中国の軍艦が日本領海に侵入?世界ルールを無視した習近平政権の危険性
こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。2016年6月15日、中国海軍の艦艇が日本の口永良部島周辺の領海に侵入しました。同月9日にはフリゲート艦が尖閣諸島周辺の海域に侵入するなど、中国側は日本側に対し挑発的な行為を繰り返しています。
■世界のルールを無視した中国の主張
中共政府は「もともと尖閣諸島水域は中国の領海である」、「口永良部島周辺の水域は公海である」などと弁解を行いました。しかし中国が尖閣諸島周辺を自国領と主張しはじめたのは1970年代からで、永良部島周辺の水域は日本の領海であると国際法で定義されています。中国側の主張は世界のルールを無視した詭弁といえます。
今回の件に対する日本の親中派や左派・リベラル層の見解をネットのSNSで閲覧したところ、案の定「中国艦艇は攻撃を行っていない」、「領海周辺には侵入したが、日本の領土には上陸していない」「アベノミクスの失敗を中国脅威論でごまかしている」など中国側の行動を擁護する意見が書き込まれていました。
しかし攻撃は行わなかったとはいえ、日本の領海に侵入した船舶は武装した艦艇です。これがどれほど危険な事態であるかは、個人宅の庭先で刃物や拳銃を持った人物が徘徊している状態だと例えればおわかりいただけるでしょう。僕は15日の件に関して沖縄県の翁長雄志知事(65)、普段は反戦を訴え沖縄米軍基地撤退活動を行う市民団体側が抗議の声を上げないことに疑問を感じました。
日本の例のみならず、16年に入ると中国は南沙諸島周辺に海洋警備艇を派遣しフィリピンの漁船を締め出し、ロシアとインドが南シナ海における中国の軍事的拡張を支持していると偏向的な主張を行うなど、周辺諸国に対し攻撃的な姿勢を見せています。一連の行為を受け中国の機関メディアは意外な反応を示しました。
16年6月13日付の『人民日報』ネット版には、「航海には船長の判断が重要な意味を持つ」というタイトルの記事が掲載されました。記事の内容は「国家の政治とは船の航海に例えられる。船長が人権、食料、財産など船内のあらゆるものを独占してしまえば航海は必ず失敗する。同じように周囲の意見を取り入れず自分が考えた政策ばかりを為政者が行えば、必ず悲惨な最期をむかえるだろう」というもので、記事内では「唯我独尊」、「権力保持」といった言葉が使用されていました。
直接記述はされていませんが、記事内に記された独裁的な為政者とは習近平主席(63)のことだと見て間違い無いでしょう。普段は中共政府の主張を垂れ流す機関メディアが国家主席の批判記事を掲載したのです。
この記事は中国国内で大きな反響を呼び、当然すぐにネット上から削除されましたが、僕はこの件を知り人民日報の関係者の中に反習近平派が存在する、そして彼らは習政権が末期状態だと予想していることを確信しました。政権樹立以降、中国共産党は「槍桿子里出政権」(政権は銃から生まれる)というスローガンを掲げており、「権力闘争のための最後の手段は武力」という考えは中共政府の最高権力者に代々受け継がれた認識です。
そのため政権交代する時期、最高権力者たちは自分が粛清されないように軍事的指揮権を任期の最末期まで手放そうとしません。中国人民解放軍は「国家」や「人民」ではなく「中国共産党」を守るために存在する軍隊です。
今後、習近平主席率いる人民解放軍は中国の覇権を拡大するために、諸外国に対し侵略的軍事活動を実行するかもしれません。また国内の反乱分子を鎮圧するために大規模な粛清を行う可能性もあります。人民日報の記事は、機関メディアですら恐れるほど習近平政権の危険性が高まっていることの証明だと思います。
僕は日本側が中国という「厄介な隣人」と向き合うためには、集団的自衛権、ならびに憲法9条の改訂が必須事項になると思います。
著者プロフィール
漫画家
孫向文
中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の31歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。近著に『中国のもっとヤバい正体』(大洋図書)など。
(構成/亀谷哲弘)