれかねない状況だったというわけです」(先の報道関係者)

 実際、報道のミスリードによって犯人扱いされた被害者は過去に何人も出ている。

 1994年6月の松本サリン事件では第一発見者の会社員が冤罪報道の被害に遭い、メディアスクラムが社会問題となった。2007年11月には香川県坂出市で女性ら3人が死亡した事件で、事件とは無関係の親族男性を犯人視するような報道が問題視されている。

 悲劇が繰り返されなかったことは「不幸中の幸い」だったというべきか…。被害者の無念を晴らすためにも一刻も早い事件の全容解明がまたれる。

浅間三蔵
1978年、神奈川県生まれ。大学卒業後、大手新聞社に入社。社会部記者として警視庁や司法関連を担当する。震災を契機に独立し、現在はフリージャーナリストとして週刊誌などで活躍中
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