巨人は意外と多い! 丸佳浩、元木大介…プロ野球「伝説のクセモノ」

日刊大衆

写真はイメージです
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 選抜高校野球で“サイン盗み騒動”が起こったが、プロの世界はそんなもんじゃない。職人たちを大特集。

 4月2日、昨年7月から12月まで胆石の治療のため長期間入院をしていた巨人軍の長嶋茂雄終身名誉監督(83)が、巨人-阪神1回戦を観戦するために東京ドームを訪れた。試合開始直前に行われた本拠地開幕セレモニーの途中、バルコニー席から手を振ると、観客席から大喝采が起きた。

 9-3で巨人が勝利を収めたこの試合で飛び出したのが、丸佳浩外野手の移籍後初の本塁打。5回の第3打席で、右中間スタンドにソロアーチを放ったのだ。「ミスターが球場を出た後とはいえ、丸は持っていますね。長嶋さんは“丸君のバッティングを自分の目で見たい”と、この日のためにリハビリを懸命にしてきた。ミスターも大喜びでしょう」(巨人軍関係者)

 豪快にスタンドに放り込む長打力が魅力の丸だが、スポーツ紙記者は「選球眼の良さこそ、彼の真骨頂」と話す。昨季、12球団で断トツ1位の出塁率.468、130四球を選んだ選球眼は今年も健在。開幕の対広島3連戦ではヒットこそ1本だけだったものの、4四球を選び、しぶとく出塁をしているのだ。「丸はこれまで3度、リーグ最高四球数を記録しています。際どいところに投げると見極められ、ストライクを取りにいくと痛打される。ピッチャーからすれば、なんとも嫌な“クセモノ”選手ですよ」(前同)

 現在、そんな丸を指導する立場にあるのが、ミスターによって「クセモノ」と命名された元木大介1軍内野守備兼打撃コーチ。対戦相手として「一番嫌だった」と回想するのは、阪神のエースとして何度も対戦した野球解説者の藪恵壹氏。「通常、彼のようなつなぐタイプの打者だとランナーを進めるバッティングをするんですが、そう思って投げるとガツンと長打を打たれたりする。際どい球は、いやらしくファールで粘るし、何をするにしても読みがいいんです。元木は本当に嫌でしたね」

 “隠し球”でも有名な元木は現役時代、対戦相手のみならず自チームの選手の「ちょっとした変化」も見逃さない目を持ち、不調の選手に的確にアドバイスを送るなど、「名コーチになる素質を持っていた」(ベテラン記者)と言われる。

 昨年まで、同じ巨人の投手総合コーチを務めた斎藤雅樹氏とヘッドコーチを務めた村田真一氏のバッテリーは、相手バッターを嵌めるために、ある“技”を使っていたという。「斎藤は、村田が構えているコースとは逆の球をわざと投げていた。それで、返球するとき村田は不満な態度を斎藤に現すんだけど、それも2人が仕組んだ“演技”(笑)。面白いように決まっていたよね」(前同)

■原辰徳や松井秀喜など、重量級イメージの巨人だが

 原辰徳監督や松井秀喜氏のように重量級のイメージがある巨人だが、前出の藪氏は、実はクセモノが多かったと述懐する。「たとえば仁志(敏久)にしても、しつこかったですね。何度もファールで粘られるので、“もういい加減、前に飛ばしてくれよ”という気になって、ついつい甘い球を放ってしまって打たれる、というふうになりがちでしたね」(藪氏)

 また、仁志氏は守備でもクセモノぶりを発揮。通常は外野にきれいに抜けるはずのセンター返しを、ただのセカンドゴロにしてしまうことがままあった。

「あれは、もちろんデータに基づいたもの。ただ彼が他の選手と違ったのは、思い切った守備位置につくのを勇気を持って実行したこと。セオリーに反する守備位置につくのは怖いんですよ」(前出のベテラン記者)

■長嶋茂雄は野村克也にカリカリ

 藪氏も「だいたい、クセモノといわれる選手は二塁手か遊撃手。それに捕手というのが通り相場」と語るが、クセモノのキャッチャーとして、まず名前が挙がるのは野村克也氏だろう。ノムさんが得意としたのは、言わずと知れた「ささやき戦術」だ。

