24時間テレビ批判で絶賛されたNHKに「おまえが言うな」の声
NHKが誉められた──。
恒例の日本テレビ『24時間テレビ 愛は地球を救う』が、今年も放送された。例年通り、今年も<頑張る障がい者>が何人も登場。様々なチャレンジを見せてくれた。
<両足麻痺の少年が富士山登頂><隻腕の少女が海峡横断><ダウン症の少女がオリエンタルラジオ(注1)のヒット曲『PERFECT HUMAN』を踊る>などなど……。視聴者からは様々な意見が湧きあがったが、真っ向から否定してきた同業者が居た。誰であろう、NHKだ。
『24時間テレビ』が最高潮に向かおうかという辺りで、NHKのEテレが放送したのはバリアフリー・バラエティを略して『バリバラ』(注2)。この日は<検証!『障がい者✕感動』の方程式>と題し、清く正しい障がい者がハンデに負けずに頑張る姿を感動の対象にすることを、<感動ポルノ>と称した。性的な意味ではなく、人間の俗情に露骨にすり寄ることを指すのだろう。
障がい者を感動の対象にのみ押し込むのは差別だ、障がい者を笑ったっていいんだよ、という観点から『バリバラ』では様々な意見が飛び交った。が、セットには<笑いは地球を救う>と書かれ、出演者はお揃いの黄色いTシャツを着用。あからさまに裏番組の『24時間テレビ』に喧嘩を売ってみせたのだ。
「NHK、攻めてるねえ。日テレの社長こそ見た方がいい番組」
「いろんな障がい者がいる方が自然だよ」
「24時間テレビの印象操作はすごいからなあ」
と、感動の押し付けにウンザリしていた向きからは、大絶賛の声がNHKに寄せられた(注3)。
これを機に日本テレビも真摯に反省して、チャリティ番組(注4)のあり方を再考すべきだろう。番組で諫言してくれたNHKに感謝しないと……と言いたいが、NHKからして問題大ありなのだ。
■NHKは<同情ポルノ>?
そのNHKの放送で、いまだに続く大騒ぎの原因となっているのが『ニュース7』が報じた<貧困女子高生>問題。
貧困でクーラーもパソコンも無い、進学も出来ないと主張する女子高生が出演したが、彼女の机上に奢侈な物品が置かれていたり、趣味に散財していたこと等が判明し、いまも「捏造、ヤラセだ!」「ぜんぜん貧困じゃない」という批判が消えていない。国会議員の片山さつき氏(57)まで参戦して、「NHKに説明を求める」といきり立ったのも周知の通り。
言うまでもなく、この女子高生個人を叩くのは意味が無い。多少、大げさな表現があったとしても高校生のやったことだ。クーラーが有った・無かったを云々して抗議合戦をしているのも下らない。NHKが貧困問題の現実を報道したいのならば、どんな意図で彼女を起用したのかが問われるポイントだ。
「本件を貧困の典型例として取り上げたのではなく、経済的理由で進学を諦めなくてはいけないということを、女子高生本人が実名と顔を出して語ったことが伝えたかった」
これが片山議員に対するNHKからの返答。貧困の典型例ならば報道する意味はあると思うが、NHK自ら「女子高生」が「顔出し」で出演したことが主眼と言ってしまった。問題を提示し、解決の糸口を探る狙いではなく、「ほら若い女の子なのに悲惨でしょ」と見せ物化、ショー化しているわけだ。
『24時間テレビ』が<感動ポルノ>と批判されるのなら、NHKの貧困女子高生報道は<同情ポルノ>である。
今度は日本テレビが、NHKの貧困ショーを揶揄する番組を作ったら?
(注1)オリエンタルラジオ…再ブレイク中も中田が問題発言を連発!?
(注2)バリバラ…何回目かの放送。
(注3) 大絶賛の声…主にネットで。
(注4)チャリティ番組…「出演者にギャラ出てる」「なぜマラソンはいつもギリギリ着」なども、毎年恒例で浴びる批判。
著者プロフィール
コンテンツプロデューサー
田中ねぃ
東京都出身。早大卒後、新潮社入社。『週刊新潮』『FOCUS』を経て、現在『コミック&プロデュース事業部』部長。本業以外にプロレス、アニメ、アイドル、特撮、TV、映画などサブカルチャーに造詣が深い。Daily News Onlineではニュースとカルチャーを絡めたコラムを連載中。愛称は田中‟ダスティ”ねぃ