魚がうつ状態に。水族館や観光地の海に住む魚たちは自粛で人間と会えず寂しがっている(オーストラリア)
人と会えずうつ状態の水族館の魚 / Pixabay
最近の外出自粛で友達や家族に会えず、寂しい思いをしているのは人間だけではないようだ。魚たちも、人間に会えなくなって寂しがっているという。
オーストラリア、ケアンズ水族館で大人気だった巨大魚、タマカイのチャンさんは、寂しさのあまりうつ状態になり ここ数週間もエサを口にしないのだそうだ。
・客足の途絶えた水族館で意気消沈している魚たち
2年前にオープンしたばかりのオーストラリア、ケアンズ水族館は、新型コロナ禍のおかげで、3月半ばから閉鎖され、客足が完全に途絶えてしまった。
施設内がまるでゴーストタウンのように静まり返ったおかげで、多くの魚がしょんぼりと元気がなくなり、好奇心まで失われてしまったとのことだ。
特に大きな魚ほど寂しがり屋であるようで、水族館の人気者だったタマカイのチャンさんなどは数週間もエサを食べていないという。
この投稿をInstagramで見るCairns Aquarium(@cairns_aquarium)がシェアした投稿 - 2020年 3月月9日午後11時51分PDT
ケアンズ水族館の人気魚、タマカイのチャンさん
・グレート・バリア・リーフの魚たちも人恋しがっている
こうした事態は意外にも自然環境で暮らす魚も同様であるそうだ。
普段、グレート・バリア・リーフでは自然観察ツアーが催されており、大勢の人たちがそこを訪れていた。そこで人気者だったのがナポレオンフィッシュ(メガネモチノウオ)のウォリーくんだ。
ところが、その彼もそうしたツアー客がまったく途絶えてしまったせいか、どこか元気がないとのことだ。
ナポレオンフィッシュのウォリー
・魚は好奇心旺盛な生き物
ケアンズ水族館のポール・バーンズ氏によると、魚はとても好奇心旺盛な動物で、新しい刺激を求めているのだそうだ。
「あまり知られていませんが、魚は水槽の外側を観察しています。人が来ればちゃんと見ているし、一緒に遊ぶのが好きなんですよ」と、バーンズ氏は話す。
水槽の外をただ人が通り過ぎるだけでも魚への刺激になっており、そうした人間の顔や服装を観察して楽しんでいるのだという。
ケアンズ水族館で飼育されているカリフォルニアドチザメにいたっては、子犬のように抱きしめられたり、撫でられたりすることまで好きであるとのこと。
少々うつ気味の魚たちを元気付けるために、ケアンズ水族館では、一緒に泳ぐ遊び相手として、ダイバーを増やすことにしたそうだ。
Inside an aquarium during Coronavirus quarantine lock down
・魚にも感情がある
ジェームズ・クック大学(オーストラリア)の海洋生物学者リチャード・フィッツパトリック氏によると、魚には感情があり、水槽の向こう側にいる人間に対して愛着を抱くのだそうだ。
「ナポレオンフィッシュのような大きな魚は非常に賢く、自然環境でも水族館でも、自分たちを見に来てくれる人々と絆を育みます。」
自分にエサを与えてくれる人間をきちんと覚えており、そうした特別な相手には態度まで違うのだそうだ。
「だから人間が来なくなって、どうしたんだろうと思っているんじゃないでしょうか」と、フィッツパトリック氏は語っている。
ダイバーと遊んでもらって楽しそうなナポレオンフィッシュのウォリー
Wally the Famous Humphead Wrasse (maori wrasse)
先日、アイルランドで人気のバンドウイルカの「ファンギー」が、やはり外出自粛で人に会えず寂しがっているというニュースをお伝えしたが、人間が身近な存在だった水中の生き物たちにとっては人恋しくなっているようだ。
人間と動物の共存は様々な形がある。一度でも人間との関りを持たせてしまった動物たちに対しては最後まできちんと責任をもって見守っていく必要があるのかもしれない。
References:Marine biologists say some species of fish in aquariums are exhibiting signs of 'loneliness' - ABC Newsなど/ written by hiroching / edited by parumo