ジャイアント馬場を苦しめた “悲劇の悪役レスラー”フリッツ・V・エリック「鉄の爪」伝説 (2/2ページ)
しかし、その大切にしていた家族が彼を絶望へと突き落としたのだから、運命とは皮肉なものです」
ケネディ家と並び“呪われた一家”
エリックには、妻との間に6人の息子がおり、エリックは幼少期から彼らにレスリングを教え込んだ。
「6歳で事故死した長男を除き、全員がレスラーになりました。しかし、三男のデビットは、全日本プロレス参戦時の84年に内臓疾患で急死し、86年には四男・ケリーがバイク事故で足を切断。87年には五男・マイクが23歳で服薬自殺。91年には六男・クリスが21歳でピストル自殺をしているんです」(前出のベテラン記者)
ケリーは義足をつけながら、プロレスに復帰したものの、後に、やはりピストル自殺で、この世を去っているという。
「そのため、アメリカではケネディ家と並び、“呪われた一家”と呼ばれています」(山本氏)
筋肉増強のためにステロイドを
エリック家の相次ぐ悲劇については、これまでにも、さまざまな検証がなされている。
「親族や仲間が自殺で亡くなると、残された人間も後追いしてしまう現象は、よくあります。
ただ、エリックは息子たちをレスラーとして大成させるため、当時、マット界で乱用されていたステロイドを勧めていたとも囁かれました」(ベテランの記者)
筋肉増強のためにステロイドを常用すれば、副作用として精神的な不安定さが生じるとされる。また、五男のマイクはリングでの痛みを紛らわせるため、ドラッグ中毒になっていたともいわれる。
父の背中を追い、プロレスに関わったことで、息子たちに不幸の連鎖が起きてしまったのだろうか。
離婚しプロレス事業から撤退
「晩年のエリックは妻とも別れ、プロレス事業から撤退。そういう哀愁も含め、実に“模範的”なプロレスラーだったと思います。
挫折や絶望こそが、ときにレスラーを輝かせるわけですから。何より悲劇から何十年もたって、映画化された。ある意味、エリック一家は世間に勝利したとも言えます」(山本氏)
人生とは終わりのない闘いである――生涯を通じてそれを体現したフリッツ・V・エリックこそ、真のプロレスラーなのかもしれない。