【考察】私たちはなぜ”藤原紀香”という存在を受け入れないのか?

デイリーニュースオンライン

「藤原紀香写真集 NORIKA」より
「藤原紀香写真集 NORIKA」より

「言うことがいちいち頭にくるなぁ」
「“寝られない”アピールとか、マジでうざい」

 ここ数週間の週刊誌やSNSで見られた評価だ。婚約中という、普通なら祝福される状況にありながら、藤原紀香(44)へのバッシングが止まらない。記者会見をすれば揶揄され、ブログに何かを書けば炎上する。

 最近では、熊本の地震に触れて

「火の国の神様、どうかどうか、もうやめてください。お願いします」

 と被災者を心配しただけで、「熊本に失礼だ」と言われる始末。

 一部では、

「彼女の後ろ盾である芸能界のドンが、今回の結婚に反対しているという情報があります。前回、陣内智則(42)と離婚したときは100%紀香側についた芸能マスコミが彼女に厳しいのは、そのせいだと」(プロダクション関係者)

 そうだとしても業界内の話。一般人が紀香に対して、こうも拒否反応を示すのはなぜなのか?

 改めて言うまでもなく、紀香は1992年の<ミス日本グランプリ>や翌年の<東レ水着キャンペーンガール>に選ばれてデビュー。女優としてドラマに出演しつつ、格闘技K-1の司会もこなしたりと、マルチに活動してきた。その間に二度の結婚で話題を振りまいてきたのも、周知の通り。つまり厳しい芸能界で、四半世紀近くも表舞台に居た存在なのに……。

 そこで考えてみたい、藤原紀香という存在の仕組みを。

■紀香という「表徴の帝国」

Q1.紀香の仕事は何か?

・女優として大ヒット作、代表作と呼べるものは皆無。
・モデル、キャンギャルとしてはそこそこ売れたが、若い時だけ。
・報道レポーターや人権活動も多くやっているが、続報は聞かない。
・野球、サッカー、格闘技に絡んでいたが、対象がピークを過ぎると離れる。

A.結局、何が仕事なのか?よく分からない人である。

Q2.では紀香は、なぜ有名なのか?

・適度なタイミングで相手を変えた熱愛発覚と、時事問題に関する発信。
・芸能界の大物の寵愛を受け、つまらんニュースでも露出だけはキープ。
・トンチンカンなブログや発言をイジられまくる。

A.結局、露出だけは続けて来たが、理由はすぐに忘れさられる人である。

Q3.我々、一般人の紀香に対する印象(と割合)は(注1)?

・なぜか勝手に絶世の美人ってことにされている(それほどか?)⇒20%
・なぜか芸能界の大物連中に可愛がられている⇒30%
・なぜか根拠もなく「大物」「一流」と決めつけられている⇒30%
・なぜか不自然でズレた発言が多い⇒20%

A.結局、明確な人間像も芸能人としてのイメージも掴めない人である。

 紀香は無邪気なのだろう。悪意は無い。ただし彼女自身の内側から滲み出てくる表現や意思も、無い。あっても、まるで伝わって来ない。誰かが「藤原紀香」という空き瓶にいろんなドリンクを入れ、ラベルを貼ったりして20年以上も使ってきただけ。しかし彼女自身は、自分が空き瓶だといまだに気付いていない……。

 ────フランスの哲学者ロラン・バルト(注2)は東京について、「中心に皇居という、空虚な、何もない森だけの空間が広がっている」ことに着目。欧州と違い<意味>から解放された日本独自の自由さを肯定的に説いた────。

 紀香に意味はなく、紀香という記号(表徴)があるだけ。そこに意味があると見せようとするマスコミや本人に対して、我々は違和感やイラ立ちを感じてしまうのだ。心穏やかに過ごすには、ぬるく見守るか無視するしかない。

(注1) 割合…筆者の独断による。
(注2) ロラン・バルト…著作に『表徴の帝国』『神話作用』『零度のエクリチュール』など。

著者プロフィール

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コンテンツプロデューサー

田中ねぃ

東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ

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