『43回の殺意』が最有力? 傑作ぞろい「ノンフィクション本大賞2018」を占う! (3/3ページ)

日刊大衆

 角幡氏と同年に大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した国分拓氏による最新作『ノモレ』(新潮社)も、本賞にノミネート。今から100年以上前、ペルー・アマゾンの密林で奴隷にされた先住民は、二手に分かれ逃げてから生き別れとなってしまった。そしてその子孫へ語り継がれた再会の約束。NHKディレクターである著者が、NHKスペシャル『大アマゾン 最後のイゾラド』の制作をきっかけに執筆した作品だ。

 同じく、NHKスペシャルのディレクターが番組放送後、描ききれなかった細部や証言を改めてまとめたのは『告白 あるPKO隊員の死・23年目の真実』(旗手啓介/講談社)。日本が参加したPKOの派遣地、カンボジアで一人の日本の文民警察官が銃撃を受けて亡くなったが、その真相は遺族にも知らされないままだった。隊員たちの日記や50時間ものビデオ映像など膨大な資料から、PKOの真実を明らかにしていく。

 出版そのものが大きな話題となった『Black Box(ブラックボックス)』(伊藤詩織/文藝春秋)と、『ユニクロ潜入一年』(横田増生/文藝春秋)もノミネートされている。

 前者は、ジャーナリストを目指していた著者が、就職の相談をしていた当時のTBSワシントン支局長から受けた性的暴行被害、そしてその後の警察の対応など、社会の現状を世に問うた一冊だ。日本外国特派員協会で会見に臨んだ著者の毅然とした姿も記憶に新しい。

 後者は、『週刊文春』誌上でも大反響を呼んだ「ユニクロ潜入ルポ」を基にしたルポルタージュ。著者は、新宿のビックロなど3店舗で実際に勤務し、サービス残業や働きがい搾取などの実態を浮かび上がらせる。

『ユニクロ潜入一年』が約1年の潜入取材を行っているのに対し、『モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語』(内田洋子/方丈社)は、1年の現地取材で名もなき人々の歴史に追っている。イタリア・トスカーナの山深い村、モンテレッジォの現在の人口は32人。かつて産業なきこの村では、本を担いで各地に届ける人々がいた。まさに本と本屋の原点を描いた一作だ。

 すでに評価の高い作品がそろっており、どれも読んでハズレなしの傑作。記念すべき第1回の受賞作は、はたして――?

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