「普通の男」を求めると婚活に失敗する理由

マイナビウーマン

「普通の男」を求めると婚活に失敗する理由
「普通の男」を求めると婚活に失敗する理由

11月某日放送のテレビ番組『バラいろダンディ』の中で紹介された、“「普通の男」の条件”(番組が一般女性にヒアリングした結果による)というのが大きな話題になりました。

具体的にいうと、

・年収500万円以上 ・大卒 ・身長170cm以上 ・正社員 ・長男以外 ・清潔感がある ・常識やマナーがしっかりしている

……だそうです。

申し上げておきますが、これは「理想の男」ではありません。「普通の男」の条件です。どれかひとつを満たせばいいという話ではもちろんないでしょう。

しかし、これらの条件をすべて満たしていることが「普通の男」だといわれてしまうと、世の中の男性のほぼ大部分が脱落するのではないでしょうか。

今回は、この提示された条件がいかに「普通じゃない」かについてご説明したいと思います。

■「普通の男」は普通じゃない

挙げられた条件を順番に吟味してみましょう。

◇年収500万円以上正社員未婚男性の割合は1割

まず、年収500万円以上の正社員について。

結婚相手を想定しているのだとすると、対象は未婚を中心とした独身男性になります。

「数字で見る。結婚相手に年収を求めるとなぜ婚活がうまくいかないのか」でもご説明した通り、仮に、20~50代まで年齢の幅を広げたとしても、年収400万円以上の未婚男性は全国に3割もいないのです。当然、年収500万円以上ともなれば、さらに減ります。

そもそも、年収500万円以上を稼ぐ結婚適齢期(25~34歳)で、かつ、正社員の未婚男性が日本にどれほどいるかご存じでしょうか?

2017年の就業構造基本調査によれば、当該年齢の有業者のうち、その構成比はわずか10%(所得不詳も含む)にすぎません。つまり、たった1割しか該当者がいないということです。

正社員であっても、アラサー未婚男性の中心所得は300万円台で24%、続いて200万円台が22%で、400万円未満の合計で全体の過半数を占めます。

これが現実です。

◇25~34歳未婚男性の大卒割合は40%

学歴に関しても、昨今男子の高卒後進学率は50%を超えてはいますが、学歴ごとの配偶関係を調査した2010年の国勢調査より、25~34歳の未婚男性に限ると、未婚者全体に占める大卒及び大学院卒者の割合は40%(不詳・未就学者除く)しかいません。

当該年齢未婚男性の過半数は大卒ではないのです。

◇20~29歳男性の平均身長は171.4㎝

身長については、2017年国民健康・栄養調査によれば、20~29歳男性の平均身長は171.4㎝で、かろうじてこの条件をクリアしています。ただし、これは未既婚の区別のデータではありません。

そして、あくまで平均値なので、逆の見方をすれば170㎝に達しない男性も数多く存在するということです。

かつて1980年代のバブル期には、モテる男の条件として「三高」と呼ばれた時代がありました。三高とは、「高収入・高学歴・高身長」を指します。しかし、当時の「三高」は、いわば「憧れ」の対象であり、決して「普通」ではありませんでした。

今回、普通の男の条件として出された「年収500万以上」「大卒」「身長170㎝以上」も、ある意味では「高収入・高学歴・高身長」の三高と同じであり、平均値である身長を除けば、普通どころか「高望み」のレベルに達しているといわざるを得ません。

◇「長男以外」は全体の3割

もうひとつ、世の独身男性たちを騒然とさせたのが「長男以外」という条件です。

年収にしろ、学歴にしろ、正社員という雇用形態にしろ、本人の努力や行動次第でなんとかなる可能性があります。身長に関しても、10代の頃から食生活やスポーツなどによって多少変えることは不可能ではありません。

