堀江貴文vs.給与明細を公開して年収アップを要求した京大教授の問題点|やまもといちろうコラム

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堀江貴文vs.京大教授の問題点(写真は京都大学HPより)
堀江貴文vs.京大教授の問題点(写真は京都大学HPより)

 山本一郎(やまもといちろう)です。そういえば、堀江貴文さんの早期釈放署名をしていたことを思い出しました。

 先日、その堀江さんが京都大学の高山佳奈子教授の件で、netgeekが顛末を記事にしており、さらにそれを引用する形で高山教授が反論していた内容が興味深かったです。

堀江貴文VS京大教授!給与明細を公開して年収アップを要求した高山佳奈子教授にホリエモンが噛み付いた

 まあ、これ単体で見るならば、堀江さんの言い分も分からなくはありません。国公立大学の教職員が、給与明細公開して単に給料上げろという内容だったと誤認したのだろうと思います。それに対して、納税者として「さすがにそれは」という脊髄反射をしたのでしょう。

 堀江さんの炎上商法については完全にメソッドがはっきりしておりまして、

  • ・話題になりそうなことを取り上げる
  • ・自分が相手にされそうもない目上の人を扱う
  • ・断定的に、短い口調、文章で言い切る
  • ・続報があっても、意見を修正したり、経過をヲチしたりしない
  • ・反論は無視する
  • ・次に出てきた話題にすぐ飛び乗る

 という、全体的に脊髄反射で断定的な口調を用いることで次々と話題の中心にいこうとするので、専門ではない問題を細かく理解したり認識できない人たちからすると、堀江さんの話を聞くと「堀江さんがそういっているのなら」と理解をショートカットできる点に、彼の良さがあるわけですね。

 で、高山教授が主張しているのは「東日本大震災復興財源確保のために必要だとして60数万円の賃金を一方的にカットされたが、嘘だったから返してほしい」という内容です。カットされた上に、使途がそのまま使われていたか疑わしいから、カットされた分を戻してほしいという内容ですから、堀江さんが脊髄反射で「馬鹿か」と言い放つべき主張を高山教授がしているとも思えません。

堀江貴文氏を弁護する

 そして、どうも産経新聞「iRONNA」で高山教授が意見をされるとのことで、これはこれで興味と期待を持って待ちたいところですが、個人的には、次の指摘に興味があります。

ブログの新しい書き込みの中では、私は確かに給与の引上げを求めていますが、その理由は、現に東大・京大からの人材流出が顕著に起こっているのを食い止める必要があると考えるためです。教育環境を最も重視している私自身は他大学に転出するつもりはありません。

■日本衰退の危険性

 これは、わずかながら私にも関係のあることなので申し上げますと、ぶっちゃけ東京大学や京都大学などの日本では有数の大学であっても、なかなか研究費が潤沢ではなく、科研費もそう簡単に通らないという現実があります。

 AO入試の問題点など、いくつか大学改革関連の話はウェブにも書きましたが、それ以上に、意味のある研究を行うための予算が乏しい件については、あれだけ技術立国だ、教育投資だといっていながら、なかなかむつかしいものがあるのかなあと感じるところです。

「AO義塾」問題と大学改革の是非

 単純な話、いくつか社会的な先導テーマを並べて研究でご一緒できる人を某大学が外から招聘しようとして、先方もいいねいいねと乗り気であったにもかかわらず、特任准教授のポストで払われる費用が先方の要求の五分の一以下の額で結局断られた、というような事例には事欠かないのが日本の定番です。

「良い研究者を集めて、質の良い研究プロジェクトを作ろう」としても、研究者のギャラが世界標準からみてとてつもなく安く、居残る人たちは基本的にはあまり海外に通用しない人たちばかりになるため、象牙の党になりやすいのが日本の大学改革の大きな障害であるとも言えます。全員が駄目ではないにせよ、待遇の良い海外の大学や研究機関から声がかからず、それまでの研究者に過ぎないというのは、日本としても物悲しいところでもあります。

 日本は企業の研究開発組織が強いので大学では基本的な素養さえ教えてくれれば充分、とまで言われた80年代90年代の世界観では、なかなか通用しないのも事実です。大学は、就職のための予備校なのかという議論もいまは昔、やはり社会全体がトータルできちんとした知的財産を国民の中に築いて経済効率を引き上げていくプロセスを考えない限り、日本は衰亡していってしまうんじゃないかと思うわけですが、如何でしょうか。

 そういう着眼点から全体を敷衍するならば、やはり「保育園に落ちた日本死ね!!」問題は、国家や社会がどういう国富を目指していき、そのためにはどういう教育が必要なのかをしっかりと踏まえない限り、なかなか改善していかないのではないかと思います。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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