童謡「お内裏様〜とお雛様~♪」実はお内裏様と呼ぶのは間違い? お雛様の”雛”って何?

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童謡「お内裏様〜とお雛様~♪」実はお内裏様と呼ぶのは間違い? お雛様の”雛”って何?

お内裏様と呼ぶのは間違い?

ひな祭りの歌として多くの人に知られている、童謡の「うれしいひなまつり」。「お内裏様とお雛様~」のくだりは誰しもが知っており、大多数の人は男性をお内裏様、女性をお雛様と思っていることでしょう。

しかし、実はお内裏様と呼ぶのは正確ではないと知っていましたか?

〈歌詞二番を抜粋〉
お内裏様と お雛様
二人ならんで すまし顔
お嫁にいらした 姉様に
よく似た官女の 白い顔

そもそも内裏とは、天皇が政務を執り行ったりする紫宸殿など擁する生活をする私的区域のこと。御所や禁裏(きんり)とも呼びますね。

以前『祈りから始まる天皇の一日。儀式と礼拝に彩られた平安時代の天皇の暮らしをのぞいてみよう』にて、内裏の重要な建物の一つ、紫宸殿のことをざっくりと紹介しました。

雛飾りの最上段の二人は、紫宸殿で行われる天皇と皇后(もしくは親王と親王妃)の結婚の儀の出で立ちなのです。

というように、内裏は宮殿のことを指すので、人をさして「お内裏様」と呼ぶことは正確ではありません。最上段のお人形は、「男雛・女雛」または「お殿様・お雛様」と呼ぶのが正しいと思われます。

「雛(ひいな)」の意味は?

お雛様の「雛」は、紙や布で作った人形「雛」が由来と言われています。平安時代、貴族の子どもたちの間で流行ったおままごとの「ひいな遊び」からきているといわれています。「ひいな」とは「小さくてかわいらしい」という意味。

三月三日は「上巳の節句」。この日は人型に切った紙に穢れを移して川に流す行為「流し雛」と、このひな遊びが結びついていつしか「雛祭り」として定着していったといわれています。

骨董集 醒醒老人〈国立国会図書館蔵〉

鳥居清長「子宝五節遊 – 雛遊」 18世紀〈Wikipediaより〉

三人官女の真ん中はお歯黒

三人官女よくみると一人ずつ持っているものが違います。一般的な持ち物は、長柄銚子、加銚子、盃。

真ん中の女性だけが眉毛がなくお歯黒をしています。お歯黒・眉ぞりは既婚者の証。ということは他の女官よりも位が高いお局さまなのかもしれません。

五人囃子の一番右は声楽担当

能楽をおこなう5人の楽師たちのことです。楽器が大きい順番に並んでおり、左から太鼓、大鼓(おおかわ)、小鼓、笛、謡(うたい)。一番右は、声楽担当の謡なので、楽器ではなく扇子を持っています。

右大臣じゃない?男雛女雛のボディーガード、随身

『装束着用之図』(国立国会図書館蔵より)

〈歌詞三番を抜粋〉
金のびょうぶに うつる灯(ひ)を
かすかにゆする 春の風
すこし白酒 めされたか
あかいお顔の 右大臣

歌詞では右大臣と呼ばれていますが、実際の左大臣・右大臣は高位の者なので弓矢を持つことはありません。この人形は平安時代以降の役職で、貴族が外出するときに警護する近衛府の官人「随身」と言われ、正しい官職は「近衛中将」または「少将」です。

この随身は神社の神門で左右に配置されていることもあるので、なじみのある人も多いはず。神社ですと「随神」と名前を変え、神社に向かって左が「矢大臣(櫛磐間戸神〈くしいわまとのみこと〉)」、右が「左大神(豊磐間戸神〈とよいわまとのみこと〉)」です。

この二神は天照大神が天石窟から出た後、再び使われないように守る門番です。

また、配置にも注意です。雛飾りですと向かって右が赤ら顔のおじいさん。

歌詞に「赤い顔して右大臣」とあり、一見正しいように思えるのですが、宮中の配置はすべて「天皇から見た」呼称ですので、歌詞は「左大臣」にしなければ整合性が合いません。「右近の橘・左近の桜」はきちんと「男雛から見た」配置になっています。

ちなみに右より左の方が上位にあるという考えがあります。なので年配の左大臣が、若者の右大臣よりも高位です。それなのに「お酒飲んじゃった?」と疑われちゃったんですね。

男雛はなぜ右?

では男雛は右(向かって左)に座るのかというと、それは大正天皇が西洋のしきたりにならったから。本来は天皇は左、皇后は右にいらっしゃいましたが、大正天皇以降、天皇陛下はいつも右に立つようになったため、男雛を右(向かって左)にすることが一般的となったとか。

うーん、ややこしい!

広く庶民に広がったのは江戸後期以降と言われる雛飾り。歴史をひもとくとまだまだトリビアがありそうです。

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