秋津壽男“どっち?”の健康学「大人の虫歯は抜くべきか、抜かぬべきか?高額な治療費目当ての抜歯には注意せよ」 (2/2ページ)
ただでさえ生活に窮する歯医者が増えており、こうした治療を勧める歯科医は少なくありません。
インプラント自体は技術的にすばらしい発明です。入れ歯のように臭くならないので、薬剤で洗う必要もありません。ただし、歯茎の骨は非常に狭くて薄いので、下手な歯科医がやると抜けたりします。失敗した場合は骨までダメになるため、別の骨を移植して元どおりにする、その間、1年ほどかかるなど、大変な症状を招きかねません。
また、保険がきかないので高額な治療費(10万円から200万円)ともなります。中には「言い値」であることもあり、高ければいいというものでもありません。治療期間も最低3カ月かかるなど、根気も必要となります。
その腕前には天と地ほどの差がありますので、インプラント治療だけは、上手な歯科医にやってもらうことが肝要です。
今や歯医者にかかる大人のほとんどが歯周病です。歯周病とは、細菌感染により引き起こされる炎症性疾患で、歯と歯肉の間にたまった細菌が炎症を起こして歯茎が腫れる症状です。予防には正しく歯磨きをして、歯肉の中にある歯石を取り除くこと。歯周病が原因で歯を抜き、インプラントやブリッジをするのは最後の手段です。
歯は極力抜かない、と覚えておいてください。
■プロフィール 秋津壽男(あきつ・としお) 1954年和歌山県生まれ。大阪大学工学部を卒業後、再び大学受験をして和歌山県立医科大学医学部に入学。卒業後、循環器内科に入局し、心臓カテーテル、ドップラー心エコーなどを学ぶ。その後、品川区戸越に秋津医院を開業。