水木しげるの前にキタローを書いた男!ゲゲゲの鬼太郎の原型「ハカバキタロー」【4】 (3/6ページ)
だけど目や髪型など、キャラクターデザインは共通する部分があります。
しかし、ゲゲゲの鬼太郎の原型! 幻の紙芝居「ハカバキタロー」と紙芝居作家たち【2】 で書いたように水木は『ハカバキタロー』の現物を見ていません。
それでも共通点があるのは、加太こうじや鈴木勝丸から説明を聞き、イメージをふくらませたからでしょう。
加太によれば、辰巳のキタローは「グロテスクな形相」だったといいます。確かにおどろおどろしさはありますが、線がきれいで端正な印象もあります。加太は、辰巳の絵は「達者な筆使いと正確な時代考証で、素人っぽい画家が多い紙芝居の世界では異例だった」とも表現しています。
つまりキタローは、どぎついだけでない深みのあるキャラクターだったと考えられるわけです。
辰巳が描いたキタローは、ほとんど失われました。しかしその他の作品で現存するものがあります。詳細は後述しますが、そこから辰巳の画力を知ることができます。
怪奇もので評判を呼んだ辰巳の絵は、流麗で艶っぽさもあります。水木とは別の魅力をもった画風であり、キタローであったことが想像できるのです。
辰巳の経歴と紙芝居界でのポジション紙芝居草創期から活躍し、ブームの一翼を担った辰巳恵洋ですが、彼自身についての情報は少ないです。
わかっているのは、関西で看板書きをしていて、大正初期から東京で仕事をするようになったこと。そして昭和8年頃から紙芝居画家を生業にするようになったことです。
ちょうど伊藤正美と同じ頃に紙芝居業界に入ったわけで、この2人がそろわなければキタロー、さらには鬼太郎のヒットはなかったかもしれません。不思議な縁です。