映画『テラフォーマーズ』が酷評の嵐?人気漫画の実写化が難しいワケ
映画評論家の前田有一氏が4月24日、自身の映画評価サイト「超映画批評」上で、29日公開予定の実写映画『テラフォーマーズ』を100点中5点と採点した記事を発表。「長年私が指摘してきた邦画の問題点が凝縮されたような映画」などと酷評した。昨年大炎上した映画「進撃の巨人」シリーズの後編ですら30点をつけていただけに、本作の大爆死を予感させている。
■「進撃」の炎上騒ぎ再び?強烈な酷評
前田氏はかつて、昨年夏に公開された実写映画「進撃の巨人」シリーズの前編を40点、後編を30点と評価して物議をかもした。とくに前編の評価を発表した際には監督の樋口真嗣氏(50)がSNS上で「やったぜ! 大先生に誉められたらどうしようかと思ったがこれなら安心だ。というか誰だよこいつに試写状送ったバカは!」と激怒。同シリーズ炎上の幕開けとなった。
今回の映画『テラフォーマーズ』について前田氏は3月2日、試写会後に「あの進撃騒動を上回る可能性すらある、大変なことになるよこれは…」とツイートして話題を呼んだが、今月24日に発表した批評では、冒頭で「私はツイッター上でこの映画を酷評などしていない。酷評するのは、今からこの記事で、である」と宣言。3400字超の長文でロジカルに酷評し、「長年私が指摘してきた邦画の問題点が凝縮されたような映画」と結論づけている。
前田氏の非難の一つが、黒いあの害虫がモチーフの"テラフォーマー"と呼ばれる敵キャラクターの描き方について。「どうしても許せないのは『敵』の外観である」と語り、本作の肝となる「根源的恐怖感」を引き出すリアルな描写に欠けていると非難している。
「現在放送中のTVアニメ『テラフォーマーズ リベンジ』(第2期)にも同じことが言えます。第1期からスタッフが監督含めてガラリと入れ替えをされ、絵柄がよりポップなテイストに変わり、ストーリーには原作にない萌え要素が追加されました。またテラフォーマーの描写は肝心の怖さや獰猛さが半減しています。全国放送ですから子どもの視聴を考慮したのかもしれませんが、SNS上では原作ファンが失望感を漏らす声も目立ちます」(アニメ業界ライター)
映画版でもう一つ心配なのがCGだ。予告映像がYouTube各所で公開され、一部で低評価が高評価を上回っている(公式YouTube動画は評価付け機能を停止)。「質が悪いとかじゃなくて、挙動が明らかに不自然」「実写化すべきではなかった」「溢れ出るB級映画臭」と非難の嵐だ。
「日本映画はハリウッドに比べて低予算。CGを使うと途端に“ボロ”が出るため、SFアニメの実写化はとくに不向きです。『進撃の巨人』シリーズでも肝心の敵キャラクターが『巨人になったオッサン』などと揶揄されていました。それでも人気アニメの実写映画は“出せば原作ファンが観るドル箱コンテンツ”と勘違いされている節があります。中身が一番大事なのですが」(映画業界関係者)
ちなみに本作は、前田氏以外にも酷評する人が絶えない。本作は伊藤英明(40)や武井咲(22)、山田孝之(32)ら豪華出演者を招いた試写会を度々開催して映画PRを図っているものの、参加した観客が評価サイトなどで本作をこけおろし。「進撃以上」という低評価が少なくなく、試写会がかえって逆効果となっている。
29日の公開に向けて、先行きが不安な映画『テラフォーマーズ』。5月のゴールデンウィークは今のところ、気温20度超えの初夏になる気配。温かい日中にヒンヤリしたい方は、映画館で“恐怖体験”してみてはいかがだろうか。
- 文・海保真一(かいほ・しんいち)
- ※1967年秋田県生まれ。大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーライターに。週刊誌で執筆し、芸能界のタブーから子供貧困など社会問題にも取り組む。主な著書に『格差社会の真実』(宙出版)ほか多数。