【5月22日】胸のなかの「悲しみ」が消えていく!5月の満月に咲き乱れる花とは?
5月、私が暮らす仙台では新緑の若葉が重なり合って、緑のアーチが生まれます。見上げると、若葉と若葉がまるで手をつないでいるかのよう。
その姿をいにしえのひとは「結び葉」「思い葉」と呼んだそうです。淡青(うすあお)、萌黄色(もえぎいろ)、若竹色(わかたけいろ)と葉っぱの色をながめるのも楽しいですね。
さて、新暦の5月15日から20日は第二十一候「竹笋生ず(たけのこしょうず)」。たけのこはなんと、1日に120センチ近く伸びることもあるそう。たけのこが生えると、今度は蚕(かいこ)が桑の葉を食べてぐんぐん成長する、「蚕起きて桑を食む(かいこおきてくわをはむ)」(5月21日から25日)の時季へ。
今日はたけのこにちなんで、竹にまつわる悲恋とミステリーをご紹介しましょう。今回は、ちょっぴりこわい話ですよ。
かぐや姫と帝(みかど)の悲恋をおさらい
最近、某コマーシャルで、小悪魔的なかぐや姫が大活躍していますね。悲しい結末を迎えた物語だけに、茶目っ気たっぷり、キュートな笑顔を見せるかぐや姫を見るたび、なんだかしあわせな気持ちになります。
皆さんは、かぐや姫が登場する日本最古の物語「竹取物語」のストーリーを覚えていますか?
男も女もせつない「竹取物語」
むかしむかし、竹取の翁が光る竹を見つけて切ってみると、中からそれはそれは可愛らしい娘があらわれて、翁は妻と二人で大切に育てることにしました。娘につけた名は「なよ竹のかぐや姫」。
その姫の美しさはまたたく間に評判となり、5人の貴公子が結婚を申し出ます。結婚の条件として、貴公子らに無理難題を与えるかぐや姫。誰一人として、かぐや姫の難題をかなえたものはおりませんでした。
美しい姫の噂はとうとう帝のもとへ。狩りと称して、かぐや姫の家に忍び込んだ帝。驚いて一度は姿をかくしたかぐや姫ですが、その日から二人は文を交わすようになります。
3年ほど月日が流れ、かぐや姫は月を見て涙を流すように。心配した翁と妻がその理由をたずねると、かぐや姫は自分は月の人であり、次の満月に月に帰らなければならないと言って、さめざめと泣きました。
それを聞いた帝はかぐや姫を月へ帰すまいと兵士を遣わしますが、月の迎えが一言となえると閉ざされた扉は開き、かぐや姫は帝に天の羽衣と不死の薬をのこし、月へ。かぐや姫は月の衣を羽織った瞬間、すべての記憶を失います。
翁と妻はあまりの悲しみに床につき、帝は愛するかぐや姫のいないこの世界に生き続けても仕方がないと、天に近い山でかぐや姫の手紙と不死の薬を燃やしました。
その山は不死、「富士」と呼ばれるようになり、その煙はいまだ雲の中へ立ち上りつづけている、という物語。
どうしてかぐや姫は、二度と会うことができない帝に不死の薬をおくったのでしょう?
帝が生きていてくれたら、また会えるかもしれない。そんなわずかな希望をたくしておくったのでしょうか。男も女もせつない物語ですね。
【かぐや姫の悲しみ】竹の花は「死」のサイン
皆さんは、竹にまつわるちょっぴりこわい話があることをご存じでしょうか?
竹林はある一定の周期でいっせいに花を咲かせ、やがていっせいに枯れてしまうそうです。竹に咲く花は、その竹林の「死」を意味すると思うと、すこし背筋が寒くなりますね。
竹に花が咲くというのは非常に珍しいことから、「竹に花が咲けば凶年」と言われ、昔から恐れられていました。その周期は竹の種類によって異なると言われていますが、およそ60年から120年周期と言われています。
開花の周期や寿命など、竹にはまだまだ解明されていない部分が多いことから、神秘の植物と言われているんですよ。
「竹取物語」は、竹から生まれたかぐや姫が、月へと帰っていくという神秘の物語でした。かぐや姫という美しい花がもたらした、深い悲しみ。それは花が咲き、いっせいに枯れてしまう、竹林の一生とどこか重なるものがありますね。
愛を失った人を癒してくれる香り
5月22日は、ちょうど満月ですね。満月はかぐや姫が月に帰った日。5月の満月はひときわ強いエネルギーが、天から地へとそそがれる特別な月といわれています。満月に月のエネルギーはピークに達し、そこから日一日とスローダウンしていきます。
この時期はリラックス効果の高い甘い香りを。初夏に旬を迎える香りといえば「スイカズラ」です。かぐや姫とともに生きる希望を失った帝が、手紙と不死の薬を燃やした富士山でもスイカズラの花が咲き乱れます。
「忍冬(にんどう)」とも呼ばれるスイカズラは、愛を失った悲しみを癒す花。濃厚な蜜のような甘い香りが、悲しみでいっぱいになった心を鎮め、おだやかな時間を運ぶといわれています。私も大好きな香りです。
この5月、そして心が悲しみでいっぱいになった夜は、甘いスイカズラの香りにつつまれておやすみくださいね。