バイきんぐ西村瑞樹インタビュー、キャンプ芸人になったきっかけは「ヒマだったから」
僕は、相方の小峠(英二)と、お笑いコンビの『バイきんぐ』をやっています。小峠が売れっ子なので、「バイきんぐの小峠じゃないほう」と呼ばれることが多いんですが、けっしてイヤではないんですね。というか、むしろありがたい。僕は“じゃないほう芸人”のポールポジションにいると思っていますから(笑)。
でも、小峠がバーッと売れ始めた頃は、毎日が本当にヒマでしたね。あまりにもヒマだから、小型船舶の免許を取りました。5日間くらいスクールに通って、海図の勉強を必死でやって、1級を取得。取るのはなかなか難しいんですけど、我ながら頑張りました。
そして同じ頃に出合ったのが、キャンプでした。先輩芸人のヒロシさんに連れて行ってもらったのが最初で、いきなり20万円くらい使って道具をそろえたんですよ(笑)。はじめからいい物を買っておくと、続けなくちゃもったいない。これは、僕の長続きの秘訣でもあるんですけど、キャンプの場合は1回行って、速攻でハマりました。
キャンプ最大の魅力――それはやっぱり「たき火」ですね。ボーッとたき火を眺めていると、人は正直になる。ふだんは照れくさくて言えないことが、ポロッと口から出てきたりもします。
だから“たき火人生相談”なんて企画はいいと思いますね。もちろん僕は相談されるほう。「そうだね、それはツラいねぇ」って合いの手を入れながら、ただ聞くだけ。人は気持ちを吐き出すだけでスッキリすることも多いし、なにしろ、たき火自体に人を素直にする力がある。だから、特にいいアドバイスをしなくても相手は満足して「良かったです」って言ってもらえそう。自分は楽だし、結果的に人のためになる(笑)。
小型船舶の免許取得もキャンプも、仕事につなげようという気持ちは全然ありませんでした。時間があったから、面白そうだったから、やってみただけで。ところが最近、これらがドンドン仕事につながってきたんです。あのとき、ヒマで本当に良かった!
今はキャンプ関係の仕事が9割で、お笑いが1割(笑)。先日も、バラエティ番組に呼んでもらったんですが、てっきりお笑いのほうだと思っていたらキャンプの企画でした。でも、すごくうれしいし、ありがたいことだと思っています。
■「正解というものはありません。だからこそ、やっていて面白い」
そして、ありがたいことがもうひとつ、なんとエッセイ本まで出版できました。作文なんて、高校生のときに、校則を破った罰で読書感想文を書いたっきりでしたから(笑)。
2年ほど前に「日常で思っていることや出来事を書いてみませんか」とお話をいただいたんですけど、文章を書かないどころか、読むことすらしないので、最初は本当に、むちゃくちゃしんどかったですね……。
そもそも書く以前に、まずネタを思いつけない。無人島でひとりキャンプをしても、何も面白いことが起きない。そのことを小峠に話したら、「なにエピソードゼロで帰ってきてんだよ!」って叱られました(笑)。
僕は、お笑いでもネタを書きません。……というか、書かせてもらえません。でも、相方が書いたネタをやって、お客さまが笑ってくれることは、すごくうれしいです。
同じネタでも、ウケるときもあれば、ウケないときもあるわけで、正解というものはありません。だからこそ、やっていて面白い。“お笑いっていいな”と心底思います。
だから、これからも、もっともっと皆さんを笑顔にしたいし、キャンプもやっていきたい(笑)。たき火をしながら、買ったまま、しまいっぱなしのソバ打ちセットでソバを打ちたいし、トランペットも吹いてみたい。チェーンソーの講習を受けて、僕が所有している山に生えている木を切り倒して、ログハウスも作ってみたい。“じゃないほう芸人”だからこそできることを、これからもやり続けていきたいです!
西村瑞樹(にしむら・みずき)
1977年、広島県生まれ。96年、小峠英二とお笑いコンビ「バイきんぐ」を結成し、2012年の『キングオブコント』での優勝をきっかけにブレイク。テレビのバラエティ番組を中心に活躍し、個人としても初の冠番組『西村キャンプ場』(テレビ新広島)が2019年10月からレギュラー化。また、ユーチューブで『CAMP西村チャンネル』を配信中。