中国の秋は“抗日の秋”?中国人の反日感情が激化している理由

デイリーニュースオンライン

反日感情が高まる中国国内 (C)孫向文/大洋図書
反日感情が高まる中国国内 (C)孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。

 日本の秋季は「芸術の秋」、「スポーツの秋」、「食欲の秋」など様々な言葉で形容されます。僕も名月や紅葉など日本の秋の風物詩を満喫しましたが、その一方、中国の秋季は「反日の秋」と化します。

■秋季に集中する抗日イベント

 2014年2月27日、中国の国会に当たる全国人民代表大会は、毎年9月3日を「抗日戦争勝利記念日」に制定したことを皮切りに、9月18日を「満州事変記念日」、12月13日を「南京大虐殺記念日」と定めました。また2015年の8月には抗日戦争70周年を記念して北京天安門広場内で大閲兵式(軍事パレード)を開催するなど、秋季になると立て続けに抗日に関するイベントを実施しています。そして、これらのイベントは確実に中国国民の反日感情を高揚させます。

 16年11月22日、日本では東日本大震災の余震と思われる地震が発生し、福島などに津波が発生しました。この地震は僕が訪日後体験したものの中で最も大きく、発生時は思わず眠りから覚めてしまいましたが、当日は中国国内でも大きく報道されました。

 そして中国のインターネットサイト「微博」の地震を伝える公式報道のコメント欄には「イイね!」が4000回以上押され、「日本人は地球上から絶滅すべき」、「震度がまだまだ足りない!」、「なんで死者がいないんだ!? 悔しい!」、「昔は日本人が中国人を大虐殺した!これは天罰だ!」、「もう一度揺れろ!」などと、日本の不幸を祝うかのような書き込みが数多く寄せられ、いずれも3000回以上の「イイね!」が押されていました。

 実は東日本大震災や熊本地震時は「日本人には罪がないから無事を祈る」、「くまモンがんばれ!」などと、中国から鼓舞するような言葉が多く寄せられたのですが、今回は正反対の事態となりました。

 中国人の反日感情の高まりを示す例は他にもあります。16年11月3日、東京・中野区内のアパートで「江歌」という女子中国人留学生が首を切られて殺害されるという事件が発生しました。

 結局、事件の犯人は元交際相手の中国人男性であることが発覚しましたが、発生直後は「日本に留学したことは自業自得だ!」、「祖国で勉強すればいいのに。日本鬼子に行くからだ、ざまあみろ!」、「驚きません、南京大虐殺を引き起こした民族だから」、「在日中国人はみんな漢奸売国奴だ!」と日本という国自体を攻め立てる意見がネットに多く寄せられました。

 22日の地震時も「歴史を忘れるな!日本人の無事を祈る奴はみんな偽善者だ!」、「歴史を忘れるな!人道主義云々を語る奴は南京大虐殺を思い出せ!」、「3つの抗日記念日を銘記しよう!」と、過去の日本の戦争犯罪を絡めた意見が散見していました。

 どうやら秋季に開催された抗日イベントに多くの中国国民が感化されてしまったようです。一方、そのような自国の風潮を危惧する層も存在し、地震の被害に対しては「歴史など関係ない、被災者の無事を祈ろう。特に在日華人たちの」、「こういう時に日本を罵倒するのは我が民族の悲しい性だ」、「みんな理性的に発言しようよ」と反日層を批判し、留学生の事件には「被害者を尊重しよう」、「犯人は中国人だ」、「被害者を自業自得と批判する連中はおかしい」と冷静、客観的な意見も寄せられたのですが、反日層から「偽善者」、「漢奸売国奴」と相次いで反論されました。

 16年11月21日、遼寧省瀋陽市の商業施設内に「満州事変を記念する」という文字とともに頭を下げへりくだる安倍晋三首相の蝋人形が展示されました。しかも蝋人形にはちょび髭が加えられていました。おそらく安倍首相をアドルフ・ヒトラーに例えているのでしょう。

 習近平政権発足以降制定された「反日の秋」は、着実に中国国民たちを洗脳しつつあります。現政権が続くかぎりこの傾向はさらに深刻化すると思います。もし中国関連のお仕事をされている方がおりましたら、秋季時の中国人たちの意識には十分注意してください。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。

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