その後、涙のうちにお披露目会も終わり、律は誕生日のお祝いとして鈴愛にあるものを渡す……という展開だった。

　恋愛の神様といわれる北川悦吏子氏が今回、朝ドラで見せた仕掛けは、「ヒロインの幸せを最終回まで引っ張る」というものだった。すれ違いの連続だった鈴愛と律の恋に、世間の声は最後まで賛否両論だったが、ツイッターには「恋愛ドラマとしてマジで面白かった」という好意的な声も多かった。

　恋愛ものとしての側面も強かった本作で、見事な輝きを放ったのが主演の永野芽郁だろう。２０１６年の大河ドラマ『真田丸』に出演するなど、彼女は本作出演前、すでに注目女優だった。期待はしていたものの、ここまで演技ができるとは正直、驚いた。

　何がスゴいって、彼女がだんだんかわいくなくなっていったことだ。永野芽郁は高校生から４０歳までを演じたのだが、漫画家としての苦労が始まった頃からだろうか、少しずつかわいさが薄れていった。正直、直情的な性格やデリカシーのない鈴愛の言動に、見ていてイライラすることも多かった。

■泣きながら成長した永野芽郁

　しかし視聴者を「イライラ」させたというのは、永野芽郁の演技のスゴさを物語っているのではないだろうか。「かわいくない」は、今回の永野にとってむしろ褒め言葉なのだ。

　永野芽郁は収録当時、まだ１８歳だった。あの感情的で面倒な女、鈴愛を１０代の美少女が演じていたことを忘れていた人も多いはずだ。漫画に挫折し、周囲に当たり散らしていた鈴愛も、涼次に裏切られ「死んでくれ」と言い放った鈴愛も、みんな１８歳の芝居だったと思うとちょっとゾッとする。少女のイメージが強かった永野芽郁だが、この半年で一気に演技派に成長したといっていい。

　また、今回は永野芽郁の涙にも、心が揺さぶられた。泣かない週はないのでは、というぐらいこのヒロインはしょっちゅう泣いていたが、永野の自然な涙は視聴者がもらい泣きしてしまうほど美しいものだった。芯が強くて優等生という朝ドラヒロインのセオリーを覆す、泣き虫な鈴愛を演じたことでも、永野芽郁は次のステージへステップアップしたと思われる。

　今後、恋愛ものや青春ものはもちろん、感動的なお仕事もの、お涙ちょうだいのホームドラマなど、どんなドラマでも対応できる女優として、永野芽郁は引く手あまたなはず。永野の今後の演技には、期待できる。（朝ドラ批評家・半澤則吉）