古事記や日本書紀では物足りない?そんな人に贈る日本神話が記された古典ベスト3

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古事記や日本書紀では物足りない?そんな人に贈る日本神話が記された古典ベスト3

皆さんは日本神話が収録された書物と言うと何を思い浮かべるでしょうか?古典の時間で使った『古事記』?それとも、社会の時間で一度は目にした『日本書紀』が多いことと思います。しかし、これら二つを総称した“記紀”だけが日本神話を収めた本ではないのです。そこで今回は、日本神話好きの筆者が独断と偏見でチョイスした古典を選りすぐって紹介していきます。

1.産物や地理と一緒にご当地神話も大紹介!『風土記』

教科書に出てくる単語で、この名前を一度は目にした事があるかと思われる『風土記』は、奈良時代に編纂され、時の天皇に献上された地誌のことです。そもそも、風土記自体が地誌を意味する言葉なので、『古風土記』とも呼ばれます。

和銅6年に女帝・元明天皇の下へ献じられた風土記には、地名や産物、気候などと並んで地元に伝わる神話も記されました。これらには地名の由来、古くから語り継がれてきた伝承を盛り込んでおり、記紀には無い神話が収められています。

中でも出雲国風土記には、ヤツカミズオミズノ(八束水臣津野命)と言う巨人の神様が未熟な出雲にくっ付けるため、あちこちの土地を豪快に引っ張る『国引き神話』や、ワニザメが失恋した『和邇の慕ぶる』がなまって『鬼の舌震』と言う地名になった起源説話などの神話が豊富です。

2.神仏習合の先駆け?『日本霊異記』

『日本霊異記(りょういき)』は、平安期に景戒(きょうかい)と言う薬師寺の僧侶が『日本国現報善悪霊異記』と言うタイトルでまとめた仏教説話集です。「仏教なのに日本神話?」と思う方もいるかも知れませんが、この説話集には神話的な要素が多く含まれています。

『日本霊異記』に掲載された説話には、記紀神話に登場するヒーローである雄略天皇と家臣・スガル(栖軽)が雷様を相手に奮闘する話、狐や蛇など人外の存在と人間の通婚、仏教の地獄を“黄泉”と表記するなど、神話の面影を色濃く残した場面が幾つも出てきます。

後に日本では、八百万の神は仏様が化身した姿だったとする『本地垂迹(ほんじすいじゃく)』を始めとして仏教と神道を混交する、悪く言えばごちゃ混ぜにしてしまう文化(現代でもあまり変化がありません)が生まれます。そうした我が国独自の文化が花開き始めた平安時代に、日本神話の影響を色濃く受けた『日本霊異記』が誕生したのは、ある意味で時代を先取りしていたのかも知れませんね。

3.不屈の老臣が残した意欲作!『神皇正統記』

室町幕府が成立した時、朝廷・皇室が二つに分かれて南北朝時代が訪れますが、その時も日本神話を収録した歴史書が著されました。それが『神皇正統記(じんのうしょうとうき)』で、著者は北朝と室町幕府に敗れた南朝の重臣・北畠親房(ちかふさ)です。

この歴史書は親房が幼い君主である後村上天皇のため、南朝が正統であると言う理念のもとに日本神話から始まる我が国の歴史を、仏典(インド)や漢籍(中国)と言った諸国の伝承と比較しつつ説いて行く珍しいスタイルと言えます。

なお、親房は神話から続くとされる皇室の歴史を説き、朝廷の徳によって理想的な世の中が訪れることを願って『神皇正統記』を記したわけですが、幕末や近代では武力行使を主張する人々による政権を正当化するために用いられると言う皮肉な運命をたどりました。親房氏も、さぞあの世で悲しんでいたことでしょう。

以上が日本神話を収録した古典のベスト3でしたが、実はこの他にも色々あるのです。平安時代の神道資料『古語拾遺』、聖徳太子の著作とされる『先代旧事本紀』などは今でも神道、神話の研究に使われる書物です。

また、真偽をめぐる論争を呼んだ『竹内文書』『ホツマツタエ』のように各地に伝わる伝承も含めれば、神話を収録した古典は膨大な数になります。なお、本項で紹介した3点の古典は現代語訳も広く出回っているので、興味のある方はぜひご一読をば。

※画像:北畠親房像 ウィキペディアより

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