ガセネタ続出の豊洲新市場で地区住民への風評被害が加速|やまもといちろうコラム

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 山本一郎(やまもといちろう)です。千代田区在住です。

 先日から、例の豊洲新市場の地下ピットが「謎の空洞」とされ、そこに大規模建造物であれば当然発生するであろう水分が強アルカリ性だなどと共産党に馬鹿ネタ流されるというトラブルがありました。

 その中核には、立地であった「東京ガス工場跡地」という問題があるわけですが、どうしてもシアン化合物やベンゼンといった汚染物質が残留しているという課題があります。これを、豊洲新市場にするにあたり、土壌汚染を4.5m掘り下げて綺麗な土に入れ替える改修を行うことで、無害化したはずが、いまだに豊洲は汚染されているという報道が繰り返されているわけですね。

豊洲市場について
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 あまりにもガセネタが飛び交い過ぎていたので、個人的には早いところ終息してもらいたいところなんですけど、ひっそりと風評被害の対象となっているのが豊洲地区に立っているマンションなどの住民であります。

 平たく言えば、東京湾周辺の湾岸地域は、首都圏人口3000万人が暮らす最終地点であり、古くは汽車基地があり、ガス工場もあった地域で汚染が出ないはずがありません。東京湾全域の汚染は、それこそ1960年代からの高度成長とともに加速する形で広がってしまったのは致し方のないことです。

■豊洲は危ないという風評被害

 そのうえで、豊洲イコール汚染というワードだけが広がっていけば、当然豊洲は危ないという風評被害を呼ぶことになります。実際には、豊洲の汚染は述べた通り土壌汚染を掘り下げ処理されているわけですけれども、その処理自体は、東京ガス工場跡地のみ、すなわち、豊洲新市場の地下だけです。必ずしも、豊洲全域の問題ではないのです。

 そうなってくると、豊洲に建っている住宅地や商業地の土壌汚染はどうなってしまうのか、という話に繋がっていくわけですが、もちろんその周辺の豊洲の開発にあたっては、土壌汚染法で認められた改修が行われていて、適法です。

「汚染物質があるかもしれない」という話は、何度も調査が行われ、安全確認されていたとしても疑心暗鬼になり、健康被害に直結するのではないかという懸念を生んでしまいます。事実上のゼロリスク症候群であり、ある種の「放射脳」のような世界ではないかと思うわけです。つまり、汚染が改善されているはずの豊洲に対する不信感で、そもそも築82年で老朽化著しいアスベスト残留建築物である築地市場の危険性が見えなくなっているのでしょう。

 本来であれば、豊洲全体の問題ではないはずなのに、豊洲に住む人たちへの風評被害が広がる結果となり、また科学的知識や工法の理解があれば考えなくても良くなっている土壌汚染への問題を拡散して不必要に再検討したり、再調査したりして時間を浪費してしまうわけです。

 問題をしっかりと整理、理解せず、問題を広げ続けたメディアにも責任はあるのかもしれませんが、引き金となったのはやはりガセネタです。今回は、徹頭徹尾ガセネタを発信し続けた人々に対する注目を今後はしていく必要があるのではないかと思います。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

やまもといちろう

慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数

公式サイト/やまもといちろうBLOG(ブログ)

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