2040年、世界の肉の60%が人工肉に置き換わると予測される(米研究)
nevodka/iStock
昨今、環境保護のため家畜飼育を行わないことが望ましいと伝えられていることもあり、欧米ではますますヴィーガニズム(完全菜食主義)やべジタリアニズム(菜食主義)に移行する人が増える傾向にある。
アメリカに拠点を置くグローバルコンサルタント会社『AT Kearney』は、今回ある報告書を公表した。
それによると、2040年には世界の肉の60%が、動物本来の肉ではなく、培養肉や植物から作られたベジミートなどの人工肉に代替えされるというのだ。
・環境保護の観点から動物の肉を消費しない未来
従来の食肉産業は、何十億もの動物を飼育し、年間1兆ドル(約108兆5,700億円)の利益をもたらしている。
しかし、気候危機を引き起こすCO2排出や、野生動物の生息地を破壊する農地改革、また河川や海の汚染まで、最近の科学的研究では家畜飼育による大きな環境影響が明らかになっている。
環境を保護しようという動きが広がりを見せる中、「大規模な畜産業は“不必要な悪”と多くの人に見なされている」とAT Kearneyは報告書の中で述べている。
植物性たんぱく質を利用したベジミートや、培養肉などへの転換は、もはや否定できない変化として起こりつつあるというのだ。
Motortion/iStock
・培養肉の製造が注目される
既に市場には、植物性たんぱく質でできたベジミートが普及している。現在、多くの企業が植物由来の肉代替品の製造に多額の投資をして商品を製造している。
更に近年注目されているのが、培養肉の開発だ。様々なスタートアップ企業がその開発を行っているが、まだ市販されるには至っていない。
培養肉は、生体触媒を用いて物質の合成・分解などを行う装置「バイオリアクター」技術によって、指数関数的細胞の成長を通して作られることになるという。
つまり培養肉とは、生きた動物から細胞を抽出し、バイオリアクター技術を用いて動物の体外でそれを増殖させることにより生成される肉なのだ。
・世界初、実験室で育った人工肉、培養ミートボールが公開される(米研究) : カラパイア
培養肉の製造は、動物の屠殺を伴わないことが大きなポイントとなるが、肝心の味は「従来の方法で製造された肉と同一のもの」と報告されており、消費者を満足させられるほどの質を持っているようだ。
anyaivanova/iStock
・培養肉に対する消費者の意識も変わり始めている
また、アメリカ、中国、インドでの調査では、培養肉についての潜在的な顧客の不安は障害にはならないということも報告されている。
培養肉は、長期的にみても最も人気が出るとされるもので、2040年に消費される全肉の35%を占めることになるとみられている。
・20年後には世界の肉の60%が人工肉に
こうした移り変わりは、従来の食肉養殖法の環境への影響と併せて、ヴィーガン代替品に対する需要の高まりに対する意識が各消費者の中で向上した結果であることが指摘されている。
より持続可能でヘルシーな食生活を意識し、肉の代わりに豆類やナッツ類などのたんぱく質を摂取するという新しいライフスタイルへの転換を求める人が増加しているのだ。
結果として、培養肉と植物性の肉代替品は、全ての下請け会社と共に10億ドル規模の従来の食肉産業を崩壊させようとしているようにも思える。
いずれにしても、世界の肉の60%が20年後の2040年には、屠殺された動物からのものではなくなる可能性が高くなるとのことだ。
redonion1515/iStock
とはいえ現時点では、世界のどの食料品店でも動物の肉が主流である。
イギリスの全国農業組合(NFU)のスポークスマンは、「技術革新と新技術は常に畜産業の発展の中核をなしてきました。実験室で作られた肉の科学は興味深いものではありますが、NFUは消費者が求める限り、安全で、製造元の追跡が可能な、手頃な価格の食料を生産できるような家畜飼育を今後も続けていくことは間違いないでしょう」と話している。
とは言え近い将来、我々の食卓も大きな変化を見せそうな気配だ。培養肉はもちろん3Dプリンターで作られた料理、昆虫食など、今とはガラっと変化している可能性はあるだろう。
でもって昔の人はこんなもの食べてたみたいよ。えーびっくり!なんて会話が交わされることになるのかもしれない。
References:atkearney / inverse/ written by Scarlet / edited by parumo