共産党王朝の終焉を暗示か?中国全土で加熱する”監視カメラ2000万台”体制の実態

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中国における監視社会の驚愕の実態 (C)孫向文/大洋図書
中国における監視社会の驚愕の実態 (C)孫向文/大洋図書

 こんにちは、中国人漫画家の孫向文です。2017年10月24日、同月18日から開催されていた中国の国会にあたる「十九代」(中国共産党第十九回全国代表大会)が終了しました。

 十九代が開催される直前の17年10月初頭から、CCTV(中国中央テレビ)の発表により、中国全土におよそ2000万台の監視カメラが設置されました。ちなみに2000万台という数は政府の公式発表で、実際の設置数はこれを上回ると予想されます。

 僕の故郷の浙江省・杭州市の中央通りには、およそ10m感覚で4台のカメラが設置され、それぞれのカメラは東西南北の方向に向けられており、文字通り「死角なし」の状態です。

■中国国民を監視する高性能監視カメラ

 今回設置されたカメラはAIが搭載された最新型で、通行人の顔面を撮影した瞬間、サーバー内の認識データと照合し、性別、身長、年齢といった様々なデータを監視者に表示します。さらにAIの顔面認識の技術を応用し、身分証明書に使用された写真と合致すれば、カメラに映った人物の本名、出身地、住所もただちに把握できます。

 解像度も非常に鮮明で、具体的な例を挙げると中国のある都市の中学校の教室には監視カメラが設置されているのですが、教室の後方に設置されているにも関わらず、黒板の隣に貼り付けられたA4サイズの通知書に印刷してある文字や、授業中の生徒が書いている文章の一文字一文字がはっきり理解できるほどです。

 このような高性能機器が中学校の教室に設置された理由は、校内で反中共政府的な内容のポスターが貼られたり、生徒が政府を批判するメッセージを書いた場合、ただちに発見して公安に通報するためです。

 中共政府がやっきになって国民を監視している原因は過去の事件にあります。2014年ごろ、ウイグル人過激派によるテロ活動が中国国内で頻発しました。彼らがISISとも結託していたこともあり中共政府は危険視し、「テロ対策」を名目に国内に住む全ウイグル人に対し徹底的な弾圧を行いました。

 例えば、中国全土のホテルにウイグル人宿泊禁止を呼びかけ、違反した場合は1万元(約17万円)の罰金を課しました。さらに習近平主席や政府の要人に対する爆破テロを防ぐために、賃貸アパートやマンションをウイグル人たちに貸すことも禁止され、国内中の集合住宅が警察によって家宅捜査されました。17年10月には僕の実家のマンションも家宅捜査され、所有契約書と定住者の戸籍書類を照らし合わせ、ウイグル人が住んでいないことが確認されました。

 今回の十九代開催の数ヶ月前から、新疆ウイグル自治区の住居では包丁やハサミなど刃物類を鎖で固定するという措置が実行され、17年10月には刃物に所有者の個人情報を記載したQRコードをプリントすることが義務付けられました。

 万が一、刃物を使用したテロ活動が発生した場合、ただちに犯人を特定することが可能です。過剰な刃物規制の対象となったのはウイグル人だけではありません。十九代が開催された北京市では、10月初頭からスーパー、デパート、コンビニなど小売店で販売される刃物類が警察により回収されました。

 まるで中国国民全員をテロ予備軍のように扱うかのような今回の過剰な規制を受け、機関紙「環境時報」の元編集長・胡錫進氏は自身のブログ上で「刃物をそこまで規制してもまだ使えるものがある。それはフルーツを切る包丁だ」と発言しました。

 その意味は、十九代開催中、国会議事堂内のレストランの厨房に用意されたフルーツ用の包丁でも習主席を暗殺できるという意味です。さらに、この言葉には「どんなに排除を繰り返しても習主席の暗殺を企てている人物は後を絶たない」という皮肉も含まれています。

 中国国内では、古い王朝を滅ぼした者が新しい王朝を打ち立て、その王朝も滅ぼされてさらなる新しい王朝が生まれる、という歴史が繰り返されました。

 王朝末期の皇帝が臣民に暗殺されることを恐れて「禁刀令」を発布するのは恒例なのですが、中共政府が行う対策は、習主席が中国共産党王朝の最後の皇帝であることを暗示しているのかもしれません。近い将来、中国で大きな事件が発生する可能性があります。

著者プロフィール

漫画家

孫向文

中華人民共和国浙江省杭州出身、漢族の33歳。20代半ばで中国の漫画賞を受賞し、プロ漫画家に。その傍ら、独学で日本語を学び、日本の某漫画誌の新人賞も受賞する。新刊書籍『中国が絶対に日本に勝てない理由』(扶桑社)が発売中。

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