日本では瓶で育てた「盆栽猫」が流行?中国反日メディアが報じた”動物虐待デマ”
こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。
中国国内は2001年以降、急速にインターネット環境が普及し始めました。世界各国と同じく中国のネット社会には虚実入り混じった情報が氾濫しているのですが、その中には意図的に日本を批判する情報を流す層が存在します。彼らは「憤慨の青年」という意味で「反日憤青」と呼ばれ、日本を貶めることを使命としています。今回は反日憤青が投稿した代表的なデマ情報を紹介します。
■”盆栽猫”のトンデモ話を中国メディアも報道
日本には盆栽という樹木を小さな鉢に収納する文化がありますが、2003年ごろ、中国のネットに「日本では『盆栽猫』が流行している」という情報が流れました。ネット上に公開された盆栽猫の作り方は、生後一ヶ月程度の子猫を瓶に入れて閉じ込め、口と肛門にチューブを差し込み猫が飲食物を摂取、排泄できるよう細工し、猫に骨が軟化する薬品を飲ませ、瓶の中でも成長できるようにします。猫の成長が止まると瓶から取り出し、瓶型の猫を「BONSAI-KITTEN」(盆栽子猫)という名で世界各地に通信販売しているという話です。
もちろん、日本にこのような悪趣味なペットを作成する業者は存在せず、一人の反日憤青が投稿したデマ情報だったのですが、この情報は当時中国中のメディアで紹介され大きな反響を呼びました。中国メディアは、反日感情をわき立てる情報であれば真偽の検証をろくに行わず報道します。そして、残念ながら2005年に盆栽猫はデマ情報と認定されたにも関わらず、09年当時でも「事実」として報道され、16年現在でもSNSやBBSから削除されていません。これは中共政府が意図的にデマを野放しにしているのかもしれません。
しかし猫を瓶に閉じ込める画像は本物であり、当初は出処が不明だったのですが、検証の結果2000年ごろアメリカの個人ホームページ上に投稿された写真であることが判明しました。写真公開後、猫に対する虐待を非難するメールがアメリカ各地から殺到し、ホームページが閉鎖するまでに追い込まれました。その後警察が動物虐待の罪でホームページの作成者を拘束するまでにいたったのですが、取り調べの結果猫たちは虐待を受けておらず、盆栽猫は悪質なジョークだと判明しました。ちなみに今回の記事を書くにあたり、知人から日本でも猫が滝つぼに落ちる映画や不良のコスプレをした写真が、動物虐待の濡れ衣を着せられ糾弾されたことがあるとうかがいました。
盆栽猫のホームページの製作者は、「Dr. Michael Wong Chang」と自称するマサチューセッツ工科大学に通う中国人留学生でした。ホームページは「bonsaikitten」と名付けられていたように、留学生は意図的に反日的な情報をネットに流していたのです。
訪日後、僕は日本には多くの愛猫家がいることを知りました。くわえて日本には「むやみに動物やモノを傷つけてはならない」というアニミズムが浸透しており、盆栽猫のような事件はありえません。一方中国では、唐王朝末期から中華民国時代にかけて「女性は足が小さい方が美しい」、「貞操を確保させるために歩きづらくした方がいい」という考えから、女性の足を小さくする「纏足(てんそく)」という文化が生まれました。その方法は小さいころから女性の足を縛り付け成長を止めるという、盆栽猫と同じような手法です。
現代の中国には前時代的なプロパガンダ情報が氾濫しています。僕は中国が一刻も早く民主化して、自国民たちに正確なメディア情報が与えられる体制になってほしいと思います。
著者プロフィール
漫画家
孫向文
中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。
(構成/亀谷哲弘)