誰のおかげでメシを食べられると思っているんだ!ありがちな「DV相談事例」トップ3

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誰のおかげでメシを食べられると思っているんだ!ありがちな「DV相談事例」トップ3

今昔問わず、夫婦げんかの際に夫が「誰のおかげでメシを食べられると思っているんだ!」と言うことは、世の妻たちのあるあるネタだと思います。

最近では妻が結婚・出産後も共働きの夫婦が増えてきたとはいえ、まだまだ夫の収入のほうが高いことが多く、夫からのこのような暴言はDVやモラルハラスメント(モラハラ)に当たるのでは?と思う方もいらっしゃるかもしれません。

そこで今回は、弁護士の筆者が、「これってDVじゃないの?」としてよく相談される事例を取り上げ、実際に夫からDVを受けたときにはどうしたらよいかについて解説したいと思います。

■よくある「これってDVですか?」相談事例トップ3

(1)「なんで俺を怒らせることばかりするんだ!」暴言を吐かれる

夫が、「お前には関係ない!」、「なんで俺を怒らせることばかりするんだ!」、「バカ!」、「お前の親はおかしい!」などと、自分の非を認めなかったり妻やその家族に対して人格非難をしたりする発言をしたことを理由として、妻から「これってDVやモラルハラスメント(モラハラ)に当たりませんか?」という相談を受けることがよくあります。

(2)暴力を振るわれる

夫に暴力を振るわれたとして、妻から「離婚や慰謝料請求はできますか?」という相談も多いですね。

(3)生活費を渡さない

「夫が借金をしているため、生活費をくれず子どもの物を買うにも困っています。」、「夫は浪費しているのに私には生活費を満足に与えず、私は実家から援助を受けています。」などと、夫から生活費をもらえないので離婚を考えていますという相談もよくあります。

では、これらの暴言・暴力や生活費を渡さないことがDVに当たるかどうか?

暴言や暴力が“通常の夫婦げんかの域を超えて、複数回かつ一定期間行われたとき”はDVに当たります。

また、衣食住にも困る程度しか生活費が渡されていない場合は経済的DVといえます。

冒頭で例に挙げた「誰のおかげでメシを食べられると思っているんだ!」という発言については、それが夫婦げんかの際に1回言われただけではDVとはいえませんが、回数が多い、声量が大きく妻を畏怖させた、夫の言うことに従わないときに実際に食費をくれなかった等の事情があればDVに当たるといえるでしょう。

■夫からのDVがあれば離婚できる?

結論からいうと、残念ながら1~2回程度の単発の暴言・暴力(けがの程度が軽いもの)や、妻が衣食住には困っていない場合は、その理由単体で裁判離婚及び慰謝料請求はできないと思ったほうがいいです。

なぜかというと、DVやモラハラそれ自体は法律上の離婚原因ではなく、裁判離婚が認められるためには、

(1)法律上の離婚原因(「婚姻を継続し難い重大な事由」)があり夫婦関係が破綻していると認められなければならず

(2)しかも、夫婦関係の破綻を妻のほうで立証しなくてはならない立証の負担がある

という2つのハードルを超えなければならないからです。

もちろん、1~2回程度の単発の暴力でも大けがをして診断書もある場合や、衣食住には困っていないけれども、夫は高収入で女遊びと外食をしたり高いブランドの服を着たりしているのに、妻はファストファッションで外食することも許されていないなど、最低限の生活しかしていない場合などは例外です。

その理由単体でも離婚が認められる場合もありますし、そのような夫は他にも離婚原因となる行為をしていることが通常ですので、それらの事情と併せて夫婦関係の破綻が認められ得るでしょう。

■夫のDV発言に対する妻の対処法

暴言を平気で言う夫は「この程度のことはDVではない」、「離婚したいと考えるほど嫌がっていないだろう」と思っていることが多いので、まずは、夫に対してはっきりと「私は辛い思いをしているのでやめてほしい」旨を伝えてみるといいでしょう。

それでも夫がDV発言を繰り返す場合には、最終的に離婚を検討したときに備えて、日記・手帳・家計簿等定期的に記録するものへ夫が発言した日時と発言内容をメモしたり、LINEやメールで信頼できる人に相談したりして、いざというときのための証拠化をしておくとよいでしょう。

暴力を受けてけがをしたときは病院で診断書を取ることも重要です。

なお、DV発言を録音することも考えられますが、その場でタイミングよく録音できるかという問題と、裁判提出用の証拠化が難しいという難点があります。

自分の身に危険を感じたときは、配偶者暴力(DV)相談支援センターや最寄りの警察の生活安全課に相談する方法もあります。

そこまで行かなくとも別居をしたりご家族がいれば実家に帰ったりすることで夫の頭を冷やさせることもいいでしょう。

DVの概念は幅広く、DVと思われる行為について他人の評価は分かれることも多いです。

夫からのDVにどう対応したらよいかは個別のケースによりますので、ママ友だけでなく配偶者暴力(DV)相談支援センターや弁護士等の専門家に相談することも検討してみてください。

【参考】

※  Creativa Images、Monkey Business Images/ Shutterstock

【著者略歴】

※ 木川 雅博・・・星野法律事務所(港区西新橋)パートナー弁護士。損害賠償・慰謝料請求、不動産の法律問題、子どもの事故、離婚・男女間のトラブル、墓地・お寺のトラブルその他、法人・個人を問わず様々な事件を扱っています。

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