〈企業・経済深層レポート〉キャノンが本格参入 市場規模5兆円のインフラ・メンテナンス業界 (2/2ページ)

週刊実話

1996年に約12万5000人いた技術系職員は、2017年には9万人前後に減っています」(総務省関係者)

 技術系職員が1人もいない市町村が、3割にも達しているという。もはや近接目視をやる体力は、市町村から失われつつある。
「これを重く見た国交省は、AIなどの新技術を活かして、人手不足と点検作業の安全精度を高められないかと模索し始めたのです」(同)

 そして、今回の号令に繋がったのだ。
「結果、2018年に5兆円の市場規模であるインフラ・メンテナンス産業が、10年後には6兆円規模に膨れる上がる勢いです」(建設コンサルタント)

 しかも、インフラ・メンテナンスの需要は、日本だけではない。
「世界全体のインフラ・メンテナンス市場は内閣府の資料によると、年間で200兆円です。日本でインフラ・メンテナンスの技術を確立すれば、世界中から仕事依頼が殺到するでしょう」(同)

 AIを活用した新しいメンテナンス・システムは、すでに続々誕生している。例えば、国立新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、「ひび割れ点検支援システム」を開発した。
「これはカメラで撮影した道路やトンネル壁の画像データから、AIでひび割れを検出するシステムです。今までも同様のシステムはありましたが、0.2ミリのひび割れの検出率は10%程度だった。AIを取り入れたことで、精度を80%という高水準までに高めることに成功しています」(IT専門記者)

 民間企業も新技術を駆使したメンテナンス・システムの開発に力を入れる。医療用画像分野などで最先端を走る富士フイルムの社会インフラ画像診断サービス「ひびみっけ」は革新的だ。
「トンネルの点検業者が現場で撮影した壁や天井画像をウェブから『ひびみっけ』に画像をアップロードすると、1時間程度でひび割れの長さや量を、自動で推定します。ひび割れ検出率は95%という高精度。さらにひびの大きさから、緊急性の高低を判断するシステムも開発中で、団体や企業の問い合わせも急増中らしいです」(同)

 カメラ事業が主軸の「キヤノン」は、今秋からインフラ・メンテナンス事業に本格参入することを公表していて、前出の建設コンサルタントも「今後も異業種からの参入は増えそうです」と分析する。

 長期にわたり期待が持てる産業だけに、メンテナンス・システムの開発争いは拍車がかかりそうだ。

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