新書でました:ロマン優光連載130 (2/3ページ)

ブッチNEWS

事実に則さない批判は、結局のところは信用をなくし、本来意義深いものだった問題提起すら否定されてしまいかねないのです。
 存在する問題点に目を向けることなく、ひたすら全肯定をする人というのも、事実に立脚してないという点では同じことです。自分の中の好き嫌いの感情を排除した上で検証していかなければ、何も前には進まないのです。

松江哲明の強要についても触れておこう

 松江監督と『童貞。をプロデュース』に関わる事件があったことは記憶に新しいことだと思います。あそこに見られる構造は、サブカル的なものに限ったわけではないのですが、マチズモを否定するような人と認識されている人が、意外にそのまんまマチズモの人だったという点に衝撃があったのだと思います。まあ、ウディ・アレンをはじめとして、マチズモに縁がなさそうな弱者っぽい男性が実際のところはマチズモに溢れているという例はいくらでもあるわけですが。
 あの件でも事実関係の検証をしないままに監督を一方的に擁護した人たちは信頼をいくらか失う結果になりました。その人たちは友人が非難されていることに義憤を感じて庇ってしまっただけで、悪意があったわけではないと思うのです。人間誰だって、身内は信用するし、守りたいと思うものですから。私は出演者の一人である梅澤氏と交流があったり、監督と面識はあるものの好感を特に持っていないため、絶対にバイアスがかかった見方をしてしまうと思ったので、即座に反応することはしないようにしていました。ああいう問題について、事実関係を把握できてない時に好き嫌いにひっぱられて発言することは、良くないことだと思ったからです。
 今でも松江監督が悪人だったとは思わないです。ただ、非対称性のある人間関係というものに対して色々と無自覚だっただけだとは思います。弁護士をちらつかせるようなやり方は完全に悪手だったとは思いますが。二人の関係性の中で起こったことに関しては、結局はわからないこともあるので外野が口を差し挟めない部分はあるとは思うのですが、関係性の中で向き合って解決しようとするのではなく、しれっと圧力をかけるようなやり方をしたことは、良くないことだったと思います。

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