男女が性転換し成長する異色の王朝文学「とりかへばや物語」にはさらに古い原典があった!

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男女が性転換し成長する異色の王朝文学「とりかへばや物語」にはさらに古い原典があった!

「今とりかへばや」のもととなった「古とりかへばや」

男女のきょうだいが性を入れ替えるという異色の王朝物語として知られる「とりかへばや物語」

男女が性転換して生活?異色の輝きを放つ平安時代の王朝文学「とりかへばや物語」

氷室冴子の小説で山内直美によって漫画化された「ざ・ちぇんじ!」や、さいとうちほの漫画「とりかえ・ばや」でも人気の作品ですよね。

実は、今私たちが読むことができる「とりかへばや物語」は、「古とりかへばや」の改作なのです。

皇太后宮大夫俊成女 – 嘉永四年版女百人一首

「古とりかへばや」はすでに散佚してしまってもう読むことができないのですが、どんな物語であったかは、藤原俊成女が作者とされる鎌倉時代の物語評論「無名草子」から知ることができます。「無名草子」では「とりかへばや」と表記されていますが、便宜上現存する「とりかへばや物語」と区別するために両者を並べる際は「古とりかへばや」「今とりかへばや」と呼びます。

女君が男姿のまま出産

どんな内容だったのかというと、本筋は現存するものとあまり違いはなかったそう。ただ、

女中納言こそ、いといみじげにて、もとどりゆるがして子生みたるなどよ。また、月ごとの病、いと汚し。

「無名草子」(校注・訳:樋口芳麻呂「新編日本古典文学全集」/小学館より)

女君はすばらしいと評しつつ、「もとどりゆるがして子生みたる」つまり、女君が男姿で髪を男のように結ったまま子どもを出産するなんて、と酷評。「月ごとの病」、月経の描写もかなり汚らしかったようです。

そのほか、女君が一度死んだのに生き返るようなシーンもあったらしく、それが大げさだとも言っています。

読者には評判が悪かったらしい

「古とりかへばや」の評については、冒頭から

また、「『とりかへばや』こそは、続きもわろく、もの恐ろしく、おびたたしき気したるもののさま……(後略)」

「無名草子」(校注・訳:樋口芳麻呂「新編日本古典文学全集」/小学館より)

と「続き具合が悪くて内容も恐ろしく、大げさな感じがする」と評価しています。その後に「歌がいい」「四の君(女君の妻)がいい」などほめる要素もありますが、手放しに傑作、とはいかなかったようです。

「今とりかへばや(現存本)」については「もとにまさりはべるさまよ」と、原作よりも優れた作品と評価されています。原作「古とりかへばや」は大げさで現実的ではない要素が多く酷評されていましたが、「今とりかへばや」はそういうところがなく自然に描かれていると評価されています。

古典作品が写本を含め散佚してしまうにはさまざまな要因が考えられますが、改作本である現存本が今の時代まで伝わっているのは、読者にどう受け入れられたかも関わっているのかもしれません。

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