「王さんがよく、“昨日、銀座のクラブ『姫』に行ったろ”なんて言われて動揺しているうちにストライクを取られる、ということがあったね」(ベテラン記者)

 王、ミスターの盟友、巨人軍V9戦士で野球解説者の黒江透修氏によれば、「長嶋さんもゴチャゴチャ言ってくるノムさんには、相当カリカリきてたよ」とのこと。そんな黒江氏に対するノムさんからの“口撃”といえば、「俺は私生活のことをいわれなかった。むしろ“初球から打ってもええんか?”とか、“打撃が良くなってきてるから気をつけんといかんな……”とか、本当のことを言われて、逆に参考にして打ってたよ(笑)」

■世界の王貞治を封じ込めたクセモノ

 黒江氏は、「王キラー」として世界の王を封じ込めたクセモノの名前を挙げてくれた。広島の大羽進投手がその人だ。王と同級生の大羽は入団6年目、広島が初めて王シフトを敷いた試合に先発すると、内角球で勝負を挑み、王の5打席連続ホームランを打ち砕いた。

「巨人戦には滅法強く、巨人キラーとも呼ばれていました。王さんと対戦するときは超スーローボールを投げて王さんのペースを崩して、打ち取っていましたよ」(黒江氏)

 王との対決といえば、小川健太郎(中日)のことにも触れなければならないだろう。「基本はアンダースローだけど、ときにサイドスローやオーバースローで投げたりする変則的なクセモノ投手。いい投手だったんだけどね」(ベテラン記者)

 1969年6月15日の試合では、腕を背中から繰り出す「背面投げ」で、当時絶好調だった王を苦しめている。その後、同年8月、月にも王に対して背面投げを試みている。

 だが、70年5月、反社会的組織と共謀してオートレースの八百長を仕組んだという容疑で逮捕され、永久失格処分を受け、その後、プロ野球のマウンドに戻ることはなかった。

■ゴジラ・松井秀喜にも天敵が!

 ゴジラ・松井秀喜にも天敵のクセモノ投手がいた。元阪神の遠山獎志氏だ。97年にロッテを解雇され、古巣・阪神の入団テストを受けて合格。そんな遠山がクセモノの本領を発揮し始めるのは、野村克也が監督に就任した99年。シュートで、松井に徹底的なインコース攻めを繰り返し、99年は13打数無安打と完璧に抑え込んだ。当時、松井は「遠山さんの顔を見るのも嫌」と口走ったほどだった。

■広島カープは伝統的にクセモノを輩出

 伝統的にクセモノを輩出するのが広島。丸は巨人に移籍したが、田中広輔、菊池涼介、野間峻洋の“魔の三人衆”は健在だ。

「田中は開幕の巨人戦でも、3回に巨人先発の絶対的エース・菅野智之に9球、6種の球種を投げさせる粘りよう。菅野攻略のキッカケを作りましたよね。巧打と天才的な守備の菊池は今年もやるでしょう。今年で5年目の野間も広島らしく、いやらしい。クセモノぞろいの広島と、戦力を大幅にアップさせた巨人が優勝を争うことになりそうです」(前出のスポーツ紙記者)

 そして広島のクセモノといえば、達川光男氏を忘れてはいけない。「達川もノムさんと同じく、ささやき戦術の使い手。私生活に関することや世間話で打者を撹乱するんだけど、独特の広島弁がユーモラスで、つい力が抜けてしまうんだよね」(ベテラン記者)

 また、達川は、かすってもいないボールを「デッドボールだ」とアピールするので有名だった。「試合後でも“ホンマに当たってる。記者さんはデッドボールの怖さを知らんからいろいろ言うけど、選手は命懸けじゃけん”と言ってたけど……(笑)」(前同)

 藪氏は最後に、こう締めてくれた。「“クセモノ”と呼ぶのは、僕らの間では褒め言葉なんですよ」

 クセモノに注目して見れば、プロ野球は100倍おもしろくなる!

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