動物界で一夫一婦制を定める普遍的コードが発見される(米研究)
死が両者を分かつまで。動物界にはオスとメスを結びつける共通の愛の絆があるようだ。
新たに発表された研究では、脊椎動物に見られる一夫一婦制を定める普遍的なコードがあるという証拠を提示している。
つまり哺乳類、鳥類、両生類、魚類など、種の垣根を超えて一夫一婦制を定める分子が組み込まれているということだ。
・オスとメスのつがいができる仕組みは遺伝子に組み込まれていた
この研究は一夫一婦制を定める神経および分子の基本原理の謎に回答したものだ。
動物界には一夫一婦制をとる動物たちがいることは昔から知られていたが、それがどのようにして生じているのかは不明だった。
ちなみに動物界で一夫一妻制をとっているのは、オオカミ、プレーリーハタネズミ、ペンギン、アホウドリ、チョウチンアンコウ、ディクディク、背赤サラマンダー、ウチワシュモクザメ、タヌキ、ハクトウワシやクロコンドル、キマダラコガネグモなど、哺乳類から両生類、魚類、鳥類、クモ、節足動物まで多岐にわたる。
アメリカ・テキサス大学オースティン校のハンス・ホフマン教授らは、一夫一婦制か非一夫一婦制のいずれかの生態を持つさまざまな種の繁殖年齢に達したオスの前脳と中脳の組織を検査した。
ここから、つがいを作るという行動がじつは遺伝子に根ざしているのだということが明らかになった。
・一夫一婦制とは何か?
注意しなければならないのは、一夫一婦制という行動には単一の統一された定義がないことだ。
このような社会的行動は種や個体によってさまざまな形をとるために、ただ一つの定義に収まるものではないのである。
そのためにホフマン教授らは、特定の行動上の特徴があった場合に一夫一婦制とみなすことにした。
その特徴とは、
・オス1匹とメス1匹がつがいになる
・両親が子供の世話にかかわる
・子供に危険が迫った場合、両親がその防衛に当たる
という3つで、これらの条件に当てはまる場合、その動物は一夫一婦制を営んでいるとみなされた。
したがってお互いがお互いしか受け入れないことは条件ではない。平たく言えば、人間のように浮気をしても一夫一婦制の条件を満たしているというわけだ。
・一夫一婦制は学習や記憶などに関連する遺伝子によって決められる
つがいになり協力して子供を守る動物には、共通する遺伝子発現のパターンがあった。
それは神経の発達、シナプス活動、学習、記憶、認知機能に関連する24種の遺伝子のパターンで、5つの一夫一婦制グループでこれらの遺伝子が似たような状態にあることが確認された。
それらのグループの脳ではこれらの遺伝子が、非一夫一婦制のグループに比べて「強く発現しているか、あまり発現していないか」のどちらかだったのだ。
これらの遺伝子が学習や記憶といった機能に関係している理由については、現時点では確たることは分からない。
しかしホフマン教授の考えでは、つがいを形成し、子育てをするといった行動が可能になるには、社会的行動の基礎にある認知プロセスの変化が必要になるからだという。
つまりある個体がつがいを形成するには、自分のパートナーを認識し、一緒にいることが嬉しいと感じられなければならない。
それには「神経とシナプスの可塑性や学習あるいは記憶に関係するプロセスが必要」になると考えられるのだ。
・人間もまた進化の産物
全体論的な概念として一夫一婦制の原因を理解することは、それが人間社会で普通に見られる理由の解明にもつながる。
一夫一婦制の鳥やげっ歯類につがいを作る遺伝子があるのと同じように、我々自身の脳でもそれらの遺伝子が発現している可能性が高い。
一夫一婦制はそれぞれの系統群(共通の祖先を持つ生物グループのこと)が独自に進化せてきたものだ。系統群を超えてどのようにこの生物学的プロセスが進化してきたのか知ることができれば、我々自身の出自についても理解を進めることができるだろう。
「この発見から、人間もまた進化の産物であることを思い出させられた」とホフマン教授は語っている。
この研究は『Proceedings of the National Academy of Sciences』に掲載された。
References:There May Be A Genetic Basis For Monogamy, Says Study | IFLScience/ written by hiroching / edited by parumo
追記:(2020/06/18)本文を一部訂正して再送します。