週1回は目標数値をふり返るべし!人生が劇的に変わる脳の使い方
『人生が劇的に変わる脳の使い方』(加藤俊徳著、PHP研究所)の著者は、脳の専門家として活躍する医学博士。これまでにも、『アタマがみるみるシャープになる! 脳の強化書』(あさ出版)など多くのベストセラーを生み出しています。
そんな著者は現在50代。30年以上にわたる脳研究の結果、「すべては『脳の使い方』で決まる」という結論に達したのだそうです。そしてそれが、本書のテーマにもなっています。
ほんの小さな変化の積み重ねが自分の行動を変え、やがて自分の脳を変えていくというのです。そればかりか、いずれは他人の行動をも変えていくことになるのだとか。
そして著者は、脳の成長にとって重要なのは「勉強」ではなく「経験」だとも主張しています。小さな気づきが、“経験=日常のすべて”を脳の成長に変えるという考え方。
「脳の使い方」とは、「他人につけられるスコアではなく、自分で自分にスコアをつけて脳をデザインする」こと。いいかえれば、「学校脳」から「社会脳」への転換を図ることが大切だというのです。
学校を卒業して自由なはずなのに、学歴や他人の評価ばかりを気にして、自分らしい生き方をできていない……。そういう現実が、多くの人々を苦しめる脳のクセだということ。
そのために必要なメソッドを、ひとつご紹介しましょう。
■「未来から来た人になる」思考をすべし
成長を続けるためにもっとも大切なことは、「未来から来た人になる」思考をすることだと著者はいいます。すなわち、自分が設定したゴールから、すべての行動を完全に逆算して考えていくということ。
なぜなら目標が具体的でないと、脳はいつまでも取りかかる準備をはじめないから。そのため、締め切り間際になってようやく取りかかり、「あと1週間あればなんとかなったのに……」と、いつも後悔してしまうわけです。
別な表現をするなら、脳は漠然と考えているだけでは、いつまでたっても行動に移そうとはしないということ。
「最近体力が落ちてきたから、体を動かさないとな」「やっぱり英語くらいは話せるようにしておかないとな」などと、あいまいに「そのうち」「いつか」で考えているだけでは、脳は働かないのです。
大切なのは、1年後(あるいは10年後)の自分が「マラソンを完走する体力をつけている」「TOEIC(R)で800点をとっている」などの具体的なゴールを設定すること。
そして、目標を達成している“未来の自分”が、“いまの自分”になにをやってもらいたいのかを考える。それが、「未来から来た人になる」という発想。
■数値化すればいまの状況が正確にわかる
具体的にいえば、自分の置かれた状況を必ず「数値」に置き換えて、できる限り正確につかむということ。
著者の場合は、目標までの日数と月数を正確に数え、「きょうは345日目で12カ月前だ」とか、「あと408日で14カ月を切った」というように管理しているそうです。
上記のTOEIC(R)の例について「TOEIC(R)で800点をとる」という目標を設定したとしましょう。
目標を達成するための問題集を買い、試験日から逆算して○月○日までに計3回演習しようと計画を立てたなら、「1日あたり○ページ」という数値が出ます。
そして、これを遂行するにあたっては、
・現在、目標達成率は何%か
・予定スケジュールから何%遅れて(進んで)いるか
・遅れを取り戻すにはどうすればよいか
というようなことを定期的にチェックすることが大切だというのです。
■最低でも週1で目標数値はふり返るべし
また、それらの具体化した数値を手帳に書き込むなどして、できれば毎日、少なくとも週に一度は振り返るようにすることが大切。そうすることで、新しい気づきが生まれるからです。
さらに残りの日数もつけると、1日のモチベーションを保つことができるので、できるだけ細かい進捗状況を記録していくと効果的だそうです。
いわば定期的に目標達成率をふり返り、少し遅れがあるならペースを上げるなど対処することによって、締め切り間際に焦るというようなことがないように自分を律していくということです。
なお、「いますべきことが見当たらない」のであれば、「夏季休暇でスウェーデン旅行へ行くために12カ月(1年)で50万円貯める」などの目標でもかまわないそうです。
趣味であっても、数値で客観的に把握する習慣が身につけば、仕事においても「やる気が出ない」「追い込まれてテンパッてしまう」という事態を回避できるようになるわけです。
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全体的に「学校脳」の人と「社会脳」の人を対比しながら話が進められるので、とても理解しやすい内容。脳を使いこなすために、ぜひ読んでみてください。
(文/作家、書評家・印南敦史)
【参考】
※加藤俊徳(2016)『人生が劇的に変わる脳の使い方』PHP研究所