いい仕事してます!世相を反映していた昭和の「偽免許証」
お酒、タバコ、ギャンブル…子供というものは何かと大人のやることを真似したりして茶化すのが好きです。
駄玩具業界はそんな心理をあざとく見抜いて、タバコのおもちゃ、タトゥーシール、馬券ゲームなどを発売していたわけですが、1980年代初頭、『なめ猫』ブームを巻き起こしていた会社が、なめ猫のキャラクターをあしらった運転免許証風のカードを発売したところ、1200万枚を売り上げる大ヒットになりました。
日本銀行を茶化した子供銀行のお金のおもちゃはありましたが、今度は国家資格を茶化してやろうというワケです。
当然、駄菓子屋売りのパチものが出回ったのですが、これが本家より断然面白いんですよ。免許証ではなく履歴書となっていますが、ちょっと見てください。
何ですか、松田猫子の住所は(苦笑)。
『西山浩猫』は、当時人気だったバラエティー番組『欽ドン!良い子悪い子普通の子』(フジテレビ系)から生まれたユニット『イモ欽トリオ』のワルオ役・西山浩司のもじりですね。《すきなもの》の中にとても子供向け駄玩具とは思えない言葉が…。
ちなみにこれを販売していたのは、以前紹介した『パチ猫ブロマイド』と同じ「地下組織」だと思われます。いい仕事してます(笑)。
免許証カード人気は1984年のエリマキトカゲブームを巻き込んで、こんなカードまで売られていました。
名前の《トシヒコ》は『たのきんトリオ』の田原俊彦、本籍の《ザンゲ教会》は当時の大ヒットバラエティー番組『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)の名物コーナー『ひょうきん懺悔室』からです。時代色濃厚ですね。
この免許証で三輪車からロボットまで運転できてしまうというからスゴイ。
そして、こちらは免許証ではなく、何とエリマキトカゲの『愛人バンクカード』!
愛人バンクは、1982年に短大卒を自称する女性が始めた日本初の愛人紹介ビジネス『夕ぐれ族』を火付け役に全国的にブームとなりました。このカードから《愛人バンク》という言葉が子供たちの間でもはやったことが分かります。
名前のトカキチは当時活躍していたプロボクサー渡嘉敷勝男氏のもじりでしょうか。
昭和の駄玩具は“世につれ、世は駄玩具につれ”…といった風潮がありましたが、さすがに『愛人バンクカード』はちょっと飛ばし過ぎでしょう。いや~、昭和の駄玩具のバイタリティーたるや…恐るべし。
(写真・文/おおこしたかのぶ)