世界中のメディアが偏向?中国人から見た「米大統領選挙」報道の真実 (2/2ページ)
16年6月、「中国のリベラルズ」と呼ばれる天安門事件当時、学生団体のリーダーを務めていた人々が来日した際、僕は彼らと接触したのですが、アメリカ大統領選について質問すると予想通り彼らの全員がヒラリー氏を支持していました。
中共政府の強権により弾圧された彼らがリベラル的な思想を持つのは当然といえるかもしれませんが、現職のオバマ大統領の例を見ればわかるように、リベラル、八方美人的な政策を国家、特にアメリカのような大国が行えば世界に混乱を及ぼします。リベラルの一人「王丹」氏は「SEALDsを含むあらゆる学生運動を支持します」と語っていましたが、僕は行き過ぎた思想だと思います。
1年近い期間をかけて行われ、国民の直接選挙で決定するアメリカ大統領選を当初僕は合理的なシステムだと思っていました。しかし、時間をかける分選挙資金も莫大なものになるため、現行のシステムだと潤沢な資産を持つ人物しか立候補できず、今回のように人材の偏りが生じる可能性があります。
中国の教科書内では自国の人民代表大会制度を正当化するために、資本主義国家の選挙を「資本家のゲーム」と批判的な意味で記述されています。捏造、誇張だらけの中国の教科書ですが、僕はアメリカの事情に限って言えばこの記述はあながち間違いではないと感じました。
アメリカが採用する大統領制は国家の行政権を一人の人物に委ねるシステムです。一方、日本の議院内閣制は政権与党が首相を選択、輩出するシステムです。そのため、問題のある人物が政権を握ってしまった場合、容易に首相を変更することが可能です。
「国民がリーダーを選べない」、「首相がコロコロ変わる」と批判されることがある日本の政治体制ですが、僕はアメリカの大統領制よりもはるかに合理的だと思います。
著者プロフィール
漫画家
孫向文
中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。