田中角栄「怒涛の戦後史」(11)内閣総理大臣・池田勇人(上) (3/3ページ)

週刊実話



 しばし、両者の間でのやりとりは膠着状態が続いたが、「大ボス」として君臨するだけに武見も駆け引きの潮時を見極めるのは敏であり、田中の出した収拾案を基本的にのむことで、ようやく保険医総辞退という最悪の事態は回避できたのだった。

 当時のこの政府と自民党vs日本医師会の“激闘”を取材した政治部記者の、こんな証言が残っている。
「当初、自民党の実力者たちは、田中のことを『軽量政調会長』と陰口を叩いていた。ところが、誰がやってもダメだった医療費の診療報酬問題で、田中はあの武見会長と渡り合い、見事に落着させた。時の自民党副総裁だった大野伴睦などは、『アレはただ者じゃないかも知れん』とまで言っていた。池田首相はと言うと、田中を政調会長とした人事がズバリだったことで、ご機嫌そのものだった」

 ところが、いささか調子に乗りすぎたのか田中は、「沖縄返還」問題に関して大失言、今度は池田が頭を抱える番になったのである。
(本文中敬称略/この項つづく)

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【著者】=早大卒。永田町取材49年のベテラン政治評論家。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書に『愛蔵版 角栄一代』(セブン&アイ出版)、『高度経済成長に挑んだ男たち』(ビジネス社)、『21世紀リーダー候補の真贋』(読売新聞社)など多数。
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