しかし、「長男」であるという事実は、産まれた瞬間に、しかも、本人のあずかり知らぬところで決定づけられたものであり、どうしようもありません。

ネットでは、「長男で生まれてきた時点で、俺は普通じゃないようだ」と数多くのツッコミが見られました。

結婚相手として長男を回避したいという気持ちはわかります。

地方都市であれば、夫の両親との同居が必要となる場合も多いでしょう。高齢化に伴い、今後親の介護の心配もしなくてはいけません。長男と結婚することで、自分の両親に加え、夫の両親の介護という4人の介護リスクを背負うことになるかもしれないという不安もわかります。

しかし、そもそも「長男以外」と条件を絞り込むとかなり対象相手が減ってしまうことになります。

2014年の社人研による世帯動向調査によれば、25~34歳男性(配偶関係不明)の長男率は約68%です。「長男以外」という条件で絞り込んだ時点で、男性全体の7割をその対象からはずしてしまうことになってしまいます。

同様に、同じ年代の女性の長女率もおよそ7割です。男女とも長男・長女が約7割も占めているのですから、マッチングの確率から言えば、長男と長女が結婚することのほうが多いのです。

◇7つの条件を全部満たす男はほとんどいない

残りの条件としての「清潔感がある」「常識やマナーがしっかりしている」に関しては、数値化が困難ですが、これら7つの条件を全部満たす男は、数%もいないのではないでしょうか。仮にいたとしても、彼らは、婚活市場に流れてくる前に早々と売り切れていることでしょう。

つまり、ここでいう「普通の男」は、もはや婚活の現場には「実在しない男」ということです。

■結婚とは、幻の「普通の男」を追い求めることではない

2012年頃に結婚相手の条件として「三高」ではなく、これからは「四低」といわれたことがあります。

◇夫の条件は「三高」から「四低」へ

「四低」とは、決して「低収入・低学歴・低身長+α」ということではありせん。

(1)低姿勢(家族に威張った態度をとらない) (2)低依存(家事や子育てを妻にまかせっきりにしない) (3)低リスク(リストラにあうリスクが少ない) (4)低燃費(無駄なお金を使わない)

もちろん女性の本音として「高収入」であることは望ましいのでしょうが、平成以降サラリーマンの平均給与は上がるどころか減り続けています。

右肩上がりの収入増など全員が享受できた時代は過ぎ去りました。リアリティのない高望みをしていたら結婚などできない、と婚活女子たちも軌道修正をしたわけです。

「高収入じゃなくていいから長期的な安定収入があればいい!」

大学生たちの就職先の人気が「公務員」であるというニュースも話題になりましたが、そうした世相を反映しているものと考えられます。

◇実際に結婚した夫婦の所得分布

当然、相手への「高収入」条件を諦めるのであれば、妻自身も働き続ける必要があります。

では、実際に、結婚した夫婦の所得分布はどうなっているのでしょう。

2017年就業構造基本調査から、子のいない夫婦のみの世帯・夫年齢30代・夫の所得を25-34歳の未婚男性のボリューム層と同等の300万円台に限定して、妻の所得分布を見てみるとこうなります。

もっとも多いのは妻所得200万円台の22%。つまり夫婦あわせて500~700万円の世帯所得があることになります。続いて多いのが19%の妻所得300万円台。つまり夫と同じ所得の妻ということです。世帯所得にすれば600~800万円となります。

◇2人で「普通の夫婦」になる相手を見つけるのが結婚

夫の所得がたとえ300万円台だとしても、こうして夫婦二馬力で世帯所得700~800万円にしている30代夫婦が4割以上存在します。

もちろん、今後出産・育児に伴って同等の世帯所得を維持するのは、もしかしたら大変になるかもしれませんが、現在の日本の結婚のリアルな姿はこういうものです。

結婚とは、ほぼ実在しない「普通の男」を追い求めることではなく、2人の力を合わせて「普通の夫婦」になる相手を見つけることではないですか?

(荒川和久)

※写真はイメージです

「「普通の男」を求めると婚活に失敗する理由」のページです。デイリーニュースオンラインは、女子などの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る