朝日新聞記者がエロ画像使用のゲーム広告を掲載した産経をいじる、悩ましい現実|文◎やまもといちろう

デイリーニュースオンライン

朝日新聞記者がエロ画像使用のゲーム広告を掲載した産経をいじる、悩ましい現実|文◎やまもといちろう
朝日新聞記者がエロ画像使用のゲーム広告を掲載した産経をいじる、悩ましい現実|文◎やまもといちろう

 メディアとエロ広告の問題をデイリーニュースオンラインの連載で書くのもどうかと思うわけですが、産経新聞のサイトにエロい女の子の絵があしらわれたゲームの広告が貼られており、これを朝日新聞長岡支局の新聞記者、伊丹和弘氏が苦言を呈するという話題がありました。

https://twitter.com/itami_k/status/1010113707567771650

 これが、ネット上では朝日新聞記者が産経新聞をDISっているという通常営業的なプロレスのように見えるために話題となりました。指摘として「いわゆるアドネットワーク配信のエロバナーは閲覧者がエロ記事を日常的に見ているからエロが配信されるのだ」と「あのゲーム広告は全年齢向けのもので、エロ記事読んでなくても配信される可能性のある広告だから問題ない」というネットでは定番の煽り愛へと発展したわけであります。

 産経新聞で連載させていただいている私としての立場を棚に上げて申しますと、新聞社の公式サイト運営というのは採算面でもコンテンツ供給面でも意外と各社大変でありまして、読売や朝日、日経のように「自社の『紙購読者』の神経を逆なでしない程度の価格帯でネット向け記事を月額課金制にして採算を合わせる」方針と、産経や、通信社の時事、共同などは「ストレートニュース(事件の概要や骨子を伝える短いニュース)や分野ごとの配信はネット向けも無料で維持し、他サイトやネットメディア向けの記事パックでの契約配信料で回す」方針とに分かれます。

 それもこれも、ヤフーニュースがネットニュース配信の一大パワープレイヤーとなって以降、スマホ向けニュース配信はヤフーに加えてスマートニュースやNewsPicks、Gunosyなどそれなりの規模と影響力を持つプレイヤーが群雄割拠のなかで、事実上のコンテンツ奪い合いとなっている現状があります。とりわけストレートニュースを扱う新聞社の「本来の記事」は買い叩かれ、ヘッドラインだけつまみ読みされる状況になると新聞社が「月額2,000円ぐらい払ってよ」といってもどうしても有料読者は限定されてしまう、というジレンマがあります。

 なので、無料で公開して読者をかき集めるストレートニュースや連載物、エッセイなどの撒き餌記事でたくさんPVを集め、そこに広告を貼って回収したり、月額会員客に「これならば、月額いくらか払ってもいいかな」というファンを作るための仕組みを作るのが通常です。しかしながら、今回伊丹氏が指摘した産経新聞は「月額いくらか払えば産経新聞読み放題」というサービスはありません。無いものは無い。一応、産経デジタルがやっている産経新聞アプリでは産経新聞や夕刊フジを読めるアプリ内課金はありますが、産経新聞のサイトのどこを見ても「新聞購読のお申込み」が右カラム少し下にぽつんとあるだけで、「記事を読者に売るメディアとして頑張っていこう」というアプローチは無いわけであります。

https://www.sankei-digital.co.jp

 これらはあくまでいろんな新聞社がさまざまな経緯や社内議論を経て「月額費用を徴収して読者にネットで記事をどう読ませるか」を定めて方針にしているわけで、どの新聞社が良いとか死ねとかいう話ではありません。産経新聞としては、読者から金を取るよりは、徹底した広告モデルを推し進めて広告を掲載してサイト運営費用を回収するというモデルでやっている、ということになります。

 翻って、冒頭のエロ広告の問題に戻るわけですが、これらは某アドネットワークから配信されているもので、どう見てもエロ広告みたいに見えますがタグを見るとゲーム系コンテンツの広告であり閲覧者制限のない一般向け広告であることが分かります。問題は、そういうエロい画像が一般広告の扱いとなり、男性も女性も年寄りも中学生も見るであろう一般的なサイトである産経新聞に堂々と配信されていること、また、エロい広告でも客が取れれば良しとされるゲーム業界以下デジタル広告業界の規制の甘さが酷いことに問題が凝縮されていると思うわけであります。

『漫画村』問題では、著作権法上違法なサービスを展開しているサイトに堂々と大手デジタル広告代理店が運営するアドネットワークのOEMで広告が掲載され、まるで広告主が違法な『漫画村』を支援しているかのような状況に陥っているとして、大きな非難の声が沸き上がりました。

 最近では、ネトウヨを釣るために作られたと批判される『保守速報』にアドネットワーク経由で広告を掲載している各社に対してたくさんの通報が行われ、広告の差し止めが行われるまでに至りました。そのような言論統制を促すようなやり方が良いかどうかが問われる一方、フェイクニュースを山ほど流してネット上の情報が大混乱に陥りかねないクソサイトは潰れて良しという意見もあるでしょうから、ことの是非は措きます。ただ、ネットメディアと広告の関係は歪(いびつ)で、より良い記事を読まれるために記事執筆や取材にコストをかけるほど、広告であれPVであれ月額課金であれビジネスモデルの収益性が重要になるというジレンマがあるのもまた事実です。

 その意味では、産経新聞が新聞社として世の中に警鐘を鳴らす記事を書き続けて無料でネットで配信しているサイトそのものの収益がエロまがい画像を使ったゲーム広告である、というのは、深いディストピア感を覚えるのであります。もうちょっといいタイアップ広告や読者属性に基づいた新聞社らしいハイソな訴求内容ってのは無いものなのでしょうか。

著者プロフィール

やまもといちろうのジャーナル放談

ブロガー/個人投資家

文・やまもといちろう

※慶應義塾大学卒業。会社経営の傍ら、作家、ブロガーとしても活躍。著書に『ネット右翼の矛盾 憂国が招く「亡国」』(宝島社新書)など多数。

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