報道の自由度61位…日本人が新聞に求めるものはスクープ記事よりも洗剤だった!?

デイリーニュースオンライン

日本人は新聞に信頼をおいているのか
日本人は新聞に信頼をおいているのか

 2月12日、国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」は2015年版の「報道の自由度ランキング」(世界180か国)を発表した。日本は特定秘密保護法などの施行で順位を落とし、61位に。アジアに限っても台湾(51位)、モンゴル(54位)、韓国(60位)に抜かれる結果となった。こうした結果には国民の報道へのリテラシーも問われているが、では、日本人は新聞などを信用しているのだろうか。

 世界90か国以上の研究組織による国際プロジェクト『世界価値観調査』というものがある。世界各国で価値観や意識の比較を行うものだが、この中で「新聞・雑誌への信頼度」が話題になることが多い。

 2010年から2014年にかけての調査をもとに、「非常に信頼」と「やや信頼」を足して、「あまり信頼しない」と「全く知らない」の合計値を引いたブログ記事によると、新聞や雑誌を信頼している人が多い国は、何と日本がトップで45.5%。以下、2位 フィリピン(34.5%)、3位 中国(34.3%)となり、逆にワースト3は、1位 オーストラリア(-65.4%)、2位 アメリカ(-52.8%)、3位 スロベニア(-52.6%)となる。

世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度をグラフ化してみる(2010-2014年)(最新)

 この結果から、日本人の「メディアリテラシーの低さ」「メディアへの盲信」が論じられることがある。そうした分析や指摘には頷かされるものも少なくないが、意外や意外、日本人がメディア、特に新聞を冷めた目で見ているという調査報告も存在する。

日本人は独自報道やスクープに興味がない?

 これは朝日新聞が2008年に実施した「読者満足度調査」だ。月刊誌『Journalism』(朝日新聞社ジャーナリスト学校・2009年7月号)に掲載された分析記事『読者が新聞に求めているもの 朝日新聞「読者満足度調査」から』(室田康子)は今から6年前と少し古く、何よりも朝日新聞の吉田調書や慰安婦の報道が問題となる前のものではあるが、その分析内容はいまだに興味深い。

 調査対象は朝日新聞の読者約3300人と、過去に朝日を購読し、調査時点で読売、毎日、産経など他紙に「乗りかえた」読者約3000人。この約6000人が新聞に何を求めているのか、日々の紙面に満足しているか、を調べたというわけだ。

 さて、新聞を購読する際、最も重視しているものは何か。記事によると1位は「記事が正確である」が41.9%。2~8位は「配達ミスが少ない」など販売店に関わる回答が占めるため省略するが、9位「主義・主張が偏っていない」(26%)、10位「世の中の動きを的確に捉え、問題・課題が提示されている」(25.3%)を加えると、紙面に関する重視度のベスト3が揃うことになる。

 その上で驚かされるのは、各項目の満足度だ。「記事が正確である」は11.3%、「主義・主張が偏っていない」は8%、「世の中の動きを──」は9.3%と、いずれも非常に低い。読者は朝日だろうが読売だろうが、毎日や産経だろうが、実際の紙面にはかなり不満を抱いているらしい。朝日の調査は「新聞購読者」という“ヘビーユーザー”が対象だとはいえ、「新聞・雑誌への信頼度」が50%に近いという世界価値観調査の方が疑わしく思えてくるインパクトだ。

 それでは、回答者が考える「正確な記事」とはどのようなものなのか。その判断基準(複数回答)は「裏付けを客観的データで示している」(66.1%)「内容が偏らないよう多方面に取材している」(55%)「情報源を示している」(54.9%)というものだ。また重視項目に戻れば新聞の購読の際に「スクープや独自報道が多い」ことを挙げた回答は37位(9.4%)しかない。

 よく新聞改革案にスクープ、調査報道の重要性を訴える論者がいるが、肝心の読者は、そんな記事は求めていない可能性もあることがわかる。記者がこつこつと「足で稼いだ記事」より、官公庁の発表記事であっても情報源とデータをきっちり示し、専門家の解説や賛成・反対意見を両論併記すれば「正確な記事」と受けとめられるかもしれないからだ。

 ちなみに重視項目で「契約時のサービスがよい」は11位、24%に食い込んでいる。これも「スクープ記事より、洗剤や発泡酒などのサービスで新聞を購読する」層が一定の割合で存在することを示している。また満足度のトップは「ビニールがかけられているなど、雨の日の対応がいい」で32.9%に達した。これらの結果を「新聞なんてそんなもの」と突き放すか、「やはり日本人は嘆かわしい」と憤慨するか、意見は分かれるかもしれない。

 いずれにしても、やはり調査を行ったのが朝日新聞というところに、ある種の〝皮肉〟を感じる人は少なくないだろう。慰安婦でも吉田調書でも、いたずらに「スクープ」を求めず、情報源やデータを示して多様な意見、分析を掲載していれば、あれほど非難されることはなかったということがよくわかる。

(取材・文/葉山哲平)

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