“祝祭感のため”自宅からユニフォーム着用せよ?五輪ボランティアの困惑
いよいよ、目前に迫った東京五輪・パラリンピック。当初8万人を予定していたボランティアは1万人が辞退し、7万人となったが、そのボランティアに対し、大会組織委員会が、活動日は自宅からユニフォーム姿で通うように指示している、と11日の東京新聞が伝えた。
記事によれば、ユニフォーム着用の理由は「一部の活動場所で更衣室がないことに加え、市中に祝祭感を演出する狙いがある」とのことだが、ただでさえコロナ下での開催には疑問と批判の声があるなか、首をかしげたくなる報道に、SNS上では大会組織委員会に対する批判が爆発。
《どうして更衣室くらい用意できないんだ?ボランティアの感染が起きた際『会場で、更衣室を通してクラスター発生』と報じられるのが嫌だから?結局、ボランティアの自己責任?いくらなんでも酷すぎるよ!》《平常時ならともかく、反対ムードのなかでボランティアを『歩く看板』に利用するなんて、安全安心の逆。トラブルの元になりかねないだろ。絶対にやめるべき!》等々、組織委員会の指示には納得がいかない、といった意見であふれた。
スポーツライターが語る。
「たしかに大きなスポーツイベントでは、スタッフがユニフォームを着用して移動することで、人の目に触れる機会が増え、PR効果があることは事実。ただし、それはあくまで平時での話で、今の日本の状況にはどう考えても当てはまらない。自宅からの着用を指示した組織委の役員は、本当にあのユニフォームを着て、電車に乗る勇気はあるのかどうか。委員会は更衣室がないから、としていますが、たとえばパーテーションで区切るとか、着替える時だけ、部屋の前でスタッフか待機して管理するなど、いくらでも方法があるはず。そういう知恵も絞らず、ただ上から目線での指示では、批判が集まるのも無理はないでしょう」
さらに、ボランティアは来日する選手や関係者と接するため、感染リスクが少なくない。そのため、組織委では6月下旬からワクチンの優先接種を進めてきたが、実際には現時点でも、2回目の接種が完了しない人が多いという。
「つまり、ボランティア参加による感染リスクは、いまだ少なくないということ。ただ、1都1道4県の会場で無観客が決まったため、ボランティアの大幅縮小も噂されていたんです。ところが大会委員会としては、ボランティアはそのまま確保しておく方針を変更しなかった。これは、直前に休まれてしまう懸念や、一人一人に今から不採用通知を送らなければならないという事情もあるのでしょうが、とどのつまりは、タダで使える人材を確保しておきたいからでしょう。無観客になったことで、チケットの『受付』担当に当初見込まれていた2万5000人が必要なくなり、また、五輪関係者の来日も削減されるため、1万5000人を予定していた『移動サポート』担当も減らせるはずです。しかし、現時点で通達は出ていませんからね。なのでボランティアの中には、会場に来るだけで何もやることがない、といった人が出る可能性は大。それでいてコロナ感染リスクだけは変わらないということになります」(前出・ライター)
更衣室もなく、「歩く看板」として自宅からユフォホーム着用で来たものの、白い目で見られ、仕事がなく、感染のリスクだけは残る……。そうならないことを願うばかりだ。
(灯倫太郎)
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