【ブラック職場】スーパー店員として働かされる薬剤師の実態 (2/2ページ)

デイリーニュースオンライン

「正社員になって欲しい──月給は25万円からスタート。週5日1日8時間勤務でお願いしたい」

正社員になると「使い倒される」薬剤師

 だが正社員となったAさんに待ち受けていたのは、パート時代よりも過酷な「スーパー店員」としての勤務だ。

「正社員なので残業代はつきません。すべて月1万円の調整手当てのみ。繁忙期にはレジ打ち、棚卸しもさせられます。どうも会社側は薬剤師を『資格を持った使い勝手のいい社員』という認識のようで。月給は今35万円をようやく超えたくらい。年収で450万円です」(Aさん)

 朝9時出勤、退勤は夜9時、一応、薬剤師資格を持っている専門職という扱いのため店長や副店長への昇進もない。だから昇給もさほどしない。

 今年、大手ドラッグストア、ツルハホールディングス傘下「くすりの福太郎」が展開する調剤薬局では、患者の薬剤服用歴を作成していない事例が17万2465件判明した。薬剤師の数が足りないことがその原因だとされている。

本社社員「儲かる薬を客に勧めろ」

「おそらく本社の社員が『業務の効率性』の名の下に薬剤師に無理を強いた結果でしょう。薬剤師が専門的知識、良心に基づいた助言も利益に繋がらなければすべて却下されますから。やはり医療は営利目的の企業とは相性が合いません」(同)

 Aさんによると、顧客の相談に応じ薬剤師として安価な薬剤を勧めると店長クラスから、「営利企業なのだから収益性の高い薬剤を推奨しろ」と叱られることがしょっちゅうあるという。

 安倍政権では成長戦略のひとつとして、「薬局を中心とした地域住民の健康拠点づくり」を掲げている。だがAさんにみられる流通店勤務薬剤師の待遇や「くすりの福太郎」の事案を見る限り、経済では成長しても健康拠点づくりでのそれはどこか不安が過ぎる。

 行き過ぎた規制緩和で住民の健康が損なわれないうちに、一店舗に何時間、何人の薬剤師が薬剤業務に専念するなどの歯止めを設けなければ地域住民、ひいては国民の健康が害される。急ぎ手を打つことが必要だ。

<取材・文/川村洋>

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