犬は確かに、飼い主を助けたいという気持ちを持っている(米研究)

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犬は確かに、飼い主を助けたいという気持ちを持っている(米研究)
犬は確かに、飼い主を助けたいという気持ちを持っている(米研究)

犬は飼い主を助けたいと心から思っている Aksakalko/iStock

 飼い主が箱の中に閉じ込められていて、悲痛な声で助けを求めていたとする。

 そんなとき犬は、飼い主のピンチに気がつくのだろうか? そうなのだとすれば、実際に助けようとするだろうか? いや、もっと言えば、そもそも助けたいと思っているのだろうか?

 そんな疑問に答えようとした実験がある。

 普段は悪戯ばかりで、日々全力で笑いをとりに行くが、いざとなれば頼りになるのが愛犬だ。実際、災害の現場などで救助犬として活躍する犬はたくさんいる。

 だが、彼らが人を助けてくれるのは確かなことなれど、一体どういうつもりで人助けをしてくれるのだろうか? まさか、仕方なく嫌々やっているなんてことはないのだろうか?

 それを解明するために、アリゾナ州立大学(アメリカ)の研究チームは、60匹の飼い犬(救助の訓練を受けた子はいない)を使って、その救助の心構えについて調べてみることにした。
・飼い犬は、助けを求める飼い主さんを助けるか?救助実験

 研究で中心となった実験(救助実験)は次のようなものだ。

 飼い主さんに大きめの箱に入ってもらい、いかにも大ピンチといった声で助けを求めてもらう。箱には犬にも十分動かせる重さの扉がついている。

 さあ、このとき犬はどのような行動をとるだろうか?

 なお、飼い主は事前に助けを求める声が本物っぽく聞こえるよう訓練を受けていた。ただし、助けを求める際は、犬の名前を呼んではいけないルールだった。

 名前を呼んでしまうと、それが犬の服従を誘発し、飼い主さんが心配だから自主的に行動しているのか分からなくなってしまうからだ。


Van Bourg Dog Rescue Study

・実験結果を検証

 救助実験では、飼い主さんを助けたのは60匹中20匹だったという。

 ジョシュア・ヴァン・ボーグ氏は、これはそれほど感銘を受けるような数字ではないが、しかし考えるべき点が2つあると説明する。

 1つは、犬が飼い主さんを助けたいと思っているのかどうかという点。そして、もう1つは、そのためにどうするべきか犬が理解しているかどうかという点だ。

 たとえば比較のために、研究者が箱の中にエサを落とす瞬間を犬に見せて、そのときの行動を観察するという実験が行われている(エサ実験)。

 こちらでは60匹中19匹が扉を開けてエサを食べたという。なんと、エサを食べた犬と飼い主を助けた犬の数はどちらも約3分の1で、大して変わらないのである。

 はたして、犬にとって飼い主さんはエサ程度の価値しかないのだろうか?
 
 これについてヴァン・ボーグ氏は「犬が箱の開け方を理解しているかどうか調べなければ、助けた犬の割合をひどく過小評価することになります」と話す。

犬と飼い主の絆
SEMA HELVACI/iStock

・助けたいと思っていても助け方がわからない犬がいる

 彼によれば、エサ実験で3分の2が扉を開けなかったという事実は、犬が実際に救助を成功させるにはただそうしたいと思うだけではダメで、そもそも助ける方法を分かっていなければならないということを強く示唆しているという。

 そして、エサ実験で扉を開けることができた犬に限って言えば、その84%が飼い主を助けている。

 つまり、救助実験では、ほとんどの犬が飼い主を助けたいと思っていたのに、助け方が分からないから諦めた犬もいたかもしれないということだ。


・ただ飼い主のそばにいたいわけではない

 また別の比較実験では、箱の中の飼い主さんが落ち着いた様子で雑誌を声に出して読んでいたらどうなるのかが確かめられた(雑誌実験)。

 その結果、扉を開けたのは、救助実験より4匹だけ少ない、60匹中16匹だった。

必ずしも救助とは関係のない行動である場合もたくさんあります。だからと言って、犬が特別ではないということにはなりません。

ほとんどの犬は、ただ飼い主さんと別れたくないというだけで、火事で燃える建物の中に突入します。健気でしょう? 飼い主さんがピンチだと知れば、なおさらです

 救助実験で扉を開けた犬の数が雑誌実験よりも多かったということは、犬はただ飼い主のそばにいたいから扉を開けているわけではなさそうだ。

犬と飼い主
Pixabay

・ピンチの飼い主から犬はストレスを感じ取っている

これら3つの実験では、「クンクン鼻を鳴らす」「歩き回る」「吠える」「あくび」といった犬がストレスを感じていることを示す行動が観察されたという。

 だが、特に犬がストレスを感じていたのは救助実験だった。また雑誌実験では、2度、3度と繰り返すと犬が慣れてストレスを感じなくなっていったのに対し、救助実験ではそのようなことがないことも観察された。

飼い主さんのピンチには、順応を妨げる何かがあるようです。飼い主さんの助けを求める声には、犬が何度聞いても慣れることのない何かがあるのでしょう

 こうした行動は、飼い主のストレスが犬に伝わっていること(心理学における「感情の伝染」)の証拠であるという。人間でいう共感があるということだ。


・結論、犬は確かに飼い主を心配している

要するに、犬は本当に飼い主の身を案じています。特に訓練などしなくても、犬はピンチに陥ってると思われる人を助けようとするし、それができないと動揺します。

比較実験の結果は、飼い主を助けなかった犬は、どうすれば助けられるのか理解していなかったことを示しています。決して、飼い主さんのことを心配していなかったわけではありません(クライブ・ワイン氏)

 もちろん個体差はあるが、実際に助けられるかどうかは別にして、少なからず犬は、飼い主のことを心配しているということだ。

 普段はいたずらばかりして言うことを聞かない犬でも、飼い主のピンチは感じ取ることができるし、心の中では何とかしてあげたいと思っているのかもしれない。

この研究は『PLOS ONE』(4月16日付)に掲載された。
Pet dogs (Canis lupus familiaris) release their trapped and distressed owners: Individual variation and evidence of emotional contagion
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0231742
References:YYes, your dog wants to rescue you/ written by hiroching / edited by parumo
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