痛々しいけど愛おしい♡室町時代の中二病文学「閑吟集」より特選14首を紹介【下】 (6/6ページ)

Japaaan

【エピローグ】痛惜(いとお)しく、愛おしい人々の紡いだ珠玉の歌たち

以上、『閑吟集』から特選14首+αを紹介して来ましたが、いかがだったでしょうか。

「え?これって和歌と言えるの?」

そんな感想を持たれるくらい、現代の五七五七七の定型から逸脱しまくった(※と言うより、元から意識すらしていなかったのではなかろうか)歌の数々に、多くの方は「痛々しさ」を感じずにはいられないようです。

しかし、これらの歌に込められた感情の熱量は、単に下劣として切り捨てるには惜しい「痛惜(いとお)しさ」すなわち「愛おしさ」を備えているように思われてなりません。

よく学校で「言葉や服装の乱れは、心の乱れ」と教えられましたが、それは逆に「心が乱れるから、言葉や服装が乱れる」とも言える訳で、いかに当時の社会が乱れていたかが偲ばれます。

この『閑吟集』は、とある桑門(そうもん。僧侶)が富士山を遠く望む生活の中でまとめたことが本書の「仮名序」に書かれています。

多くの死を弔い、世の無常を見てきた僧侶なればこそ、いかに拙く、愚かしくとも、人々が熱く生きた刹那々々を和歌に切り取り、無縁仏への供養として後世に残そうとしたのかも知れません。

とっても痛々しくて愛おしい室町時代の中二病文学『閑吟集』には、全部で300以上の歌が収録されているので、是非とも一度手にとって、お気に入りの歌を見つけて欲しいと思います。

【完】

※参考文献:
浅野建二 校注『新訂 閑吟集』岩波文庫、1989年10月16日

日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan

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