体重が31㎏減!禁断の“仏教ダイエット”でみるみる痩せた

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真言宗の総本山である金剛峯寺(写真/Andrea Schaffer)
真言宗の総本山である金剛峯寺(写真/Andrea Schaffer)

 先日、「炭水化物抜きダイエット」に関して、農林水産委員会でやり取りがあり、農水省生産局長がこのダイエット法に対して否定的な発言をしたことが話題になりました。

衝撃!? 日本政府、公式に「炭水化物抜きダイエット」に否定的見解を示す | みんなの党 東京都議会議員 おときた駿 公式サイト

 実際、炭水化物の摂取を抑えるこのダイエット法には危険もあるらしく、過度な摂取制限は心筋梗塞や脳卒中などの発病リスクを高めると言われています。

効果はバツグンで楽チンだけど餓死の危険性も…

 さて、本日ご紹介する「仏教ダイエット」ですが、これもまた危険なダイエット法です。開発したのは真言宗の寺院住職、中村甄ノ丞さん。身長172cmの彼は、このダイエット法を実験してから一年一ヶ月で、体重を86kgから55kgまで落とすことに成功しました。

 「効果はバツグンで楽チン」とのことですが、「オススメできないダイエット法」でもあると言います。なぜなら「そのまま入滅する可能性があるから」。ウッカリ餓死しかねないこのダイエット法のポイントは「食べ物に対する欲求を消すこと」だそうです。

 このダイエット法を説明する前に、まず仏教とはどのようなものか、から説明しましょう。仏教には様々な形がありますが、乱暴に簡潔に言うならば「瞑想中の己の精神状態を観察し、悟りと呼ばれる精神状態を目指す」と言えるでしょうか。輪廻転生や念仏(南無阿弥陀仏)などは、この実践行為に関する説明であり拡張と言えます。

 中村さんによれば、瞑想中、つまり「五感を働かせない」状態では、人間はネガティブな思考ばかりするようになるのだと言います。普段は意識しない「あれがしたい」という欲望や、「ああすれば良かった」などの後悔がどんどんと湧いて出てくる。これが煩悩。

 そして、そういった感情を、何とか解決して乗り越えようとするのではなく、一歩引いてそれらを観察する。「ふうん、こんな感情が出てくるのかあ~」と他人事のように思う。そういった感覚を慣らしていくと、そういった一つ一つの欲望や悩みが「価値の無いもの」「どうでもいいこと」に思えてくる。

 そして悟りに近付いていく……、と、このような実践過程をまずイメージして下さい(もちろん仏教にも色々ありますので、皆が同じ実践法ではありません)。それで、仏教ダイエットでは、これらの煩悩のうち「食欲」にフォーカスを当てることで、「食欲」を「どうでもいい」と感じるように心身を慣らしていくわけです。

 具体的なやり方はこうです。まず、食事は一日一食、昼食のみ。これは制限なしで何を食べてもOK。すると、当然お腹が減るのですが、この「お腹が減っている」という状態を観察し、分析します。われわれは「お腹が減っている」と一口で言うけれど、中村さんによれば、これも分析することで、「物理的にお腹が減っている」「カロリーが足りていない」「口が寂しい」「肌がカサカサする」「身体がアミノ酸を欲している」「身体がミネラルを欲している」などに細分化できるのだそうです。

 そして細分化の結果、自分がいま「どのタイプの空腹なのか」を見極めたら、次にその食欲の「適切な満たし方」を探し出します。例えば身体がアミノ酸を欲しているならばコンブを食べればいいし、物理的にお腹が減っているなら蒟蒻や牛乳で物理的に胃袋を埋めればいい。「ハンバーグが食べたい」と思った場合も、それを分析していくと、自分はただ「脂質が欲しい」「塩分が欲しい」と思っていただけに過ぎないことが分かり、油を舐めたり、塩を舐めたりして解決するようになるのです。

 中村さんは実験として、「〇〇〇が食べたい」と思った時にその成分を細分化して、成分を別個に摂取したのだそうです。すると結果として、その食品を丸のまま食べた時とほとんど同じ満足感を得ることができたのだと言います。なんとも味気ない話ですが、われわれの「欲求」の正体とは実はこんなものなのかもしれません。

 しかし、どう考えてもそんな食生活が楽しいとは思えません。ですが、これに身体が慣れてくると、そもそも「ハンバーグを食べたい」などの欲求が湧かなくなり、「塩を舐めたい」「油を舐めたい」と最初から細分化された形で欲望が湧くようになるのだそうです。そして、その欲求すらも薄れていき、「活動して消費した分だけしか摂取する必要性を感じなくなってくる」。こうして人間は煩悩の一つである食欲を克服することができるのだと言います。

 すると、どうなるか? この実践行為を通して中村さんが分かったのは、「人体は欲求するよりも本当はもっとたくさんの量を必要としている」ということ。油を舐めたり塩を舐めたりすることで欲求は完璧に満たせても、肉体的には全然足りていないので体重はガンガン落ちていきます。しかし、欲求は満たせてるし、常時飢餓状態だから一日一回の食事も美味しくて食べ物に心から感謝できて毎日楽しく、体重が減り、動きが機敏になるので前よりも元気になったと錯覚します。周囲の反応はと言うと、

「86kgから始めて、65kgまでは檀家も目を輝かせながら『どんなダイエット法なのか』と聞いてきました。しかし、62kgを下回ってからは『頼むから何か食べてくれ』と言われるようになり、55kgの時点で入滅の危険に気付いて中止しました」

 とのこと。

 ちなみに中村さんは、小麦の高騰とそれに伴う「小麦食品が食べられなくなる」未来をシミュレーションするテレビ番組を見ていた時に、「小麦が高騰しただけで世を憂いなければならないのか」と感じて、食欲を克服するためにこの方法を考案したのだそうです。……確かに、小麦高騰も小麦関係の人には死活問題かもしれませんが、いち消費者としては小麦が手に入りにくくなれば、無理なく買える範囲で小麦を食べればいいだけの話です。

 そんなことで大袈裟に世を儚んでる人々を見たら、仏教者としては何か実践的な解決手段を考えたくなるのも当然かもしれません。「よく考えて下さい。あなたが必死に思い悩んでるそれって、本当にそんな大変なことですか? 意外とどうでも良くないですか?」というのが仏教のメッセージの一つですしね。

 なお、当然ですが、このダイエット法はサラリーマンなどには実践困難だと思います。付き合いもあるでしょうし、飲みュニケーションの場で塩や油を舐めていたら間違いなく嫌われます。中村さんいわく、「このダイエット法をやろうと思ったら、まず出家すると良いでしょう」とのことです。

(写真/Andrea Schaffer)

著者プロフィール

作家

架神恭介

広島県出身。早稲田大学第一文学部卒業。『戦闘破壊学園ダンゲロス』で第3回講談社BOX新人賞を受賞し、小説家デビュー。漫画原作や動画制作、パンクロックなど多岐に活動。近著に『仁義なきキリスト教史』(筑摩書房)

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