無実の罪の意味である「濡れ衣」三途の川にまつわるその語源を紹介! (3/3ページ)
だから「奪衣婆」であって、決して「脱衣婆」ではありません(たまに間違える方がいらっしゃいますので、念のため)。
これより先は褌(ふんどし)一丁、女性の方はお襦袢(じゅばん。肌着)での道中と相成ります。
さて、衣などどうするのか、と言いますと……彼女にはすぐ隣に亭主がおりまして、これなるは「懸衣翁(けんえのう)」と申します。
青森県むつ市・恐山にて、懸衣翁の石像。これから衣を木の枝に懸けるところ。
奪衣婆の引っぺいだ皆さんの衣を受け取ると、せっせと木の枝に懸(か)けるのがお仕事。
衣の懸けられた木の枝は、衣の重さによって当然ながら垂れ下がります。
この衣の重さこそ罪の重さであり、閻魔様より下される刑罰にも大いに影響します。
ここまでくると、察しのよい方もいらっしゃるかと思います。
そうです。「衣が濡れていると、それだけ罪が重くなる」……だから濡れ衣を着せられると、潔白な者でも無実の罪で罰せられてしまうのです。
これが「濡れ衣」の語源となります。
おわりに河鍋暁斎「地獄極楽図」より、亡者の罪を裁かれる閻魔大王。明治期
近ごろ、報道など世相を見るにつけ、とても人とは思えぬ所業の数々にうんざりさせられますが、これもまた人間が「畏(おそ)れ」を忘れたためではないでしょうか。
他人に濡れ衣を着せて、自分はいけしゃあしゃあとすまし顔……そんな振舞いには、必ず報いが来る。
先人たちの教えを、言葉の一つ一つから学びたいものです。
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