高畑裕太事件 「不可解な結末」の理由とは
逮捕され、世間の罵声を浴びた“二世タレント”。だが急転直下、不起訴に。この不可解な逆転劇はなぜ起きた?
若手俳優・高畑裕太(23)が起こした今回の騒動。事件の発覚とともに、母親で女優の高畑淳子ともども“バッシングの嵐”にさらされたが、騒動後1か月余りが経ち、微妙な変化が生じている。
「8月23日、二世タレントの高畑は、映画『青の帰り道』の撮影で宿泊していた群馬県前橋市内にあるホテルの自分の部屋で、同ホテル従業員のA子さんへの行為で逮捕されました。事件が表沙汰になると、真実がまだ明らかになっていないにもかかわらず、“過保護”“親バカ”など、一方的に母親の責任を問う声が噴出。だが急転直下、示談が成立し、拘留満期に満たない9月9日に不起訴で釈放になると、批判の声は少しずつ減っていきました」(全国紙社会部記者)
その“変化”には、いくつか理由があるという。「こういった事件が不起訴になるのは、示談が必須条件ではありません。たとえ、示談になっても、検察側が立件できると踏んだなら、立件する場合もある。しかし前橋地検は、示談が成立したうえに、高畑と女性側の部屋での“行為”の供述が真っ向から対立していることもあって、不起訴もやむなし、という判断を下したのです」(前同)
また、110番通報し、示談交渉を仕切ったのが、「A子さん本人ではなく、当初は地元の反社会的組織の関係者であるとの情報がまことしやかに流れたこともあり、マスコミも事件には“深い闇”があるのではないか、と、慎重に取材の裏取りをせざるをえなかったというのが本当のところです」(夕刊紙記者)
さらに、その後、9月21日発売の『週刊文春』で、通報した男性が、それまでマスコミで報じられていた60代の地元の反社会的組織の現役構成員ではなく、44歳の元反社会的組織の男性X氏が示談交渉を仕切っていたことが報じられた。「情報の錯綜といえば、A子さんに関してもそう。49歳、56歳説など、年齢も諸説が乱れ飛び、あげく、埼玉在住、ギャル風で橋本マナミ似などと報じるところもありました。でも結局、夫も子どももいる44歳の一般人のようです」(前同)
もっとも、A子さんと件のX氏とは、以前からの知人で、事件が起きた後に、すぐに相談したのは間違いないようだ。「当初、高畑は“歯ブラシを持って来てくれ”と4階の自室にA子さんを呼び出し、犯行に及んだと報じられましたが、高畑の弁護士側の発表によれば、高畑は一切、認めておらず、こちらは誤報のようです。実際は、高畑が2階のフロントまでA子さんを口説きに来て、2人でエレベーターに乗り込んで、高畑の4階の自室に行ったというのです」(前同)
それにしても、なぜ、これほど情報が錯綜し、誤報の嵐となったのか? この複雑怪奇な事件の真相を、本誌は探ってみた。ある捜査関係者は、匿名を絶対条件に、こう重い口を開いてくれた。「私は当初、警察側が60代の男性と同じ名前の人物が、女性の背後にいるとの情報を関係者らに話したと聞いています。一方、各マスコミも地元で取材に走る中で、こうした人物の情報が耳に入り、それに飛びついた。なぜ警察が、その名前を出したのか……」
この事件とは、まったく関係ないにもかかわらず、名前が取り沙汰された男性は、地元を拠点とする実在の広域反社会的組織の2次団体幹部。当人にすれば、“本当にいい迷惑な話”だっただろう。
「高畑が逮捕されたのは、23日の午後1時40分でしたが、一部のマスコミには逮捕情報が、なぜか23日の午前中のかなり早い時間から流れていました。これは明らかに、群馬県警がつきあいのあるクラブ加盟社の大手マスコミ記者に、まだ逮捕前にもかかわらず、情報を、“リーク”した以外に考えられませんよ」(テレビ局報道局デスク)
だが、警察側は途中から一切、男性の名前を語らなくなったという。一方、前述の「歯ブラシを部屋に届けさせ、犯行に及んだ」との報道が出た源は、県警のリークの可能性が大だ。「逮捕翌日、県警は記者レク(説明)しています。その際、簡単な文書を配布するとともに、口頭で歯ブラシの件を解説しています。高畑の発言などの報道も、このレクの結果です」(県警詰め記者)
検察関係者が、こう耳打ちする。「それにしても不可解なのは、犯行があったとされる当日の極めて早い段階で、県警が高畑を逮捕したという事実。この手の事件では示談話に利用されないように、絶対に示談にしないと被害者側から警察が確認を取るのが大前提です」
ところが、結果は示談。「しかも、犯行があったとされる、わずか1時間半後、A子さんの知人X氏がホテルに押しかけ、捜査員20人が行き交うフロントで、大声で示談話をしたというんです。県警は逮捕に踏み切る前に、もう少し慎重に捜査する必要があったのではないでしょうか」(前同)
しかも本誌の調べでは、このX氏は、前述の地元の反社会的組織の現役構成員とはまったく違い、東京に本部を構える別の広域反社会的組織の元構成員。“元”とはいえ、「このX氏は、これまで強盗や監禁容疑で2度の逮捕歴があります。このことから考えるに、示談金を念頭に、X氏が動くことは県警も容易に予測できたはずではないでしょうか」(前出の県警詰め記者)
ちなみに、「この事件は親告罪とは違います。ですから、示談に関係なく起訴できます。それにもかかわらず、早々に不起訴になったということは、今回の事件は、部屋での“行為”の真相は分かりませんが、少なくとも悪質ではなく、高畑の弁護士が発表した通り、高畑側は“合意”で関係を結んだとの認識と思われます。県警が功を焦ったと批判されても仕方ないでしょうね」(前同)
さらに、前出の検察関係者は、こう首を傾げる。「実は、高畑が拘束され、逮捕される前、高畑サイドとA子さん側のX氏とが、前橋署の控室で“示談”も含め、謝罪の話し合いをしているんですよ……。警察署内で事件の当事者同士が話し合いをすれば、当然、高畑側にとっては逮捕が頭にチラつき、相当にプレッシャーになるのに、なぜ事件を巡る双方の話し合いを、警察署内で行ったのか、はなはだ疑問ですよ」
月刊『創』編集長で、ジャーナリストの篠田博之氏も、今回の県警の捜査のあり方に関しては懐疑的だ。「歯ブラシうんぬんは警察がオフレコで語ったことでしょう。事件の悪質性を理解するうえで、非常に分かりやすい。でも、裕太さんが認めてもいないというのに、なぜ、被害者側の言い分を鵜呑みにして、そのまま広報したのか? おかしいですよ。もちろん、警察情報をそのまま報じる大手マスコミも問題ですがね」
さらにジャーナリストの寺澤有氏に至っては、被害者女性側の知人X氏が、110番通報したとされることに、こう疑問を呈する。「元反社会的組織の人間となれば、一般には、より捜査に慎重を期すもの。それを分かりながら早期に逮捕したのは、県警にしても高畑が有名人だから手柄になるということで飛びついたと疑わざるをえないですね。警察情報をタレ流しにした大手マスコミは、今後は名誉挽回のためにも、群馬県警の捜査手法のあり方を取材すべきではないでしょうか……」
被害者Aさんの心と体の傷はあまりに深いが、今回の件で高畑が失ったものも決して小さくはない。事件が残した傷が癒える日は、はたして来るのだろうか?